【図解】静脈の血流の仕組みを専門医がやさしく解説

 

 

【図解】静脈の血流の仕組みをやさしく解説

監修:医療法人社団トリプルウィン 目黒外科 院長 齋藤 陽


はじめに:血液はどのように体をめぐっているのか

私たちの体の中では、血液が心臓から全身へと流れ、酸素や栄養を届けています。
その血液は、使われた後に再び心臓へ戻る必要があります。
この「心臓に戻る道」を担っているのが「静脈」です。

しかし、重力に逆らって血液を上へ押し戻すのは簡単なことではありません。
特に足の静脈は、地球の重力の影響を受けやすく、血液がたまりやすい構造になっています。


【図解①】動脈と静脈の違い

種類 役割 血液の流れ 血圧 特徴
動脈 酸素を運ぶ 心臓 → 全身 高い 壁が厚く弾力がある
静脈 二酸化炭素を戻す 全身 → 心臓 低い 壁が薄く、逆流防止弁がある

動脈と静脈

静脈は動脈よりも血圧が低く、また重力に逆らって血液が流れるため、自然の力だけでは血液を心臓に戻せません。
そのために働くのが、「ふくらはぎの筋肉」と「静脈弁」です。


【図解②】ふくらはぎの筋肉が“第二の心臓”と呼ばれる理由

足の筋肉が収縮するたびに、静脈が押しつぶされ、血液が上方向へと押し出されます。
この働きを「筋ポンプ作用」と呼びます。

押し出された血液が逆流しないようにするために、静脈の中には逆流防止弁が設けられています。
この弁がしっかり閉じることで、血液は一方通行で心臓に向かって流れるのです。

筋ポンプ作用

  • 🩸 弁が正常な場合の流れ
    足 →(弁が開く)→ 心臓へ →(弁が閉じる)→ 逆流なし
  • ⚠️ 弁が壊れた場合の流れ
    血液が下方向に逆流 → 足に血液がたまり → 下肢静脈瘤の原因に


【図解③】静脈の種類と役割

足の静脈は、大きく分けて3つのグループに分類されます。

  1. 深部静脈
    太ももやふくらはぎの筋肉の中を走る主要な血管。体の大部分の血液を心臓へ戻します。
  2. 表在静脈
    皮膚のすぐ下を流れる血管。外から見える“青い血管”はこの表在静脈です。
  3. 交通枝(穿通枝)
    表在静脈と深部静脈をつなぐ連絡路。血液の流れを調整しています。

下肢静脈の解剖図

正常な状態では、血液は「表在静脈 → 交通枝 → 深部静脈 → 心臓」という方向に流れます。
しかし、逆流防止弁が壊れると、流れが逆転し、静脈が拡張して皮膚の下に“こぶ”のように浮き出ます。


静脈の逆流が起こるとどうなる?

静脈の弁が壊れる原因には、以下のようなものがあります。

  • 長時間の立ち仕事や座り仕事
  • 加齢や妊娠
  • 遺伝的な体質
  • 運動不足
  • 肥満

弁が壊れると、血液が下にたまり、足の「だるさ」「むくみ」「こむら返り」「皮膚の色の変化」などが現れます。
これが進行すると、下肢静脈瘤と呼ばれる状態になります。


【図解④】下肢静脈瘤になるメカニズムまとめ

  1. 弁が壊れる
  2. 血液が逆流
  3. 血液がたまる
  4. 静脈が拡張して皮膚の下に浮き出る

弁の壊れ方や血流の乱れ方によって、治療法は異なります。
超音波検査によって、どの静脈が逆流しているかを正確に確認し、最適な治療を選択することが重要です。

下肢静脈瘤


医師からのひとこと

「静脈の流れを理解することは、治療の第一歩です。
足のだるさやむくみを“年齢のせい”と思わず、
血流のサインとして一度ご相談ください。」

— 齋藤 陽(目黒外科 院長)


まとめ

  • 静脈は心臓に血液を戻す「帰り道」
  • ふくらはぎの筋肉と静脈弁が血流を支える
  • 弁が壊れると血液が逆流し、静脈瘤の原因になる
  • 早期発見・早期治療が大切

監修

医療法人社団トリプルウィン 目黒外科
院長 齋藤 陽(さいとう あきら)
〒141-0021 東京都品川区上大崎2-15-18 目黒東豊ビル6階
TEL:03-5420-8080

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