深部静脈血栓症(DVT)とは?
深部静脈血栓症(DVT)は、足の深部静脈に血栓(血の塊)が形成される病気です。高齢の方や長時間同じ姿勢でいる方、手術後の方などに多く見られます。この記事では、DVTの問題点、原因、症状、治療方法、予防法について、わかりやすく解説します。深部静脈血栓症が問題となる主な理由は以下のとおりです。
1. 肺塞栓症(PE)のリスク: 脚の血栓がはがれて血流に乗り、肺の血管を詰まらせることがあります。これを肺塞栓症といい、呼吸困難や胸の痛み、場合によっては命を脅かすこともあります。
2. 静脈血栓後症候群(PTS): DVTの後遺症として、脚の痛み、腫れ、皮膚の変色、潰瘍などが生じることがあります。これを血栓後症候群といい、生活の質を低下させることがあります。
3. 再発のリスク: 一度DVTを経験すると、再び発生するリスクが高まります。
このため、DVTの予防と早期発見、適切な治療が重要となります。
深部静脈血栓症(DVT)の原因
静脈血栓が生じる要素は3つあり、①血液の流れが遅くなること、②血液が固まりやすくなること、③血管の内壁が傷つくこと、これらの3つの要素のうち複数が重なった時に生じやすくなります。深部静脈血栓症(DVT)の原因として、主なものは以下の通りです。
1. 長時間の移動や座りっぱなし:長時間飛行機に乗るなど、長時間同じ姿勢でいると血流が悪くなり、血栓ができやすくなります。
2. 手術後:特に膝や股関節の手術後は血栓のリスクが高まります。
3. 運動不足や肥満:体を動かさない生活や肥満も血流を悪くし、血栓ができやすくなります。
4. 加齢: 年齢が上がると血栓のリスクが高まります。
5. 妊娠: 妊娠中は血液が固まりやすくなり、特に出産後の数週間は血栓のリスクが高まります。
6. 遺伝的要因: 血液が固まりやすい遺伝的な状態がある場合、血栓のリスクが高まります。
7. 喫煙: 喫煙は血管を収縮させ、血液が固まりやすくなります。
8. がん: がんやがん治療は血液が固まりやすくなることがあります。
9. ホルモン療法:ホルモン補充療法や経口避妊薬の使用は血栓のリスクを高めることがあります。
これらの要因が重なると、血栓ができるリスクはさらに高まります。
深部静脈血栓症(DVT)の症状
DVTの症状には、以下のようなものがあります。・足の腫れ ・足の痛みや重さ ・足の皮膚の赤みや熱感
これらの症状は通常片方の足に見られます。しかし、DVTは症状が出ないこともあります。症状がある場合でも、ほかの病気と間違えやすいため、正確な診断が必要です。
深部静脈血栓症(DVT)の診断
DVTの診断には超音波検査と血液検査が必要です。血液検査ではDダイマーという物質をチェックします。
Dダイマーは、体の中で血液が固まってできた血のかたまり(血栓)が壊れて分解されるときにできる、小さなかけらのようなものです。血液が固まるのは、けがをしたときなどに出血を止めるためにとても大切なことですが、血管の中で血のかたまりができてしまうと、血流が悪くなったり、体の他の部分に悪影響を及ぼすことがあります。Dダイマーの量を調べることで、体の中に血のかたまりができているかどうかを調べることができます。
深部静脈血栓症(DVT)の治療
DVTの治療には、血液をサラサラにする薬(抗凝固剤)が使われます。これにより、血栓が大きくなるのを防ぎ、新しい血栓ができるのを防ぎます。重症の場合は、血栓を溶かす薬や手術が必要なこともあります。治療は医師の指導のもとで行います。抗凝固剤
抗凝固剤は、血液が固まるのを防ぐ薬です。これにより、既存の血栓の成長を防ぎ、新たな血栓の形成を予防します。深部静脈血栓症の治療には、ワルファリンやヘパリンなどの従来使用されてきたな抗凝固剤や、リバーロキサバン、アピキサバン、ダビガトランなどの新しい経口抗凝固剤(DOAC)が使用されます。これらの薬は、医師の指示に従って正確に服用することが重要です。用量が多すぎると出血のリスクが高まり、少なすぎると血栓が再発する可能性があります。弾性ストッキング
弾性ストッキングは、脚に圧力をかけて血液の流れを助ける特殊な靴下です。これにより、血栓の形成を防ぐことができます。深部静脈血栓症の治療において、弾性ストッキングは抗凝固剤と併用されることが多いです。医師の指示に従って、正しいサイズと圧力のストッキングを選び、毎日着用することが重要です。治療期間は、個々の状況によって異なりますが、通常は数ヶ月間続ける必要があります。定期的な医師の診察と血液検査を行い、治療の効果を監視し、必要に応じて治療計画を調整することが大切です。
深部静脈血栓症(DVT)の予防
DVTの予防には、以下のような方法があります。– 定期的に足を動かす
– 長時間座ったり立ったりする場合は、休憩を取り足を動かす
– 水分を十分に摂る
– 弾性ストッキングの着用
特に、長時間の移動(飛行機・バス・電車)や手術後はDVTのリスクが高まるため、注意が必要です。