上皇后さま “右足に血栓できる症状” 治療必要なく経過観察へ
2022年8月26日の報道で、上皇后さまは右足のふくらはぎの静脈に血栓ができる「深部静脈血栓症」と診断され、宮内庁病院を訪ねられたそうです。上皇后さまの深部静脈血栓症は、膝より下の静脈に血栓ができる「末しょう型」と呼ばれる比較的リスクが低い種類で、検査の結果、いまのところ投薬などの治療は必要ないと診断され、経過観察を続けることになったとのことです。
引用 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220826/k10013788441000.html深部静脈血栓症とは?
足の筋肉の中を通る「深部静脈」と呼ばれる静脈の中に血栓、つまり血液のかたまりが発生する病気です。血栓が足の静脈を詰まらせて血行障害を起こしたり、血栓が流れて肺の血管を詰まらせてしまうことで肺塞栓症と言う病気を引き起こす事もあります。
深部静脈血栓症について詳しく解説する前に体の血管について解説します。
全身を流れる血液は心臓を起点として全身に送られていきます。
この時に血液が流れる血管が動脈です。
反対に全身の隅々まで届けられた血液が心臓に戻る際に通る血管が静脈です。
足の静脈の解剖をお示しします。
足の静脈は主に2種類あります。
足の静脈は2種類に分類される
①表在静脈・・・主に皮下脂肪の層を走る、比較的体の表面を流れる静脈②深部静脈・・・筋肉の中を走る、体の中心部を流れる静脈
そのため、主に2つの力を利用して上に向かって流れます。
それが足の筋肉の力と呼吸の力です。中でも最も血流に影響を与えるのがふくらはぎの筋肉の力です。
足は第2の心臓
「足は第2の心臓」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?主にふくらはぎの筋肉の事を指す言葉です。
深部静脈は筋肉の中を通る静脈なので、心臓に向かって流れていくためにはふくらはぎの筋肉の収縮力を必要とします。
ふくらはぎの筋肉が伸び縮みする際に深部静脈が筋肉によってプレスされます。
この圧力によって深部静脈内の血液が重力に打ち勝って心臓の方へと押し出されていくのです。
これを筋肉のポンプ作用と呼びます。
深部静脈血栓はなぜできるのか?
深部静脈に血栓ができるためには主に3つの条件が挙げられます深部静脈血栓症の発生条件
- 血流の停滞・・・寝たきり、長時間の座りっぱなしなど
- 静脈の損傷・・・ケガなど
- 血液が固まりやすい状態・・・脱水、がんや感染症などの病気
ふくらはぎの筋肉は心臓よりも大きく、血液を押し出す力も心臓以上に強いです。
そんな強力な「第2の心臓」ですが、欠点があります。
それは怠け者であるという点です。
心臓は24時間休むことなく働き続けていますが、「第2の心臓」ふくらはぎは自分の意志で動かさなければ止まったままなのです。
心臓は1日におよそ10万回拍動すると言われますが、第2の心臓は果たして何回動いているでしょうか?
1日に1万歩も歩けばかなり頑張ったと言えるのではないでしょうか?
しかし、それでも心臓の10万回に比べれば1/10に過ぎません。
コロナ渦で外出する頻度が減り、自宅で座って過ごす時間が増えたという方が増加傾向にあります。
在宅勤務ともなれば1日中自宅で座りっぱなしという事も珍しくないでしょう。
そうなりますと、足を動かす回数は1万歩には遠く及ばなくなるでしょう。
足を動かさなければ「第2の心臓」が止まったままなので、当然深部静脈の中では血液は止まったままです。
このような状況に水分不足などの条件が加わると、深部静脈内の血液が固まり、血栓となることがあるのです。
これが深部静脈血栓症の発生するメカニズムです。
深部静脈血栓症の分類
血栓が生じた場所によって2種類に分けられます。 中枢型:膝から腸骨まで 末梢型:膝から足首まで
血栓が最もできやすい場所はふくらはぎにあるヒラメ静脈ですので、末梢型の割合の方が多いです。
深部静脈血栓症の症状
深部静脈に血栓が生じると、深部静脈の血流がストップしてしまいます。そのため以下のような症状が現れます。
深部静脈血栓症の症状
- 急に片足が腫れる
- 足の痛み
- 足の色が暗赤色になる
深部静脈血栓症の何が問題なのか?
深部静脈血栓症は聞きなれない病名かも知れませんが、以前は「エコノミークラス症候群」と言われていました。飛行機のエコノミークラスに長時間座りっぱなしでいると、足を動かすことができません。
フライト中、乾燥した飛行機の中で水分を十分に摂取していないと、深部静脈に血栓を生じます。
飛行機が目的地に到着して歩き始めた途端、ふくらはぎの動きによって血流が再開します。
血流に乗って血栓が移動していき、肺動脈という血管に詰まります。
これを肺塞栓症と言います。
肺塞栓症の症状
- 突然の胸の痛み
- 呼吸が苦しくなる
- 血栓が大きい場合は心肺停止になることも
深部静脈血栓症の診断
深部静脈血栓症の診断は主に超音波検査(エコー検査)と血液検査で行います。深部静脈に血栓が生じた場合、ある程度の大きさであれば血栓を視覚的に確認することができます。
また、血液検査でDダイマーという物質を測定します。血栓の大きさによりDダイマーの数値が大きくなります。
深部静脈血栓症の治療
深部静脈血栓症の治療の基本は、血液をサラサラにして固まりにくくするお薬を使用します。これを抗凝固療法と言います。
抗凝固療法により血栓が大きくなることを防ぎ、また、血栓を溶かす効果が期待できます。
深部静脈血栓症の予防
深部静脈に血栓ができる3つの条件に対して予防策を取ることが大切です。深部静脈血栓症の予防方法
- 血流の停滞・・・長時間の座りっぱなしなどを避け、足を良く動かすこと。着圧ソックスの着用もお勧め。
- 静脈の損傷・・・ケガなどに注意
- 血液が固まりやすい状態・・・こまめな水分摂取
深部静脈血栓症に注意が必要な方
注意が必要な方
- 以前エコノミークラス症候群になったことがある
- 最近入院を伴う手術を受けた
- 肥満
- 妊婦さん
- 高齢者の方
- ピルを服用中の方