【専門医が解説】夜中や明け方に足がつる原因とは?下肢静脈瘤との関係を徹底解説

下肢静脈瘤とは

 

【医師監修】足がつる原因は下肢静脈瘤かも?こむら返りとの関係と対策を解説

監修:下肢静脈瘤専門クリニック 目黒外科 院長 齋藤陽 医師

突然ふくらはぎが激しくつる、寝ている間に脚がけいれんする…そんな「こむら返り」を経験したことがある方も多いのではないでしょうか。実はこの痛み、単なる筋肉疲労やミネラル不足だけでなく、下肢静脈瘤が隠れた原因となっていることがあります。

こむら返りに悩む患者さんのイラスト

寝ている時に足がつって目が覚めてしまう患者さん

下肢静脈瘤とは?

下肢静脈瘤とは、足の静脈にある弁が壊れ、血液が逆流して溜まってしまうことで、血管がボコボコと浮き出たり、膨らんだりする病気です。血液のうっ滞によって、足のむくみや重だるさを引き起こすだけでなく、こむら返りなどの筋肉の不快な症状をもたらすことがあります。

下肢静脈瘤による浮き出た静脈の写真

下肢静脈瘤

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下肢静脈瘤とこむら返りの関係

1. 血液循環の悪化

下肢静脈瘤があると、足の静脈に備わっている弁の機能が低下し、血液が重力に逆らえず逆流・滞留しやすくなります。その結果、足の静脈内に血液が溜まりやすくなり、筋肉に必要な酸素や栄養素の供給が不十分になります。
特にふくらはぎの筋肉(腓腹筋やヒラメ筋)は、立っている間や歩行時にポンプの役割を果たしており、血流に大きく関与しています。この「筋ポンプ作用」がうまく働かないと、血液がうっ滞し、筋肉の代謝が低下していきます。

2. 代謝産物の蓄積

静脈血のうっ滞により、筋肉内で生じた乳酸などの老廃物が排出されにくくなります。こうした代謝産物の蓄積は神経を刺激し、筋けいれんの引き金となる可能性があります。
このような状態では筋肉細胞の興奮性が高まっており、就寝中の夜間や明け方に体を伸ばす動きをすると筋肉が不意に収縮してけいれん(こむら返り)を起こしやすくなるのです。

こむら返りの予防と対処法

1. 適度な運動習慣

ウォーキングや軽い屈伸運動、かかと上げ運動といった足首を動かす習慣は、ふくらはぎの「第二の心臓」とも呼ばれる筋ポンプ作用を活性化させるうえで非常に効果的です。ふくらはぎの筋肉が収縮することで、足に滞った静脈血が心臓に押し戻されやすくなり、血流の循環が改善されます。これにより、足のむくみや血液のうっ滞が軽減され、こむら返りの予防にもつながります。

さらに、日常的に下肢を動かすことで筋肉や腱の柔軟性が保たれ、過度な緊張や収縮を防ぎやすくなります。特にデスクワークや立ち仕事の合間に、足首の曲げ伸ばしやその場足踏みを行うことで、筋ポンプを活かしつつ静脈瘤の悪化や筋けいれんの発生リスクを抑えることができます。

2. 圧迫療法(弾性ストッキングの着用)

医療用弾性ストッキングは、足首から上に向かって段階的に圧力をかける設計になっており、下肢に滞りがちな静脈血を効率よく心臓に戻す手助けをします。日中に着用することで、特に重力の影響を受けやすい立位・座位の姿勢でも血流をサポートし、足のむくみやだるさ、こむら返りの原因となる血液のうっ滞を軽減する効果が期待されます。

立ち仕事やデスクワークなど、長時間同じ姿勢を取りやすい職種の方には特に有効で、日常生活の中で無意識のうちに進行する下肢静脈瘤の予防にもつながります。朝起きてすぐ、まだ足がむくんでいないタイミングで着用するのが理想で、サイズや圧迫力は症状に応じて選ぶ必要があります。

初めて使用する場合は、医療機関でのサイズ測定や装着指導を受けると、より安全で快適に使用することができます。

弾性ストッキング(画像提供:グンゼ株式会社)

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3. 水分とミネラルの補給

脱水や電解質(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなど)の不足は、筋肉の正常な収縮と弛緩のバランスを乱し、こむら返りを引き起こす代表的な要因のひとつです。体内の水分が不足すると、血液の粘性が高まり血流が滞るだけでなく、筋肉細胞内外の電解質濃度が乱れ、筋肉が異常に興奮しやすくなるため、けいれんが起こりやすくなります。

特に、就寝中は汗をかいていても気づかずに脱水傾向になりがちであり、また運動後は大量の汗によって水分とミネラルが急速に失われるため注意が必要です。

そのため、就寝前には常温の水や麦茶をコップ1杯飲む、運動後はスポーツドリンクや経口補水液でナトリウムとカリウムを補う、日頃から野菜や果物、海藻類などミネラルを多く含む食品を意識的に摂取するといった工夫が有効です。

放置すると慢性化する可能性も

「一時的な足のつりだろう」と見過ごしてしまいがちなこむら返りですが、繰り返し起こるようになると、やがて夜間の睡眠を妨げ、深い眠りに入れず日中の疲労感や集中力の低下を引き起こす原因になります。特に夜中に目が覚めるほどの強い筋けいれんが続く場合は、単なる水分不足や疲労ではなく、下肢の血流障害が背景にある可能性を疑うべきです。

40代以降では、加齢による血管弁の劣化や筋肉量の低下、生活習慣の変化などが重なり、下肢静脈瘤のリスクが高まります。目に見える血管の浮き出しがない場合でも、静脈の内側では血液の逆流やうっ滞が進行していることがあり、これがこむら返りの一因となっているケースも少なくありません。

足つりが頻繁に起きる方は、「年齢のせい」と思い込まず、一度血管専門医の診察を受けることで、見えない疾患の早期発見・早期治療につながります。

動画で学ぶ:医師が解説するこむら返りと下肢静脈瘤

以下の動画では、こむら返りの原因とその対処法について、目黒外科の医師がわかりやすく解説しています。ぜひご覧ください。

まとめ

就寝中や明け方に起こるこむら返りは、下肢静脈瘤による血流障害が原因で起こることがあります。適度な運動、弾性ストッキングの着用、水分・ミネラルの補給といった対策で症状の改善が期待できますが、根本的な原因の診断と治療のためには医療機関の受診が重要です。

「こむら返りが頻繁に起こる」「ふくらはぎに血管の浮き出しがある」など、少しでも気になることがあれば、下肢静脈瘤の専門医にご相談ください。

目黒外科では、超音波検査によって下肢静脈瘤の有無を正確に診断し、症状に応じた適切な治療をご提案しています。

まずはお気軽にご相談ください。


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