【医師監修】下肢静脈瘤があっても安心!マラソン・登山を安全に続けるための専門対策ガイド

【医師監修】マラソン・登山中に足がつる?下肢静脈瘤との関係と予防対策

マラソンや登山といった持久力を要するスポーツは、長時間にわたり足腰に負担がかかるため、特に下肢の血流に問題を抱えている方にとっては注意が必要です。
下肢静脈瘤をお持ちの方は、走行中や登坂中に「ふくらはぎの重だるさ」や「夕方以降のむくみ」、「足がつる(こむら返り)」、「疲労が抜けにくい」といった症状が目立ちやすく、パフォーマンスの低下につながることもあります。

しかし、適切なケアや準備、必要に応じた医療的アプローチを取り入れることで、これらの症状を最小限に抑えつつ、快適にマラソンや登山などのスポーツを継続することは十分可能です。症状を自己判断で放置せず、身体のサインに耳を傾けることが長く趣味を楽しむための第一歩となります。

下肢静脈瘤がスポーツ中に与える影響

  1. 血流障害による疲労蓄積
     下肢静脈瘤では静脈内の弁機能が低下しているため、血液が下半身に滞留しやすくなります。その結果、筋肉に十分な酸素や栄養が行き届かず、長時間のランニングや登山中に筋肉疲労が蓄積しやすくなるのが特徴です。これにより「重だるさ」「張り感」が強くなり、パフォーマンスの低下を招きやすくなります。

  2. 筋肉のけいれん(こむら返り)
     運動によって発生する代謝産物(乳酸など)が静脈内に滞りやすく、筋肉内の電解質バランスも崩れやすくなります。この状態が続くと、筋繊維が過敏に反応して収縮し、突然のけいれん(こむら返り)が生じることがあります。特に寒冷下や水分不足の状態ではリスクがさらに高まります。

スポーツを続けるための対策

1. 弾性ストッキングの活用

  • 素材とサイズ選び
     弾性ストッキング(着圧ソックス)は、医療用で通気性・伸縮性に優れた素材のものを選ぶことが大切です。足首・ふくらはぎ・太ももなどの周径を正確に測定し、自分の脚に合った圧迫圧(クラス)を選択することが、効果的な血流サポートにつながります。サイズが合っていないと効果が薄れたり、逆に圧迫による不快感や皮膚トラブルの原因になることもあります。

  • 着用タイミング
     弾性ストッキングは、マラソンや登山の直前に着用することで、運動中の血流サポートとむくみ予防に効果的です。さらに、運動後に着用することで疲労物質の除去が促進され、筋肉の回復をサポートします。移動時の長時間座位(車や電車)にも有効です。

2. 医療的治療の検討

進行した下肢静脈瘤の症状には、身体への負担が少ない「レーザー治療」や「グルー治療」などの切らない治療法が選択可能です。
これらは皮膚を切開せず、局所麻酔下で日帰りで行えるため、術後の回復が非常に早いのが特長です。ほとんどの方が翌日から軽い運動や仕事への復帰が可能であり、マラソンや登山といった趣味への復帰も従来よりスムーズに行えるケースが多いです。
その結果、症状による制限から解放され、生活の質(QOL)を大きく向上させることが期待されます

3. 日常のセルフケア

  • ストレッチ&筋力トレーニング
    ふくらはぎを使った「ポンプ運動(かかとの上げ下げ運動)」や足首回し、軽いスクワットなどのストレッチ・筋トレは、下肢の血流を改善し、静脈のうっ滞を防ぐのに役立ちます。日常的に行うことで筋持久力も向上し、登山やランニング時の疲労軽減にもつながります。

  • こまめな水分補給とミネラル摂取
    運動中や前後には水やスポーツドリンクなどで水分をしっかり補給しましょう。あわせて、カリウムやマグネシウムを多く含むバナナ、アボカド、ナッツ類、ほうれん草などの摂取を心がけると、筋肉のけいれん(こむら返り)予防にも効果的です。

  • 休息と良質な睡眠
    静脈瘤と上手に付き合うためには、日々の疲労を翌日に持ち越さないことが重要です。オフ日を意識的に設け、最低7時間程度の深い睡眠を確保することで、筋肉や血管の回復を促進し、パフォーマンスの維持・向上につながります。

まとめ

下肢静脈瘤がある方でも、適切なケアや医療的な対応を行うことで、マラソンや登山といった持久系のスポーツを無理なく長く楽しむことが可能です。特に、弾性ストッキングの着用や運動後のセルフケア、必要に応じた専門的な治療を組み合わせることで、足のだるさやこむら返りといった症状を軽減し、アクティビティの質を向上させることができます。
静脈瘤の症状が見られる場合は、我慢せずに早めに血管外科専門医へご相談ください。
体への負担を最小限に抑えた治療法も多数ありますので、ご自身のライフスタイルに合わせた最適な対策を一緒に考えていきましょう。

目黒外科バナー

🔗 関連記事