飲食業で働く男性のための下肢静脈瘤予防と治療ガイド|立ち仕事の負担を軽減する方法とは?
監修:下肢静脈瘤専門クリニック「目黒外科」院長 齋藤 陽 医師
飲食店勤務の方にとって、長時間の立ち仕事は避けられない日常ですが、足の健康を脅かすのが「下肢静脈瘤」です。進行すると皮膚の炎症や潰瘍を招くこともあるこの病気について、職場でできる予防法や早期発見のポイント、最新の治療法まで詳しく解説します。
下肢静脈瘤とは?
下肢静脈瘤とは、足の表面にある静脈が膨らみ、蛇行する病気です。主な原因は静脈内の逆流防止弁が壊れ、血液が逆流してしまうこと。ふくらはぎの筋肉ポンプが十分に働かない状態が続くと、血液が滞留し、静脈が拡張して瘤状になります。
飲食業におけるリスクと実態
飲食業では調理・配膳などで1日中立ちっぱなしというケースが多く、静脈の負担が大きくなります。足のだるさ、こむら返り、皮膚のむず痒さといった初期症状を見逃しやすく、放置することで進行する傾向があります。

重症化する前に対策を
下肢静脈瘤は放置すると「うっ滞性皮膚炎」「皮膚潰瘍」へと悪化します。特に男性は見た目を気にしないため受診が遅れる傾向があり、仕事に支障をきたす前に行動することが重要です。

職場でできる対策
- 足をこまめに動かす: つま先立ちや足首回しなど、5分程度の運動で筋ポンプを刺激し血流改善に繋がります。
- 弾性ストッキングの着用: 朝の出勤時から着用することで、ふくらはぎに適切な圧をかけ、静脈の逆流を抑えます。
- 休憩時に脚を上げる: 数分でも脚を心臓より高く上げて休憩をとることで、足に滞った血液が戻りやすくなります。
- 靴とインソールの見直し: クッション性のある靴や、衝撃を和らげるインソールの使用も効果的です。
治療法と復職の目安
目黒外科では「切らない」「縫わない」「痛くない」日帰り手術を実施。多くの飲食業の方が、手術翌日から復職されています。
- レーザー治療: カテーテルを用い、静脈を内側から焼灼して閉塞させる治療法。局所麻酔+静脈麻酔でリラックスした状態で施術が可能です。
- グルー治療: 医療用の瞬間接着剤を使って静脈を閉じる新しい治療法。麻酔量が少なく、術後の内出血もほとんどありません。
- 硬化療法: 小さな静脈瘤には硬化剤を注入して治療。美容目的でも支持されています。
実際の患者さんの声
飲食店で10年以上働き続けた結果、両脚の血管が浮き出るようになり、痛みや重だるさがひどくなって受診。目黒外科でのレーザー治療を受け、仕事復帰も早く驚くほど楽になりました。もっと早く相談すればよかったです。(40代男性・飲食業)
まとめ
忙しい飲食業の男性こそ、足のサインを見逃さず、早めのケアと専門医の受診が大切です。違和感を感じたら、まずはエコー検査だけでも受けてみてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 弾性ストッキングは夏でも着用すべきですか?
A. 夏場は「暑くて蒸れるから」といった理由で弾性ストッキングの着用を避ける方が多く見られますが、実は気温が高くなる季節こそ、弾性ストッキングの着用が特に重要です。というのも、暑さによって血管は拡張しやすくなり、下肢の静脈に血液が滞留しやすくなるためです。
弾性ストッキングは、足に適切な圧力をかけることで血液の逆流を抑え、静脈の拡張を防ぐ働きがあります。とくに立ち仕事や長時間の移動がある方にとっては、夏でもこまめに着用することで症状の悪化を予防できます。
Q2. 忙しくてなかなか休憩が取れません。どうすれば?
A.たとえわずかな時間でも、キッチン裏や休憩中に「つま先立ち」や「かかと上げ」といった簡単な動きを取り入れるだけで、ふくらはぎの筋ポンプが刺激され、血液の循環が促進されます。これにより、足の静脈に血液が滞留するのを防ぎ、下肢静脈瘤の予防につながります。たとえば1分間のつま先立ちを数回繰り返すだけでも、心臓への血液の戻りがスムーズになり、足のだるさやむくみを軽減できます。
特別な設備も時間も必要なく、業務の合間に立ったまま無理なくできるこの動作は、忙しい飲食店勤務の方々にとって最も取り入れやすいセルフケアの一つです。日々のちょっとした意識と継続が、将来の足の健康を大きく左右するのです。
Q3. 治療後にまた再発する可能性はありますか?
A.下肢静脈瘤に対して正確な診断と適切な治療が行われ、病変のある静脈がしっかりと閉塞されれば、その同じ血管が再び再発する可能性は非常に低いといえます。しかし、下肢には多数の静脈が存在しており、別の静脈に新たに逆流が起きることはゼロではありません。
特に、もともと静脈の弁の構造に弱さがある方や、立ち仕事・妊娠・加齢などのリスク因子を持つ方では、他の部位の静脈が将来的に悪化する可能性もあります。