そんなお悩みありませんか?
今回の記事では、下肢静脈瘤の種類別に症状・治療法について解説しました。
下肢静脈瘤とは
足の血管が太くなり、屈曲・蛇行して目立つようになったものを「下肢静脈瘤」といいます。下肢静脈瘤の種類
下肢静脈瘤には4種類あります。- 伏在型静脈瘤
- 側枝型静脈瘤
- 網目状静脈瘤
- クモの巣状静脈瘤
伏在型静脈瘤
足の静脈には皮膚の真下の皮下脂肪層を走る「表在静脈」と、皮下脂肪よりも深い筋肉の中を走る「深部静脈」があります。表在静脈が地上を走る電車、深部静脈は地下鉄に例えられます。
主に下肢静脈瘤が発生するのは、地上を走る電車に相当する「表在静脈」です。
一般的に立った姿勢で3㎜以上の太さのものを「静脈瘤」といいます。
表在静脈には大きく分けて「大伏在静脈」と「小伏在静脈」の2本の静脈があります。
静脈には血液を心臓に運ぶ役割があるため、血液が重力によって下に流れないようにする大切な仕組みがあります。
それが「静脈弁」です。
静脈弁は上にだけ開く扉で、血液を上向きには通しますが、下には戻らないようにするストッパーの役割をします。
この静脈弁のおかげで血液は心臓に向かって上方向に流れていくことができるのです。
ところが、この静脈弁がきちんと閉じなくなってしまうと、弁のすきまから血液がこぼれ落ちるようになります。
これが静脈血の逆流です。
下から上がってきた血液と、上から逆流してきた血液がぶつかり合うことによって、血液は渋滞するようになります。
これを医学用語で「静脈うっ滞」と言います。
慢性的に静脈内で血液がうっ滞するようになると、静脈は少しずつ引き延ばされていきます。
ちょうと何日間も水を入れっぱなしにした水風船を想像してみてください。
静脈が太くなると、弁も引き伸ばされてさらに閉じなくなるので、血液がさらに逆流して渋滞がもっとひどくなります。
この悪循環を繰り返すことにより、静脈はますます太くなり、さらにはクネクネと蛇行するようになります。
つまり、伏在型静脈瘤は大(小)伏在静脈の弁がきちんと閉じなくなり、血液が逆流したことにより生じた静脈瘤なのです。
静脈瘤にタイプとしては、この伏在型静脈瘤が最も多くみられます。
<症状>
静脈を流れる血液は老廃物を多く含むため、伏在型静脈瘤の場合、血液が重力により逆流するため、足の静脈には汚い血液が溜まった状態となります。すると、足のだるさ・重さ、足の血管が浮き出て目立つ、こむら返り、足のむくみなどの症状が出現するようになります。
下肢静脈瘤が進行すると「うっ滞性皮膚炎」とよばれる、湿疹・かゆみ、皮膚の色が悪くなる(色素沈着)などの症状が出現するようになります。
最悪の場合、皮膚潰瘍になることもあります。
<治療の必要性>
自覚症状もなく、うっ滞性皮膚炎にもなっていない方は、経過観察でも構いません。自覚症状のある方は手術により症状の改善が見込めます。
湿疹・かゆみ、色素沈着、皮膚潰瘍などの皮膚症状(「うっ滞性皮膚炎」といいます)が見られた場合は特に手術が必要です。
<治療方法>
圧迫療法
手軽に始められる治療方法としては圧迫療法があります。「弾性ストッキング」と呼ばれる医療用のストッキングを着用します。
このストッキングは足首の圧迫力が一番強く、ふくらはぎに近づくにつれて圧迫力が弱くなるように繊維が編まれています。
そのため、足先から血液を絞り出すような力がかかります。
そのため、足の静脈に溜まった血液を心臓に送り届けてくれます。
弾性ストッキングの着用により、足のだるさ、むくみ、こむら返りなどの症状は速やかに改善することができます。
ただし、静脈弁がおかしくなった静脈自体を治す効果はありません。
そのため、弾性ストッキングを脱いだとたんに効果がなくなります。
この弾性ストッキングは普通の靴下と比べると硬くて、履くには慣れが必要です。
弾性ストッキングについて解説した動画はこちらをクリックすると視聴できます
血管内焼灼術
現在、伏在静脈型の下肢静脈瘤に対する治療方法は、レーザーカテーテルまたは高周波カテーテルによる血管内焼灼術が標準治療です。血液の逆流を防止する静脈弁が機能しなくなってしまった伏在静脈は、もはや逆流してしまう下水管と同じで、体にとっては悪影響しか及ぼしません。
そのため逆流する伏在静脈をレーザーあるいは高周波による熱で焼いて閉塞させてしまえば、血液の逆流は起こらなくなります。
レーザー焼灼術の詳しい動画はこちらをクリックするとご覧いただけます
血管内塞栓術
最近は瞬間接着剤と同じ成分であるシアノアクリレートにより静脈を接着し、血液の逆流が起こらないようにする治療法も行われるようになりました。この治療法は「グルー治療」とも呼ばれます。
血管内塞栓術(グルー治療)に関する動画はこちらをクリックするとご覧いただけます
従来のスタンダードな手術方法であるストリッピング(静脈抜去術)手術は、ほとんど行われなくなりました。
その理由は、ストリッピング手術はメスで皮膚を切開する必要があるため、体に対するダメージが大きいこと、そして、レーザーまたは高周波で治療できない伏在型静脈瘤はほとんどなくなってしまったからです。
側枝型静脈瘤
側枝型静脈瘤は、その名の通り「枝分かれした」静脈瘤です。つまり、大(小)伏在静脈から枝分かれした静脈に逆流が生じ、年月の経過とともに徐々に静脈が太くなり、クネクネ蛇行したものです。
<症状>
症状は伏在型静脈瘤とほぼ同じです。<伏在型静脈瘤と側枝型静脈瘤の違い>
伏在静脈は筋膜と筋膜の間に挟まれた“saphenous compartment”というスペースを走るため、静脈の拡張や蛇行はさほどでもないのですが、側枝型静脈瘤は伏在静脈から枝分かれして主に皮下脂肪の層を走るため、静脈の拡張と蛇行が著しくなる傾向にあります。そのため、治療の際にはカテーテルやストリッピングに用いる特殊なワイヤーが入らないことがしばしばあります。
<治療方法>
最近はレーザーカテーテルが改良され、クネクネと曲がりくねった静脈瘤でも、皮膚を切開することなくレーザー焼灼ができるようになりました。皮膚を切開しないため傷跡が目立ちません。
抜糸も必要ないので術後の安静も必要ありません
レーザーカテーテルでも焼ききれない小さな静脈瘤は硬化剤を注入して閉塞させる硬化療法を行います。
クモの巣状静脈瘤
網目状静脈瘤と同様に、太ももやひざ、ふくらはぎに赤や紫色の毛細血管が見られることがあります。これをクモの巣状静脈瘤といいます。
皮膚の直下、真皮と呼ばれる層を走る直径0.1~1mmの毛細血管です。
英語ではspider veinといい、クモの巣状「静脈瘤」と名前はついていますが、正確には、「毛細血管拡張症」と言います。
太ももの裏側を走る表在静脈「外側静脈系」から派生し、多くの場合、「栄養血管」といわれる網目状静脈瘤を根っことして、樹枝状に生えてきます。
<原因>
足の静脈がボコボコ目立つ通常の「下肢静脈瘤」とは発生の原因が異なります。伏在静脈瘤や側枝型静脈瘤は、静脈の逆流防止弁がダメになり血液が逆流することで静脈瘤が発生します。
これに対し、クモの巣状静脈瘤はホルモンの影響、遺伝、皮膚が薄いことなどの要因に加え、静脈の血圧が高くなることにより毛細血管が拡張・蛇行していきます。
一番女性ホルモンが分泌されやすい20-30代や妊娠中に発生することが多く、年をとるにつれ増えてくるというわけではありません。
<症状>
クモの巣状静脈瘤の部分にピリピリ・チクチクとした痛みや「灼熱感」を訴える方がまれにいらっしゃいますが、基本的には無症状です。美容的な問題であることがほとんどです。
<治療の必要性>
見た目は気にしないという方は、放っておいても構いません。見た目を気にして治療を希望される方への治療法は、保険診療では硬化療法、自由診療では皮膚レーザー照射があります。
<治療方法>
硬化療法
血管内に硬化剤を注射して静脈瘤に炎症を生じさせます。静脈瘤をストッキングや包帯で48時間圧迫すると、静脈瘤が閉塞して血液が流れなくなります。
血が流れなくなった静脈瘤は、数か月かけて徐々に消えていきます。
硬化療法を行うと静脈瘤に炎症が起こるので、10~30%くらいの方は静脈瘤に一致して皮膚の色素沈着が起こります。
色素沈着は半年~1年程度かかりますが、徐々に消えていきます。
クモの巣上静脈瘤に対する硬化療法の動画はこちらをクリック
皮膚レーザー照射
皮膚に直接レーザー光線を当てて治療します。レーザー光線は赤い色に吸収されますので、赤い色をしたクモの巣状静脈瘤はレーザー照射の良い適応です。
どちらがきれいに仕上がるかについては、硬化療法よりも皮膚レーザー照射のほうが仕上がりは優れています。
ただし、健康保険が効きませんので自費での治療となります。
網目状静脈瘤
網目状静脈瘤は、太ももやひざ、ふくらはぎにみられます。直径2mmまでの毛細血管で、通常は青色をしています。
クモの巣状静脈瘤と交通していることが多く、クモの巣状静脈瘤の「栄養血管」ともいわれます。
<症状>
クモの巣状静脈瘤と同様に、特有の症状はありません。<治療法>
硬化療法
クモの巣状静脈瘤と同様に、見た目を気にされる方は硬化療法が適しています。皮膚レーザー照射は青い静脈にはレーザー光が吸収されないため、効果的とは言えません。
以上、下肢静脈瘤の種類と治療方法について解説いたしました。
今回の記事はいかがでしたでしょうか?
今回の記事を動画にしましたので、是非ご覧ください