
下肢静脈瘤による皮膚潰瘍|圧迫療法とレーザー治療の併用で早期回復を目指す
下肢静脈瘤が悪化すると、皮膚の血流が滞りうっ滞性皮膚炎や皮膚潰瘍が生じることがあります。これらの症状に対しては、弾性包帯や弾性ストッキングによる圧迫療法が基本となりますが、静脈弁の逆流がある場合は、圧迫療法だけでは治癒に限界があります。そのため、専門医による早期のレーザー治療を併用することで、潰瘍の治癒を促進することが可能です。圧迫療法の役割と限界
圧迫療法は、皮膚潰瘍治療の第一選択肢として重要です。弾性包帯や医療用の弾性ストッキングを使用することで、ふくらはぎの筋ポンプ作用を補助し、下肢の血流を改善します。- メリット: 静脈のうっ滞を軽減し、皮膚炎や潰瘍の悪化を防ぐ
- 限界: 弁不全が原因の逆流がある場合は、圧迫療法のみでは不十分
切らずに治す:レーザーカテーテルによる血管内焼灼術
レーザーカテーテル治療は、皮膚切開を必要とせず、伏在静脈の逆流を根本から治療できる方法です。さらに、ボコボコと浮き出た側枝静脈瘤も内側から焼灼することが可能で、皮膚の弱い患者さんにも適した治療です。
他の治療法との比較
高周波カテーテルやグルー治療も伏在静脈の逆流には有効ですが、側枝静脈瘤の治療には向いておらず、切開による摘除が必要な場合があります。一方で、レーザーカテーテルは、側枝も含めた広範囲の治療が切らずに可能です。
なぜ皮膚を切らない治療が重要なのか
うっ滞性皮膚炎を伴う患者さんでは、皮膚の血流が悪く、切開を伴う手術後に創傷治癒が遅れたり、感染や開放創になるリスクが高まります。切らない治療=皮膚への負担を減らし、治癒を早めるという視点が非常に重要です。
圧迫療法+レーザー治療の併用がカギ
下肢静脈瘤による皮膚潰瘍は、圧迫療法で血液のうっ滞を改善させながら、レーザー治療で逆流を根本から治療することで、より早く、安全に回復が期待できます。実際の症例と患者さまの声
当院では、皮膚潰瘍を有する50代男性が、まず圧迫療法で炎症を鎮静化し、その後レーザー治療により約4週間で潰瘍が閉鎖したケースもあります。「皮膚を切らずに治療できたことで、怖さがなく前向きに取り組めた」とのお声もいただいています。
よくある質問(FAQ)
Q. 皮膚潰瘍がある状態でもレーザー治療は可能ですか?
A. はい。状態によりますが、皮膚を切らない治療であれば創傷の悪化リスクを最小限に抑えることができます。Q. 弾性ストッキングだけではダメですか?
A. 弾性ストッキングは重要な治療手段ですが、根本にある静脈の逆流が強い場合、単独では治癒が遅れることがあります。まとめ|治療選択でQOLは大きく変わる
漫然と圧迫療法のみを続けるのではなく、逆流を伴う下肢静脈瘤には早期のレーザー治療を取り入れることが、生活の質(QOL)の向上にもつながります。皮膚の弱い方、潰瘍を繰り返す方は、切らない最新治療を検討されることをおすすめします。
【監修】 目黒外科 院長 齋藤陽(下肢静脈瘤専門医)
1997年より下肢静脈瘤治療を専門とし、これまでに8600例以上の手術に携わる。