高齢者の下肢静脈瘤手術は安全?|年齢に応じた治療法を専門医が解説

目黒外科について

高齢者の下肢静脈瘤手術は可能?年齢による制限と治療の最新事情を専門医が詳しく解説

この記事は、下肢静脈瘤専門クリニック「目黒外科」院長 齋藤陽 医師が監修しています。

下肢静脈瘤とは?

下肢静脈瘤とは、足の表面近くにある静脈(表在静脈)が膨らみ、ボコボコと浮き出て見える状態を指します。主な原因は、長時間の立ち仕事や加齢、女性ホルモンの影響、遺伝などにより、静脈内の血液の逆流を防ぐ「弁」が壊れてしまうことにあります。血液が心臓に戻りにくくなり、重力の影響で足にたまることで、静脈が徐々に拡張し、瘤(こぶ)のように変形していきます。

下肢静脈瘤の画像

見た目の問題だけでなく、「足がだるい」「夕方になるとむくむ」「夜間にこむら返りが起こる」など、日常生活に支障をきたす症状が現れるのが特徴です。さらに進行すると、皮膚に色素沈着が起こり、うっ滞性皮膚炎皮膚潰瘍といった重い合併症を引き起こすこともあります。そのため、単なる見た目の問題と軽く考えず、症状が軽いうちから専門医による適切な診断と治療を受けることが大切です。

下肢静脈瘤が重症化するとうっ滞性皮膚炎のリスクがあります

年齢で手術は制限されるのか?

「下肢静脈瘤の手術は何歳まで受けられるのか?」という質問は、高齢の患者さんやそのご家族から非常によく寄せられます。しかし、実際には「年齢そのもの」が手術の可否を決める絶対的な基準ではありません。医学的に重要なのは、「歩行が可能かどうか」「全身状態が安定しているか」といった体力面や生活機能の評価です。

たとえば、80代やそれ以上の患者さんでも、普段通りに歩行ができ、持病がしっかりと管理されていれば、年齢にかかわらず手術を安全に行うことが可能です。実際、当院でもご高齢の方の手術実績は多数あり、多くの方が無事に日帰りで治療を終え、数日後には普段の生活に戻られています。

反対に、寝たきりの状態であったり、車いす生活が続いている場合は、手術による改善効果が乏しくなるため、適応外となります。大切なのは、年齢ではなく「その人の状態に合った治療を選ぶ」ことです。下肢静脈瘤が進行する前に、まずは専門医に相談して、最適な選択肢を一緒に見つけていきましょう。

下肢静脈瘤の手術適応となる3つのケース

1. うっ滞性皮膚炎がある場合

うっ滞性皮膚炎とは、下肢静脈瘤による慢性的な血流のうっ滞(よどみ)によって、皮膚に炎症やかゆみ、赤みが現れる状態です。進行すると色素沈着(皮膚が黒ずむ)や硬化(皮膚がゴワゴワと硬くなる)を引き起こし、さらに悪化すると皮膚潰瘍(皮膚が破れてジクジクした傷になる)へと進展することもあります。

皮膚潰瘍は一度できると自然には治りにくく、長期間の治療が必要になるほか、傷口から細菌感染を起こすリスクも高くなります。特に高齢者や糖尿病のある方は感染症が重篤化しやすいため注意が必要です。

このような合併症を防ぐためには、静脈瘤の原因そのものを早期に治療することが最も効果的です。弾性ストッキングや塗り薬では根本的な改善は難しいため、状態に応じて血管を閉塞させるレーザー治療グルー治療などの外科的アプローチが推奨されます。皮膚の変化に気づいたら、早めに専門医の診察を受けることが大切です。

2. 痛みやこむら返りなどのつらい症状がある場合

足の痛みや夜間のこむら返りが頻繁に起こるようになると、睡眠が妨げられ、日常生活に大きな支障をきたします。これらの症状は、静脈内の血液がうまく流れずにたまってしまうことで、筋肉や神経に負担がかかることが原因です。特に、「夕方になると足が重だるくなる」「長時間立っていられない」「就寝中に足がつって目が覚める」といった症状が続く方は、下肢静脈瘤が進行している可能性があります。

このようなケースでは、静脈の逆流を止めるための手術(レーザー治療やグルー治療)を行うことで、症状が大幅に改善する可能性があります。実際に治療を受けた多くの方からは、「足のだるさが消えた」「夜ぐっすり眠れるようになった」「歩くのが楽になった」などの声が寄せられています。

慢性的な不快症状を我慢し続けるよりも、身体に負担の少ない日帰り手術を受けることで、生活の質(QOL)を早期に取り戻すことが期待できます

3. 見た目を改善したい場合

見た目の改善を目的に治療を希望される方も非常に多くいらっしゃいます。下肢静脈瘤は皮膚表面に血管が浮き出たり、網目状やクモの巣状の血管が目立ったりするため、特に足を出す服装に抵抗を感じるようになった女性患者さんからのご相談がよくあります。

「スカートが履けない」「人の目が気になって温泉やプールに行けない」「夏でも足を隠す服ばかり選んでしまう」など、外見へのコンプレックスが日常生活や気分に影響していることも少なくありません。

こうした心理的なストレスを和らげ、自分に自信を取り戻すために、審美的な目的での治療を選ばれる方も多く、当院でも積極的に対応しています。見た目の悩みは決して軽視すべきではなく、QOL(生活の質)の一部として尊重されるべきものです。治療により外見だけでなく、心の負担も軽くなったという患者さんの声は数多く寄せられています。

高齢者でも手術は可能です

歩行が可能で重篤な基礎疾患がなければ、90代の患者さんでも手術は安全に実施可能です。実際、目黒外科では90歳以上の方の手術実績も豊富にあります。逆に、車いすや寝たきりの方には手術を行うことはできません。

  • 局所麻酔や静脈麻酔で体への負担が少ない
  • 入院不要の日帰り手術
  • 手術後すぐに歩行・帰宅が可能

高齢者手術の実例

92歳の女性患者様が、日帰りで静脈瘤のレーザー治療を受けられ、翌日には普段通りの生活に戻られました。症状が改善することで、生活の質(QOL)が大きく向上します。

手術を検討する際の3つのポイント

1. 専門医と相談

下肢静脈瘤の治療を検討する際には、年齢だけでなく、これまでの病歴(既往歴)や現在の体力、全身の健康状態を総合的に評価することが大切です。たとえば、心臓病や呼吸器疾患、糖尿病などの慢性疾患をお持ちの方では、術前の注意点や麻酔方法を慎重に選ぶ必要があります。また、日常生活でどの程度の活動ができているか(歩行状態、自立度など)も、治療方針を決めるうえでの重要な判断材料になります。

そのため、まずは専門医と相談し、自分の身体の状態に適した治療法を一緒に見つけていくことが非常に重要です。治療に不安がある方も、一人で悩まず医師としっかり話し合いながら進めることで、より安心して治療に臨むことができます。

2. 家族のサポート体制

下肢静脈瘤の手術は基本的に日帰りで行われますが、高齢の方や遠方からお越しの方にとっては、当日の移動や術後の体調が不安になることもあるかもしれません。そのため、ご家族やご友人による送迎があると非常に安心です。特に術後は、歩行には問題がなくても軽いふらつきや疲労感を感じる方もいらっしゃいます。

また、ご自宅に戻られた後も、数時間程度は近くで見守ってくれる人がいるとさらに安全です。例えば、弾性ストッキングの着脱がスムーズにできているか、食事や水分が取れているかなど、ちょっとしたサポートがあるだけで、ご本人も安心してリラックスできます。

当院では、術前の説明の段階から、ご家族の同席を歓迎しており、不安や疑問にも丁寧にお答えしています。手術の成功だけでなく、患者さんの「手術を受けてよかった」と思える体験のために、周囲のサポートもとても大切な要素の一つです。

3. 経験豊富な専門医を選ぶ

下肢静脈瘤の治療は、診断や治療法の選択肢が多岐にわたるため、豊富な経験と実績をもつ専門クリニックで診断を受けることがとても重要です。たとえば、同じような見た目の静脈瘤でも、実際には原因となっている血管の種類や逆流の範囲が異なることがあり、正確なエコー診断と適切な判断が治療成績を大きく左右します。

実績のある医療機関では、豊富な症例に基づく判断力と、レーザー治療やグルー治療といった複数の治療法から患者さんに最も合った方法を選べる体制が整っています。また、術後の経過管理や再発防止の対応まで一貫して行えるフォロー体制がある点も信頼の証です。

治療に失敗しないためには、「どこで・誰に診てもらうか」が非常に重要なポイントです。まずは信頼できる専門クリニックを選び、納得できる説明と治療提案を受けることから始めましょう。

まとめ

年齢は手術の障壁ではありません。歩行可能で重篤な基礎疾患がなければ、高齢でも安全に手術を受けることができます。下肢静脈瘤によるつらい足の症状や皮膚トラブルでお悩みの方は、早めに専門医へ相談しましょう。

目黒外科では、切らない・縫わない・日帰り可能な最新治療を提供しています。年齢に関係なく、安心してご相談ください。

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高齢者でも受けられる下肢静脈瘤手術の説明イラスト

よくある質問(FAQ)

Q1. 高齢でも下肢静脈瘤の手術は本当に安全ですか?
A. はい、局所麻酔と日帰り手術によって高齢者への負担は大幅に軽減されています。90代の患者様も手術を受けて回復されています。
Q2. 入院は必要ですか?
A. 基本的に不要です。当院では日帰り手術が一般的で、術後すぐにご自宅へお帰りいただけます。
Q3. どのタイミングで手術を検討すべきですか?
A. むくみや痛み、皮膚の変色、こむら返りなどの症状が現れたら早めに専門医の診断を受けてください。
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