
20代にも増えている「下肢静脈瘤」|原因と予防を専門医が解説
「若いのに…?」下肢静脈瘤は中高年だけの病気ではありません
下肢静脈瘤と聞くと、中高年に多い疾患という印象を持つ方が多いかもしれません。しかし、実際には20代でも発症するケースが増えています。見た目に目立つボコボコの血管だけでなく、足のだるさやむくみといった初期症状が見逃されがちです。本記事では、20代で下肢静脈瘤が起こる原因や予防法、早期対応の重要性について詳しく解説します。下肢静脈瘤とは?
足の静脈内には、血液を重力に逆らって心臓へ戻すための「静脈弁」という逆流防止の仕組みがあります。これらの弁が加齢や生活習慣、遺伝などの影響で壊れると、血液が逆流して足の静脈内に溜まり、血管が徐々に拡張・変形して皮膚の表面に浮き出てきます。この状態が「下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)」です。
初期の段階では足のだるさ・むくみといった自覚症状のみの場合もありますが、進行すると血管のボコボコが目立つようになり、皮膚が変色したり、かゆみや湿疹(うっ滞性皮膚炎)を引き起こすこともあります。さらに放置すると、皮膚に潰瘍(かいよう)ができたり、静脈内に血栓ができて炎症を起こす「血栓性静脈炎」に発展するなど、日常生活に支障をきたす深刻な合併症へ進行するリスクもあります。



リスク因子 | 具体例 | チェック |
---|---|---|
遺伝的要因 | 両親のどちらか、または両方が下肢静脈瘤 | ✅ / ❌ |
立ちっぱなしの仕事 | 美容師、販売員、調理師など | ✅ / ❌ |
座りっぱなしの仕事 | オフィス勤務、プログラマー、コールセンターなど | ✅ / ❌ |
ホルモンの影響 | 妊娠中、低用量ピルを服用している | ✅ / ❌ |
むくみやだるさの自覚 | 夕方になると足が重い・だるい | ✅ / ❌ |
※✅が2つ以上ある方は、静脈瘤リスクが高めです。早めの受診がおすすめです。
なぜ20代で下肢静脈瘤が増えているのか?
遺伝的要因
下肢静脈瘤には遺伝的な側面が強く関与していることが知られています。両親ともに下肢静脈瘤を発症している場合、その子どもが発症する確率は最大で90%にも達するといわれています。片親のみでも、母親が発症している場合は特に女児への遺伝率が高く(62%)、生活習慣に関係なく若いうちから静脈の弁機能が弱くなる可能性があります。家族に静脈瘤の既往がある方は、自覚症状がなくても定期的にチェックすることが大切です。
長時間の立ち仕事・座り仕事
脚の静脈は、ふくらはぎの筋肉が収縮する「筋ポンプ作用」によって血液を心臓に押し戻しています。しかし、美容師、調理師、販売員のように長時間立ちっぱなしの職業や、デスクワーク・ITエンジニアなどの座りっぱなしの仕事では、この筋肉ポンプが十分に働かず、血液が足に滞留しやすくなります。20代でもこのような勤務スタイルが続くことで、静脈に過剰な圧がかかり、弁の機能が徐々に損なわれていくのです。
女性ホルモンの影響
女性は生理周期や妊娠、更年期など、ライフステージに応じてホルモンバランスが大きく変化します。特に妊娠中は、黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が増えることで血管が拡張しやすくなり、静脈の壁が弱くなる傾向があります。また、子宮が大きくなると骨盤内の静脈が圧迫され、下肢への血流が悪化し、静脈瘤が発症・悪化しやすい状態に。さらに、低用量ピルの使用も血栓傾向や静脈圧の変化を引き起こす場合があり、体質によっては注意が必要です。
若い世代がとるべき予防法
■ 適度な運動
ウォーキングや軽いランニング、ストレッチといった継続的な足の運動は、ふくらはぎの筋肉を収縮させ、静脈血を心臓へ押し戻す「筋ポンプ作用」を活性化させます。特にふくらはぎは「第二の心臓」とも呼ばれ、血流改善には不可欠な部位です。運動は毎日でなくても構いませんが、週に3回以上、20分程度のウォーキングを目安に習慣づけると効果的です。
■ 姿勢とこまめな動き
長時間同じ姿勢で立ったり座ったりしていると、血液が足に溜まりやすくなり、静脈に負担がかかります。理想的には1時間に1回は立ち上がり、2〜3分間の軽い動作やストレッチを取り入れるようにしましょう。オフィスワークの方は、トイレや給湯室への移動時につま先立ちや足首回しを取り入れるだけでも、血流改善に役立ちます。
■ 弾性ストッキングの活用
医療用の弾性ストッキング(着圧ソックス)は、足首から太ももにかけて段階的に圧力をかける構造になっており、血液が重力に逆らって心臓に戻るのをサポートします。これにより静脈のうっ滞が抑えられ、下肢静脈瘤の予防や症状の進行防止に効果があります。特に、長時間の立ち仕事・座り仕事・旅行時の移動中など、血流が悪くなりやすいシーンでは積極的に活用しましょう。使用時は医師の指導のもと、適切なサイズと圧力を選ぶことが大切です。
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20代のうちに症状に気付くことが重要
足のだるさやむくみが続く場合、「疲れのせいかな」と見過ごしてしまいがちですが、これは下肢静脈瘤の初期サインであることも少なくありません。とくに夕方以降に症状が強くなる場合は、静脈の血流が滞っている可能性があります。こうした症状が日常的に続く場合には、自己判断で様子を見るのではなく、血管外科や下肢静脈瘤に詳しい専門医による超音波検査を受けることが大切です。
静脈瘤は早期の段階であれば、弾性ストッキングによる保存療法や、日帰りで可能なレーザー治療・高周波治療など、身体への負担が少ない方法で対処できます。進行してからでは、色素沈着や皮膚炎、潰瘍などが残りやすく、見た目や生活への影響も大きくなります。
そのため、違和感を感じた時点で早めに受診し、将来的な悪化を防ぐことが、健康的な生活を保つ鍵となります。
よくあるご質問(FAQ)
Q. 20代で下肢静脈瘤になるのは珍しいことですか?
A. いいえ、決して珍しいことではありません。遺伝や長時間の立ち仕事・座り仕事、妊娠などが原因で、20代でも発症する方が増えています。初期症状は「だるさ」や「むくみ」など目立ちにくいため、気づかずに放置してしまうケースも多く見られます。
Q. 下肢静脈瘤の検査や治療は痛みがありますか?
A. 目黒外科では「切らない・縫わない・痛くない」日帰り手術を行っており、多くの方が局所麻酔での施術に対応可能です。検査は超音波(エコー)による非侵襲的な方法なので、痛みを感じることはほとんどありません。
Q. 仕事や学校があるのですが、治療後すぐに日常生活に戻れますか?
A. はい、ほとんどの患者様が手術当日にご帰宅され、翌日から通常の生活に戻られています。デスクワークや軽い歩行は当日から可能で、ダウンタイムは最小限です。ただし、激しい運動や長時間の入浴は数日間控えていただく場合があります。
目黒外科での若年層向け治療
目黒外科では、「切らない・縫わない・痛くない」をコンセプトに、下肢静脈瘤に対する最新の日帰り手術(血管内治療)を提供しています。レーザーや高周波を用いた低侵襲治療により、傷跡がほとんど残らず、麻酔も局所麻酔のみ。術後すぐに歩いて帰宅できるため、忙しい社会人や学生の方でも治療を受けやすい環境が整っています。
特に20代など若い世代では、「仕事に穴をあけたくない」「治療が怖い」といった不安の声もありますが、当院ではカウンセリングからアフターケアまで、専門医が一貫して丁寧に対応いたします。
足のむくみや違和感、血管の浮き出しが気になる方は、「ただの疲れ」と見過ごさず、お気軽にご相談ください。早めの対応が、将来の重症化を防ぐ第一歩です。
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【監修】 目黒外科 院長 齋藤陽(下肢静脈瘤専門医)
28年以上にわたる治療実績と豊富な手術経験をもとに、若年層の患者にも対応しています。