飲食店で働く男性が注意すべき下肢静脈瘤の症状と予防策|仕事中の足の疲れに要注意
この記事は下肢静脈瘤専門クリニック「目黒外科」 院長 齋藤陽 医師が監修しています。
飲食店で働く男性の多くは、長時間立ちっぱなしや動き続ける環境に日常的にさらされています。実はそれが、知らぬ間に「下肢静脈瘤」を引き起こすリスクを高めているかもしれません。この記事では、飲食業に従事する男性に多い下肢静脈瘤の原因や症状、そして仕事を続けながらできる予防法について、専門医の視点で解説します。
飲食店勤務で下肢静脈瘤のリスクが高まる理由
飲食店のキッチンやホールでは、長時間立ち続けることが当たり前です。この状態が続くと、脚の静脈に血液が滞留し、うまく心臓へ戻らなくなります。これはふくらはぎの筋肉が“ポンプ機能”を果たせなくなるためで、結果として静脈が拡張し、瘤(こぶ)のような状態になります。

下肢静脈瘤の画像
男性が下肢静脈瘤になりやすい理由
下肢静脈瘤というと「女性特有の病気」と思われがちですが、実際には男性にも多く見られる疾患です。特に飲食業で働く男性は、長時間の立ち仕事による血流の滞りから下肢静脈瘤を発症しやすい傾向にあります。
しかし、男性の場合は「見た目を気にしない」「多少の痛みは我慢してしまう」「忙しくて病院に行く時間がない」「仕事を簡単に休めない」といった理由から、症状があっても放置されがちです。
そのため、発見や治療が遅れ、気づいたときには重症化しているケースが少なくありません。症状が進行すると、「就寝中や起床時のこむら返り」「ふくらはぎのむくみ」「脚の重だるさ」などの症状だけでなく、「湿疹やかゆみ」「皮膚の硬化」「皮膚潰瘍」などの皮膚トラブルが出現し、仕事中の集中力やパフォーマンスに悪影響を及ぼすようになります。
下肢静脈瘤の予防策
1. 定期的な足の運動
長時間の立ち仕事や座りっぱなしの状態が続くと、足の静脈内に血液が滞りやすくなり、下肢静脈瘤の原因になります。
これを防ぐためには、1時間に1回を目安に意識的に脚を動かすことが大切です。
具体的には、その場で足首を10回ほど回す・つま先立ちをゆっくり10回繰り返す・その場足踏みを1分程度行うなどの軽い運動がおすすめです。
これらの動きは、ふくらはぎの筋肉を刺激し、いわゆる“筋ポンプ”の働きを活性化させ、滞った血液を効率よく心臓に送り返す効果があります。業務の合間や休憩時間に取り入れるだけで、足のだるさやむくみの軽減につながります。
2. 弾性ストッキング(着圧ソックス)の着用
弾性ストッキング(着圧ソックス)は、下肢静脈瘤の予防や軽症例の進行抑制に有効なアイテムです。男性用としては、ネイビーやブラックなどの目立たないカラーや、ビジネスソックスに見えるハイソックスタイプが多く販売されており、制服や作業着の下に着用しても違和感がありません。
近年では、蒸れにくい素材や締め付けすぎない設計のものもあり、飲食業の現場でも快適に使える仕様が増えています。
足に適度な圧力を加えることで、静脈の逆流を防ぎ、日中の足の疲労感やむくみを軽減する効果が期待できます。
また、仕事後の脚のだるさや、翌朝のこむら返りの予防にも役立ちます。毎日継続して着用することで、静脈への負担を和らげ、症状の進行を抑えるサポートにもなります。

弾性ストッキング(画像提供:グンゼ株式会社)
3. 仕事後のケア
立ち仕事で1日中酷使された脚には、仕事終わりのケアがとても重要です。特に効果的なのが、足を心臓より高い位置に保って休むことです。帰宅後すぐに、クッションや座布団などを使って仰向けに寝転び、足を10〜15分ほど高く上げるだけでも、重力の助けを借りて下肢にたまった静脈血を効率よく心臓へ戻すことができます。
この習慣を毎日続けることで、ふくらはぎの張り・足のむくみ・重だるさが軽減され、翌朝の脚の軽さや疲労感の回復に大きく影響します。入浴前や就寝前のちょっとした時間に取り入れるだけでOKなので、無理なく継続しやすく、下肢静脈瘤の進行予防にも役立ちます。

足を上げて休む
4. 定期的な医師の診察
「足がだるい」「夜中や明け方に足がつる」「夕方になると靴下の跡がくっきり残る」などの症状がある場合、それは下肢静脈瘤の初期サインかもしれません。特に立ち仕事をしている方は、疲労や年齢のせいだと勘違いして見過ごしてしまうことが多くありますが、実は血液の逆流が始まっているサインである可能性があります。
下肢静脈瘤は自然に治ることはなく、放置すると皮膚炎や色素沈着、潰瘍といった深刻な合併症へと進行することもあります。症状が軽いうちであれば、弾性ストッキングや日常生活でのケアで改善が期待できるケースもあり、治療の選択肢も広がります。少しでも異変を感じたら、早めに血管外科や静脈治療専門医の診察を受けることが、健康な足を守る第一歩です。
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仕事に与える影響とリスク
下肢静脈瘤を放置すると、初期のむくみやだるさといった軽い症状だけでなく、皮膚の色素沈着や湿疹(うっ滞性皮膚炎)など、皮膚トラブルが現れるようになります。これは血液の逆流により静脈内圧が上がり、皮膚のすぐ下に血液成分が染み出すことで起こる現象です。さらに進行すると、皮膚が硬くなったり、茶色く変色して元に戻らなくなったり、最終的には皮膚潰瘍(かいよう)へと悪化する可能性もあります。潰瘍は一度できると治癒に長期間を要し、再発もしやすいため、日常生活や仕事に深刻な支障をきたします。

下肢静脈瘤による皮膚トラブルの写真
特に飲食業など立ち仕事を中心とする職種では、足の痛みやかゆみ、重だるさが続くことで、立ちっぱなしが困難になり、業務効率の低下や休職につながるケースも少なくありません。こうした状態が慢性化すると、単に脚の不調にとどまらず、睡眠障害・集中力低下・精神的なストレスなど、生活全体の質(QOL:クオリティ・オブ・ライフ)を著しく低下させることになります。
患者さんの体験談
「居酒屋で15年以上働いてきましたが、ここ数年で足がだるくて仕事が辛くなってきたんです。最初は疲れのせいだと思っていましたが、ある日、膝下に血管が浮いているのを見て驚きました。
目黒外科を受診して『下肢静脈瘤』と診断され、レーザー治療を受けました。治療後は脚の重さがなくなり、こむら返りもなくなりました。今では着圧ソックスも使って快適に仕事をしています。」
(40代男性・調理師)
まとめ
飲食店で働く男性にとって、下肢静脈瘤は決して無縁ではありません。むしろ、立ちっぱなしの業務こそがリスクを高める要因です。定期的な運動や着圧ソックスの活用、帰宅後のケアを徹底し、少しでも異変を感じたら専門医に相談することが、将来的な重症化を防ぐカギになります。
下肢静脈瘤が気になる方は、我慢せず専門医にご相談ください。症状が軽いうちに対応することが、健康的な仕事生活の継続につながります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 男性も下肢静脈瘤になりますか?
A. はい、特に立ち仕事をする男性に多く見られます。見た目の悪化をあまり気にしない事、ご自分の体よりも仕事を優先してしまう事などの理由により、発見が遅れるケースがあるため注意が必要です。
Q2. 飲食業で働いていても、治療後にすぐ仕事復帰できますか?
A. 当院のレーザー治療は日帰り手術(通院治療)です。翌日から通常勤務に復帰できます。
Q3. 弾性ストッキング(着圧ソックス)は男性にも効果がありますか?
A. もちろんです。弾性ストッキング(着圧ソックス)は足の疲労軽減・むくみ予防に非常に効果があります。特に飲食業に従事する方には推奨されます。
下肢静脈瘤専門クリニック「目黒外科」のご案内
東京都品川区にある目黒外科は、下肢静脈瘤に特化したクリニックとして年間1000件以上の手術実績を誇ります。最新のレーザー治療やグルー治療を導入し、痛みの少ない日帰り手術を提供しています。