日本における下肢静脈瘤患者の増加とその要因:高齢化と生活習慣がもたらす影響
下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)は、血管の異常な膨張が脚に現れる疾患で、痛みやむくみ、見た目の変化などが症状として現れます。2005年に愛媛大学公衆衛生学教室の小西正光教授らが発表した調査では、日本国内における下肢静脈瘤の実態が明らかになりました。この調査は、40歳以上の9,123人を対象に行われ、平均年齢は62.4歳でありました。
調査結果からみる下肢静脈瘤の患者数
調査結果によると、対象者のうち8.6%(男性3.8%、女性11.3%)が手術の対象となるような下肢静脈瘤を抱えていることがわかりました。このデータから、
日本全体での下肢静脈瘤の患者数は1000万人以上と推計されています。このように多くの人々が下肢静脈瘤の症状に悩まされていることは、病気の認知度向上や早期発見・治療の重要性を物語っています。
下肢静脈瘤患者の増加要因:高齢化社会
下肢静脈瘤の発症率が高いのは中高年以上の年齢層であり、日本が迎えている高齢化社会も患者数増加の一因です。実際、別の調査によれば、
70歳以上の人の約75%が下肢静脈瘤を抱えていると報告されています(平井正文ら、脈管学28、1989年)。年を取るにつれて、静脈の血液を心臓に送り出す「ふくらはぎのポンプ作用」が弱まることが原因の一つとされています。この作用が弱まることで、血液が脚の静脈内に滞りやすくなり、静脈瘤が生じやすくなります。
筋肉量の減少と生活習慣も影響
年齢とともに下肢の筋肉量が減少すると、静脈瘤の発症リスクが高まります。特にふくらはぎの筋肉は「第2の心臓」とも呼ばれ、ポンプ作用を担っていますが、加齢により筋力が低下し、血流が滞りやすくなります。さらに、食生活の乱れや運動不足により肥満傾向が強まることも、下肢静脈瘤のリスクを高める要因となります。肥満により体重が増加すると、下肢にかかる負担が大きくなり、静脈の弁機能が弱まりやすくなるためです。
まとめ
下肢静脈瘤は、年齢や生活習慣の影響で増加しやすい疾患です。日本では、1000万人以上が何らかの形で下肢静脈瘤を抱えていると推定され、特に高齢者に多く見られる傾向にあります。今後、高齢化が進む中で、さらに患者数が増える可能性があるため、適切な治療や予防の取り組みが求められています。