【専門医が解説】足の赤み・腫れに注意!血栓性静脈炎の原因・予防・治療法とは?

【医師監修】血栓性静脈炎とは?症状・原因・治療・予防法を徹底解説


足が突然赤く腫れて痛い?それは血栓性静脈炎かもしれません|原因・症状・治療・予防を徹底解説

「足が急に赤く腫れてきた」「血管がしこりのように硬くなっている」そんな症状に不安を感じていませんか?
ただの疲れやむくみと思って放置すると、深刻な病気に発展することもあります。
この記事では、以下のポイントをわかりやすく解説します。
  • 血栓性静脈炎とは?
  • 主な原因とリスク要因
  • 現れる症状と注意すべきサイン
  • 診断方法と治療の流れ
  • 日常生活でできる予防策
早期発見・早期対処が何よりも重要です。ぜひ最後までご覧ください。

血栓性静脈炎とは?|静脈にできた血栓が引き起こす炎症

血栓性静脈炎とは

血栓性静脈炎は、静脈の中に血栓(血の塊)が形成され、それに伴って炎症が生じる病態を指します。
多くは脚の表在静脈(皮膚の近くを走る浅い静脈)に発生しますが、放置するとまれに血栓が深部静脈へ進行し、深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓症といった重篤な合併症を引き起こすリスクもあります。

本来、血液は体にとって必要不可欠なものですが、血管内で固まって血栓になると、体はこれを「異物」と認識します。
この異物に対して免疫システムが反応を起こし、局所で炎症が発生します。その結果、赤み・腫れ・痛み・熱感といった症状が引き起こされるのが血栓性静脈炎の特徴です。

血栓性静脈炎の主な原因

原因具体例
静脈の損傷怪我、手術、カテーテル挿入
血流の低下長時間の座位・立位、旅行、安静
血液の凝固亢進脱水症状、がん、妊娠、ホルモン療法
特に下肢静脈瘤がある方は、静脈内に血液が滞りやすく、血管壁にも負担がかかりやすいため、血栓ができやすい状態になっています。
このため、血栓性静脈炎の発症リスクが通常より高くなります。

季節による発生リスク

血栓性静脈炎は夏の脱水、あるいは冬の暖房環境での水分不足により発症しやすくなります。一年を通して注意が必要です。

血栓性静脈炎の症状|見逃してはいけないサイン

  • 赤み、腫れ、熱感:血管周囲に炎症が広がることで、皮膚が赤く腫れ、触れると熱を帯びるのが特徴です。
  • 局所の痛み・圧痛:血栓による血流障害と炎症反応により、歩行時や触ったときにズキズキとした痛みを感じることがあります。
  • 硬く触れる血管のしこり:血栓ができた静脈は、通常の柔らかい血管とは異なり、皮膚の下で硬いしこりとして触れることがあります。
血栓が形成されると、体はこれを異物と認識して免疫反応を引き起こし、局所に炎症が発生します。この炎症によって、赤み、腫れ、痛み、熱感といった症状が現れるのです。

特に、症状が短期間で急速に悪化する場合や、足全体が大きく腫れている場合は、深部静脈血栓症(DVT)へ進展している可能性もあります。

違和感や異常を感じたら、自己判断せず、できるだけ早めに専門医の診察を受けましょう。

血栓性静脈炎と深部静脈血栓症(DVT)の違い

血栓ができる場所や症状によって、治療方針やリスクも異なります。ここで、血栓性静脈炎と深部静脈血栓症(DVT)の違いを比較してみましょう。
項目血栓性静脈炎深部静脈血栓症(DVT)
発生部位表在静脈(皮膚近くの静脈)深部静脈(筋肉の奥深くの静脈)
主な症状赤み、腫れ、熱感、局所の痛み・しこり脚のむくみ、痛み、皮膚の色調変化
危険度通常は局所にとどまるが、例外あり肺塞栓症を引き起こすリスク大
検査方法超音波検査、血液検査超音波検査、CT検査、血液検査
治療法圧迫療法、鎮痛薬、抗凝固療法(必要に応じて)抗凝固療法(血液をさらさらにする薬)中心
血栓性静脈炎でも、血栓が深部に広がるケースもあるため、症状が強い場合は専門医による診察を受けることが重要です。

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血栓性静脈炎の診断|早期発見がカギ

  • 医師による視診・触診:患部の赤み、腫れ、熱感、しこりの有無を確認します。触診により、表在静脈に沿った硬結(血栓)を捉えることができます。
  • 超音波検査(血栓の有無を確認):超音波(エコー)を使って、血管内に血栓が存在するか、血流が正常に保たれているかをリアルタイムで可視化します。痛みもなく、身体への負担が非常に少ない安全な検査です。
  • 血液検査(Dダイマー値の測定):血液中に血栓ができた際に上昇する「Dダイマー」という物質の量を測定します。Dダイマーが高値の場合、血栓の存在が疑われます。
特に超音波検査は、患者さんへの侵襲が少なく、迅速かつ正確に血栓の存在や位置、大きさを把握できるため、血栓性静脈炎の診断において非常に重要な役割を果たします。

痛みや違和感を感じたら、我慢せず、早めに医療機関で検査を受けましょう。

血栓性静脈炎の治療法|症状に応じたアプローチ

  • 抗凝固療法:血液をさらさらに保つ薬を用い、血栓の拡大や新たな血栓形成を防ぐ治療です。特に、血栓が大腿静脈など深部に近い静脈へ波及するリスクがある場合には、早期に抗凝固療法を開始することが推奨されます。
  • 弾性ストッキングの着用:弾性ストッキングによる圧迫療法は、血液の循環を促進し、静脈内のうっ滞を防ぐために非常に有効です。症状の悪化を防ぎ、再発リスクを下げる効果も期待できます。
  • 鎮痛薬の使用:炎症による局所の痛み・腫れ・熱感を緩和するために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの鎮痛剤が使用されることがあります。症状緩和により、生活の質(QOL)の維持にもつながります。
  • 原因となる下肢静脈瘤の治療:血栓性静脈炎が静脈瘤に関連している場合は、静脈瘤そのものを治療しない限り、再発を繰り返すリスクが残ります。レーザー治療や高周波治療など、適切な方法で根本治療を検討することが重要です。
※血栓が深部静脈に及ぶ場合や、広範囲に炎症が広がっている場合は、入院のうえで慎重な管理・治療が必要になることもあります。
いずれの場合も、自己判断せず、専門医の指導のもと適切な治療を受けることが大切です。

関連記事【下肢静脈瘤に効果的な弾性ストッキング(着圧ソックス)とは?選び方と使い方ガイド】を読む

よくある質問(FAQ)

Q. 血栓性静脈炎は自然に治りますか?

軽症の血栓性静脈炎は自然軽快することもありますが、自己判断は危険です。血栓が深部静脈に及ぶリスクもあるため、必ず医師の診察を受けましょう。

Q. 血栓性静脈炎は再発しますか?

はい。特に下肢静脈瘤などの基礎疾患がある場合、再発のリスクが高まります。根本的な原因に対する治療(例:下肢静脈瘤の治療)が重要です。

Q. どのタイミングで医療機関を受診すべきですか?

足に赤み・腫れ・しこり・痛みが出た場合は、できるだけ早く受診しましょう。自己判断で様子を見ると、悪化するリスクがあります。

血栓性静脈炎の予防法|今日からできるセルフケア

① 長時間同じ姿勢を避ける

座りっぱなしや立ちっぱなしの姿勢が続くと、血流が滞りやすくなり、血栓形成のリスクが高まります。
オフィスワークや長時間の移動中でも、1時間ごとに立ち上がって歩くその場でつま先立ち運動をするなど、軽く足を動かす意識を持ちましょう。

② こまめな水分補給

脱水状態になると血液が濃くなり、血栓ができやすくなります。
喉が渇いたと感じる前に、少量ずつこまめに水分を補給する習慣を心がけましょう。特に、夏場の暑い日や、冬場の暖房が効いた室内では、知らないうちに体内の水分が失われているため、意識的な水分補給が重要です。

③ 下肢静脈瘤の早期治療

下肢静脈瘤があると、血液の流れが滞りやすくなり、血栓性静脈炎のリスクが高まります。
見た目だけの問題だと思って放置せず、症状が軽いうちに専門医に相談し、適切な検査と治療を受けることが重要です。

下肢静脈瘤の状態によっては、弾性ストッキングによる圧迫療法や、レーザー治療・高周波治療など、負担の少ない治療方法が選択できる場合もあります。

早期対応が、将来的な血栓性静脈炎やより重篤な合併症を防ぐ第一歩となります。

関連記事【下肢静脈瘤の治療法徹底比較】を読む

まとめ|足の異変を感じたら早めの受診を

足の急な赤み・腫れ・痛みは、単なる筋肉痛や打撲ではなく血栓性静脈炎のサインかもしれません。
放置すれば、より危険な深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓症へと進行する可能性もあります。
少しでも違和感を覚えたら、早めに専門医の診察を受けましょう。

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