
【医師監修】弾性ストッキングの正しい使い方と選び方|下肢静脈瘤の予防と対策Q&A
監修:下肢静脈瘤専門クリニック目黒外科院長 齋藤陽 医師弾性ストッキングとは?
弾性ストッキングは、下肢静脈瘤の予防や治療をサポートするために多くの患者さんに処方される医療用ストッキングです。足に段階的に圧力をかけることで、血液の流れを助け、血液が足にたまりにくくなります。正しい使い方や選び方を知ることで、効果を最大限に活かすことができます。よくある質問Q&A
Q1: 弾性ストッキングとは何ですか?
A: 弾性ストッキングは、足に段階的な圧力をかけることで、血液が重力に逆らって心臓へ戻るのを助ける医療用ストッキングです。特にふくらはぎから足首にかけての圧迫を強めることで、静脈の血流を促進し、下肢静脈瘤や足のむくみ、だるさといった症状を軽減します。また、長時間のフライトやデスクワーク、立ち仕事などで動きが少ない場合に起こりやすい血栓(エコノミークラス症候群)や深部静脈血栓症の予防にも効果的です。正しく選び、適切に着用することで、血行を保ち、静脈系のトラブルを未然に防ぐことが期待されます。
Q2: 弾性ストッキングの種類にはどんなものがありますか?
A: 弾性ストッキングには主に3つのタイプがあります。「ハイソックスタイプ」「ストッキングタイプ」「パンストタイプ」です。中でもハイソックスタイプ(膝下までの長さ)は、最も装着が簡単で日常的に使いやすいため、多くの患者さんに選ばれています。軽度のむくみや静脈瘤の予防にはハイソックスで十分な効果が期待でき、ズボンの下にも目立たず着用できるのが利点です。スカートを履く機会が多い方や、ふともも上部まで圧迫が必要な場合には、ストッキングタイプやパンストタイプが適しています。ライフスタイルや症状に応じて、使いやすいタイプを選ぶことが大切です。・ハイソックスタイプ:

・ストッキングタイプ:

・パンストタイプ:

また、つま先の形状には「つま先なしタイプ」と「つま先ありタイプ」があり、それぞれに特徴があります。つま先なしタイプは、足指が圧迫されずに開放されているため、外反母趾のある方や、水虫(白癬)など通気性を重視したい方に適しています。また、サンダルなど指先の見える靴にも合わせやすく、夏場に快適に着用したい方にも人気です。一方、つま先ありタイプは足全体をしっかりと包み込んで圧迫できるため、冷えが気になる方や冬場の着用に向いています。使用する季節や足の状態、靴の種類に応じて、適切なタイプを選ぶことが大切です。

Q3: 弾性ストッキングはどのように選べばよいですか?
A: 自分に合った弾性ストッキングを選ぶためには、特に以下の2点に注意することが重要です。
圧迫力(着圧レベル): 弾性ストッキングは、足首から上に向かって段階的に圧力をかける構造になっており、その強さは「mmHg(ミリメートル水銀柱)」という単位で表されます。
- 軽度のむくみやエコノミークラス症候群の予防には弱圧(20〜30mmHg程度)
- 進行した下肢静脈瘤や血管の逆流がある場合には中圧(30〜40mmHg)
- うっ滞性皮膚炎やリンパ浮腫などの重症例には強圧(40mmHg以上)が推奨されます。
医師の診察を受けたうえで、症状に応じた適切な圧迫力を選びましょう。
サイズ: サイズ選びで最も大切なのは、足首の周囲径です。足首、ふくらはぎ、太ももの各部位を正確に測定し、メーカーごとのサイズ表に照らし合わせて選びます。サイズが合わないと、圧迫が足りなかったり逆に締め付けすぎたりして、十分な効果が得られないだけでなく、かえって血流を悪化させるおそれもあります。自己判断せず、可能であれば医療機関で測定してもらうのがおすすめです。
Q4: 弾性ストッキングは1日中着けていても大丈夫ですか?
A: 基本的に日中の活動時間帯に着用するものであり、1日中着けていても問題ありません。特におすすめなのは、朝起きてすぐ、まだ足がむくんでいない状態で着用することです。こうすることで、1日のむくみや血液うっ滞の予防効果を最大限に引き出せます。
一方で、夜間の就寝中は基本的に脱ぐことを推奨しています。なぜなら、横になっている状態では足と心臓の高さがほぼ同じになり、血液が自然に戻りやすくなるためです。さらに、就寝中にストッキングの圧迫が必要以上になると、血行不良や不快感を招くことがあります。
ただし、医師から夜間の着用を指示された場合(重度の静脈うっ滞やリンパ浮腫など)は例外ですので、自己判断せず指示に従ってください。
Q5: 夏でも着けたほうがいいですか?
A: はい、夏場でも弾性ストッキングの着用は推奨されます。というのも、高温によって血管が拡張しやすくなるため、静脈内の血液が停滞しやすく、むくみをはじめとする静脈瘤の症状が悪化しやすくなるからです。特に、冷房の効いた室内で座りっぱなしの時間が長い方や、外出時に強い日差しを浴びる方は注意が必要です。
暑さによる不快感を軽減するためには、以下の対策がおすすめです:
通気性の良い薄手素材(夏用に設計されたメッシュタイプなど)
つま先のない「オープントゥタイプ」(蒸れにくく通気性に優れる)
着用の継続が難しい場合は、日中だけに限る、屋外での使用を避ける、こまめに脚を冷やすといった工夫をしながら、無理のない範囲で使用を継続しましょう。
Q6: 手入れ方法は?
A: 弾性ストッキングの効果と寿命を保つためには、適切なお手入れが欠かせません。圧迫力のある繊維はデリケートなため、以下の点に注意してお手入れしましょう。
基本は手洗いが推奨されます。 ぬるま湯(30℃前後)に中性洗剤を使って優しく押し洗いしてください。もみ洗いは繊維を傷め、圧迫力の低下につながるため避けましょう。
洗濯機を使う場合は、必ず洗濯ネットに入れて弱水流コースで。 この場合でも柔軟剤は使用せず、脱水は短めに設定するのが理想です。
乾燥機は使用しないでください。 高温により弾性素材が劣化し、圧迫力が著しく低下する可能性があります。必ず直射日光を避けて陰干ししてください。
また、毎日同じものを着用すると劣化が早まるため、2~3足をローテーションで使用することをおすすめします。
Q7: 血行が悪くなったりしませんか?
A: 適切なサイズと圧迫力の弾性ストッキングを正しく着用すれば、血行は悪くなるどころか、むしろ静脈の血流が改善されます。 これは段階的な圧迫によって、血液が足元から心臓方向へスムーズに流れるようサポートされるためです。
ただし、サイズが合っていない場合や、必要以上に強い圧迫のものを無理に使用すると、かえって血行障害や神経圧迫の原因になることがあります。具体的には、足のしびれ・痛み・冷感・赤み・発疹などの異常が見られることがあります。
そのような場合は、ただちに使用を中止し、医師や専門家に相談してください。 また、糖尿病や末梢動脈疾患など、血行障害のリスクがある疾患をお持ちの方は、着用前に必ず医療機関での確認を受けるようにしましょう。
Q8: 妊娠中でも使えますか?
A: はい、妊娠中でも弾性ストッキングの使用は可能であり、静脈瘤の予防や症状の緩和に非常に有効です。 妊娠中は、ホルモンバランスの変化や子宮による下半身の静脈圧迫、血液量の増加などにより、下肢静脈瘤のリスクが高まるとされています。
特に、以下のような妊婦さんには弾性ストッキングの着用が推奨されます:
立ち仕事が多い方や長時間同じ姿勢で過ごす方
ふくらはぎのむくみ・だるさ・血管の浮き出しを感じている方
過去の妊娠で静脈瘤になった経験がある方
ただし、妊娠中は体の変化が大きく個人差もあるため、必ず産婦人科や血管外科医と相談のうえで、適切な圧迫力・サイズ・使用時間を判断することが重要です。 また、出産後も静脈瘤が残ることがあるため、産後の経過観察も大切です。
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Q9: どこで購入できますか?
A: 弾性ストッキングは、以下のような場所で購入可能です。ご自身の症状や目的に応じて、適切な購入先を選びましょう。
医療機関(病院・クリニック)
症状が明らかな場合や保険適用を希望する場合は、まず専門医を受診しましょう。医師の処方に基づいて、患者様の病態や足のサイズに合った医療用ストッキングが提案され、処方箋の発行や購入先の紹介を受けられます。処方箋対応の調剤薬局・医療材料販売店
医師から処方された医療用ストッキングを購入できる施設です。サイズの計測や装着方法の指導を行っている店舗もあります。インターネット通販・ドラッグストア
軽度のむくみ対策や旅行用など、予防目的での使用には市販の弾性ストッキングでも対応できます。ただし、圧迫力やサイズ選びを誤ると効果が得られないため、商品説明をよく確認したうえで購入してください。
ご自身に合う製品がわからない場合は、必ず医師や専門スタッフに相談することをおすすめします。 特に初めて使用する方は、足の計測や装着指導を受けることで、より安全かつ効果的に使用できます。
まとめ
弾性ストッキングは、正しく選び、正しく使用することで、下肢静脈瘤や足のむくみ、だるさといった症状の予防・改善に大きな効果が期待できる医療機器です。特に、長時間の立ち仕事やフライト、妊娠中、静脈疾患の既往がある方にとっては、日常生活の質を高める大切なサポートアイテムとなります。
ただし、圧迫力(着圧)やサイズが合っていないと、十分な効果が得られないばかりか、かえって血行障害や皮膚トラブルの原因になることもあるため、自己判断での選定は避け、専門医の指導のもとで使用することが重要です。
目黒外科では、下肢静脈瘤治療を専門とする医師が、症状や生活スタイルに合わせた弾性ストッキングの選び方・使い方を丁寧にご案内しています。実際に足を計測し、圧迫力やタイプの違いについてもわかりやすくご説明いたします。
「自分に合ったストッキングがわからない」「むくみや血管の浮きが気になる」といったお悩みがある方は、どうぞお気軽にご相談ください。 医師・スタッフ一同があなたの足と健康を全力でサポートいたします。
