妊娠中の下肢静脈瘤を予防!弾性ストッキングの効果と選び方【医師解説】

下肢静脈瘤の予防方法

妊娠中の下肢静脈瘤を予防!弾性ストッキングの効果と選び方【医師解説】

本記事は下肢静脈瘤専門クリニック「目黒外科」院長 齋藤陽医師の監修でお届けします。

妊娠中の体にはさまざまな変化が起こります。その中でも見落とされがちなのが「足の静脈」にかかる負担です。この記事では、妊娠中に弾性ストッキング(医療用着圧ソックス)の着用をおすすめする理由と、その効果についてわかりやすく解説していきます。

弾性ストッキングとは?仕組みと効果

弾性ストッキングは医療用に設計された特殊なストッキングで、足首からふくらはぎにかけて段階的に圧力がかかる構造になっています。足の静脈やリンパ液の流れをサポートし、血液を心臓へ押し戻しやすくする効果があります。履いてみると、マッサージされているような心地よさを感じる方も多いです。

弾性ストッキングの構造説明

弾性ストッキングの構造説明

なぜ妊婦さんに弾性ストッキングが必要なのか

妊娠中に起こる3つの静脈変化

  1. 血液の量が約1.5倍に増加
    赤ちゃんに酸素や栄養を送るため、母体の血液量が1.3~1.5倍になります。特に重力の影響を受けやすい足の静脈には大きな負担がかかります。
  2. ホルモンの影響で静脈が拡張しやすくなる
    エストロゲンやプロゲステロンが血管を広げる作用を持ち、静脈が膨らみやすくなります。
  3. 子宮の圧迫
    妊娠後期になると子宮が骨盤内の静脈を圧迫し、足の静脈に血液が滞りやすくなります。

こうして起きる「下肢静脈瘤」

静脈が引き延ばされて弁が閉じなくなり、血液が逆流・滞留して下肢静脈瘤を引き起こします。妊娠経験者の約2人に1人が下肢静脈瘤を発症すると言われています。

正常な静脈と下肢静脈瘤の違い

正常な静脈と下肢静脈瘤の違い

妊娠中に現れる下肢静脈瘤の症状と進行

  • 足のむくみやだるさ
  • こむら返り
  • 皮膚のかゆみ・色素沈着
  • 進行すると潰瘍を伴うことも

妊娠回数が増えるほどリスクも高まるため、予防はとても重要です。

弾性ストッキングでできる予防とサポート

ふくらはぎのポンプ作用を補助

ふくらはぎは「第二の心臓」とも呼ばれ、筋肉が血液を上に押し上げるポンプのような役割を果たします。弾性ストッキングはこの働きを補助し、血液循環を助けます。

ふくらはぎのポンプ作用の図

ふくらはぎの筋ポンプ作用

静脈の広がりを防ぐ

皮膚の外側から圧力をかけ、静脈が血液で膨らみすぎないよう抑制。下肢静脈瘤の予防につながります。

弾性ストッキングの種類と選び方

主なタイプ

  • ハイソックスタイプ(ふくらはぎまで)
  • ストッキングタイプ(太ももまで)

マタニティ用もありますが、価格や着脱のしやすさを考慮して無理なく選びましょう。

ハイソックスタイプの着用例

ハイソックスタイプの着用例

ストッキングタイプの着用例1

ストッキングタイプの着用例

パンストタイプの着用例

パンストタイプの着用例

 

おすすめは「ハイソックスタイプ」

  • ふくらはぎの圧迫が一番大切
  • 履きやすく、毎日続けやすい
  • 価格も比較的リーズナブル

まとめ|妊娠中の足を優しく守るために

妊娠中は体に大きな変化が起き、静脈にかかる負担も増加します。弾性ストッキングは、そんな妊婦さんの足を優しく守ってくれる心強いアイテムです。無理なくできることから始めて、下肢静脈瘤を予防しましょう。

よくある質問(FAQ)

Q:妊娠中はいつから弾性ストッキングを履いたほうがいい?
A:妊娠が確認された時点で履き始めるのが理想ですが、むくみやだるさ、足の静脈が目立つようになったと感じた時点で履くようにしましょう。
Q:寝るときに履いても大丈夫?
A:起きている時は重力で足の静脈に血液が溜まりやすいので、弾性ストッキングは日中の使用が推奨されます。就寝時は心臓と足の高さが同じになるため足の静脈には血液は溜まりません。したがって、日中に比べて就寝時の弾性ストッキングの着用は効果が小さくなります。
Q:産後も使っていいの?
A:産後もむくみや静脈瘤の症状が残る場合は、継続して使用して構いません。

タイトルとURLをコピーしました