【Q&A】下肢静脈瘤はほっといても大丈夫ですか?

下肢静脈瘤は放置していても大丈夫?

こんにちは。下肢静脈瘤専門クリニック目黒外科院長の齋藤陽です。今回は、読者の方から寄せられた「下肢静脈瘤は放置していても大丈夫ですか?」という質問にお答えします。

まず、この質問に対する結論から申し上げます。答えは、NOです。その理由をこれから詳しく説明していきます。

下肢静脈瘤とは?

まず、下肢静脈瘤について簡単に説明します。下肢静脈瘤は、足の静脈が拡張し、曲がったり膨らんだりする状態を指します。通常、静脈には血液が心臓に戻るのを助けるための弁がついていますが、これらの弁がきちんと機能しなくなると、血液が重力によって逆流し、静脈に溜まって膨張することになります。これが下肢静脈瘤です。

下肢静脈瘤の症状と影響

下肢静脈瘤の初期症状には、以下のようなものがあります:
– 足のだるさや重さ – 足がつる – 足のむくみ – 足のむずむず感 – 足の熱感
これらの症状は一見、軽いものと感じるかもしれません。しかし、放置することで症状は悪化し、以下のような深刻な合併症を引き起こす可能性があります。
うっ滞性皮膚炎
下肢静脈瘤が重症化してくると皮膚の色が黒ずんできます。残念ながら皮膚の色が黒ずんでしまうと、下肢静脈瘤の治療を行ってもなかなか消えません。特に女性の患者さんはスカートが履けなくなり、コンプレックスの原因となってしまいます。

また、湿疹やかゆみがなかなか治りにくいため、皮膚を掻き壊してしまった場合、下肢静脈瘤の方は皮膚の小さな傷がなかなか治りにくく、最悪の場合、皮膚が潰瘍になってしまうリスクが高いため、手術が必要です。

静脈性潰瘍
長期間放置された静脈瘤は、皮膚の表面に潰瘍(静脈性潰瘍)を形成することがあります。これらの潰瘍は治りにくく、感染のリスクを伴います。静脈性潰瘍はお薬を塗っていても治ることはなく、下肢静脈瘤の手術が必要です。

血栓症(血栓性静脈炎)
下肢静脈瘤が原因で血栓が形成されることがあります。この場合、血栓が肺に飛んだりして命の危険がおよぶ確率は低いのですが、ある日急に足が腫れて痛くなります。これを血栓性静脈炎と言います。

出血
膨張した静脈は皮膚の表面近くにあるため、軽い怪我でも出血することがあります。この出血は止まりにくく、特に高齢者にとっては危険です。

下肢静脈瘤の治療の重要性

下肢静脈瘤は命にかかわる病気ではありませんので、うっ滞性皮膚炎や静脈性潰瘍の状態でなければ急いで手術を行う必要はありません。しかし、下肢静脈瘤は進行性の病気ですので、年月とともに少しずつ悪化します。できるだけうっ滞性皮膚炎や静脈潰瘍になる前に治療することが重要です。適切な治療を受けることで、症状の軽減や合併症の予防が可能です。治療法には以下のようなものがあります。
圧迫療法
弾性ストッキング(着圧ソックス)を履いて、静脈の圧力を軽減し、血液の流れを改善します。足のだるさやむくみ、こむら返りなどの症状を改善させるのに有効です。ただし、下肢静脈瘤自体が弾性ストッキングによって消えるわけではないので、あくまでも応急処置という位置づけです。

硬化療法
硬化剤という薬を静脈瘤に注射して、患部の静脈瘤を閉鎖します。これにより、血液は健康な静脈を通るようになります。比較的小さめの静脈瘤に対して有効な治療法です。
血管内焼灼術(カテーテル治療)
カテーテルを用いて、熱によって内部から静脈瘤を焼いて閉鎖させる治療法です。皮膚切開を必要としないため、傷あとが目立ちにくく、痛みも小さいため手術翌日から概ね通常通りの生活ができます。

血管内塞栓術(グルー治療)
医療用の接着剤を用いて静脈瘤を詰めて閉塞させる治療法です。血管内焼灼術(カテーテル治療)と比べて術後の痛みが小さい事が特徴です。

まとめ

下肢静脈瘤は命には関わりませんが、進行性の病気です。放置すると、うっ滞性皮膚炎、静脈性潰瘍、血栓症、出血といった深刻な合併症を引き起こすリスクがあります。早期に専門医の診断を受け、適切な治療を受けることで、症状の悪化を防ぎ、健康な生活を維持することができます。もし、足に不快感や異常を感じた場合は、早めに医療機関を受診してください。健康な足を保つために、適切なケアと治療を心掛けましょう。