下肢静脈瘤の手術方法
この記事では下肢静脈瘤の手術方法について解説していきます。現在日本国内で行われている下肢静脈瘤の主な治療方法です
- 下肢静脈瘤血管内焼灼術(レーザーカテーテルまたは高周波カテーテル)
- 下肢静脈瘤血管内塞栓術(グルー治療)
- 硬化療法
- ストリッピング
もし令和の時代に高結紮術を勧められた場合、その医師は下肢静脈瘤の治療方法についての知識が昭和の時代で止まっていて、アップデートされていません。気を付けましょう。
下肢静脈瘤血管内焼灼術
下肢静脈瘤の手術手術方法の中で、現在世界で最も行われているのは血管内焼灼術です。血管内焼灼術というのは、カテーテルという細い管を静脈の中に挿入して静脈を内側から焼いて閉塞させる治療です。
カテーテルには2種類あります。
- レーザーカテーテル
- 高周波カテーテル
レーザーカテーテルの場合、カテーテル先端の赤く光っている2か所の部分から1470nmレーザ光線(分かりやすく言うと赤外線です)が出ます。
このレーザー光線による熱で静脈を内側から焼きます。すると、静脈はたんぱく質でできていますので、加熱されると縮んで硬くなり、閉塞します。
レーザーカテーテルの場合、レーザー光線が出る部位が狭いので非常に小回りが利きます。
長い静脈から短い静脈まで、まっすぐな静脈もクネクネ曲がりくねった静脈も、あらゆる静脈の焼灼に対応する事ができます。
高周波カテーテルの場合は、カテーテル先端に巻かれた金属製のコイルが熱を発します。
電気コンロと同じ原理です
高周波カテーテルの先端から発せられる熱によって120℃で静脈を焼くようにできています。
高周波カテーテルの先端にあるコイルは長さが6.5㎝あるので、6.5㎝より短い距離の静脈を焼灼することはできません。
また、クネクネと曲がりくねった静脈を焼灼することもできません。
例えるならば、レーザーカテーテルは狭い路地でも曲がることができて小回りが利く軽自動車。高周波カテーテルは車体が長いトレーラーみたいなものです。
下肢静脈瘤は患者さん一人ひとりで形や大きさが異なります。
どのようなタイプの静脈瘤でも柔軟に対応できる点ではレーザーカテーテルの方が優れています。
レーザーカテーテル治療の実際の映像はこちらの動画をご覧ください。
血管内塞栓術(グルー治療)
下肢静脈瘤の手術方法として最新式の手術方法が血管内塞栓術です。グルー治療とも呼ばれます。血管内焼灼術は静脈を「焼く」ことによって閉塞させ、血液が逆流しないようにします。
これに対して血管内塞栓術は静脈を接着剤により「接着」することによって閉塞させ、血液が逆流しないようにします。
この治療法は、シアノアクリレートという接着剤(瞬間接着剤のアロンアルファと同じ)を用います。
シアノアクリレートを注射器に注入してピストル型の注入器にセットします。
細長いカテーテルを静脈の中に挿入し、シアノアクリレートを注入して静脈を接着して閉塞します。
DIYで使用するグルーガンと全く同じ要領です。
血管内焼灼術と血管内塞栓術の違い
血管内塞栓術は静脈を「焼く」ことで閉塞させますので、静脈の周囲に麻酔をしないと患者さんは「熱ちぃ!」と悲鳴をあげてしまいます。これに対して血管内塞栓術は静脈を「接着する」ことで閉塞させるので、静脈の周囲に麻酔をする必要がありません。ですから術後の痛みがほとんどないのがメリットです。
血管内塞栓術の詳しい情報はこちらの動画をご覧ください。
ストリッピング
ストリッピングはこれまでおよそ100年以上にわたって下肢静脈瘤手術のゴールドスタンダートでした。ストリッパーという特殊なワイヤーを用いて静脈を引き抜いてしまうのです。 長きにわたって下肢静脈瘤手術の方法として当たり前の手術方法でしたが、
- 皮膚を切開する
- 内出血
- 術後の痛み
現在では絶滅危惧種のような術式となってしまいました。ストリッピングの時代はほぼ終わったと言って良いでしょう。
しかし、医学は常に進歩を続けています。
患者さんにとっては、痛みがなくてちゃんと治る治療法というのが一番ではないでしょうか?
硬化療法
硬化療法は血管内焼灼術や血管内塞栓術など、カテーテルを用いる手術ができない小さな静脈瘤に対して行う治療法です。具体的にいうとクモの巣状静脈瘤や網目状静脈瘤といった、カテーテルよりも細い静脈瘤が対象となります。
硬化療法はポリドカスクレロールというお薬を泡状にして静脈瘤に注射をします。
これをフォーム硬化療法と言います。
硬化療法の動画を観るにはこちらをクリック
硬化療法に関する詳しい解説はこちらの動画をご覧ください。
まとめ
下肢静脈瘤の手術方法について解説しました。それぞれの治療法には長所と短所がありますので、それぞれの特性と患者さんの下肢静脈瘤の状態を考えて治療法を選択することが大切だと思います。