
【医師監修】片足だけ?両足にも?下肢静脈瘤ができる理由と見逃せない初期症状
Q: 下肢静脈瘤はなぜ片足だけの人と両足の人がいるのですか?
A: 下肢静脈瘤は、静脈の弁が正常に機能しなくなることで血液が逆流し、静脈が膨らむ病気です。片足だけに症状が現れる場合もあれば、両足に出ることもあります。これは、遺伝・生活習慣・体の左右差・過去の病歴など複数の要素が関係しています。片足だけに下肢静脈瘤ができる主な理由
1. 血管の個体差(左右差)
人間の体は完全な左右対称ではありません。例えば片側の静脈の弁が生まれつき弱かったり、構造的に血流が滞りやすい形をしていたりすると、片足のみに静脈瘤が生じることがあります。ただし、その時点では片足だけ静脈瘤が生じていても、将来反対の足にも静脈瘤ができることは十分にあり得ます。2. 生活習慣や仕事の影響
立ち仕事や歩行動作の癖などにより、片側の足に負担が偏るケースがあります。右利きの人が右足に重心をかけるなど、日常の動作が静脈に影響を与える可能性があります。3. 過去の病歴(怪我や手術)
過去に片足の手術(膝・股関節など)や外傷を受けた場合、一定期間足を動かすことができません。そのため、動かすことができない足には血流障害が起きやすくなり、片足だけ静脈瘤ができる要因となります。4. 妊娠・ホルモンの影響
妊娠中は大きくなった子宮が足の静脈を圧迫します。子宮と足の静脈の解剖学的な位置関係により左足の静脈が圧迫されやすく、特に左足に静脈瘤が出やすくなる傾向があります。両足に下肢静脈瘤ができる主な理由
1. 遺伝的要因
両親の両方が下肢静脈瘤を持っている場合、その子どもに遺伝する確率は90%以上とされており、特に女性では遺伝率が高いという統計データがあります。これは、生まれつき静脈の弁が弱い体質や、血管壁が拡張しやすい性質が遺伝的に引き継がれるためです。
また、このような体質を持つ方は、左右どちらか一方ではなく、両足に静脈瘤が発症しやすい傾向があります。とくに思春期以降の女性や、妊娠・出産を経験する女性は、ホルモンの影響も加わって静脈への負担が増し、若いうちから症状が出やすくなることもあります。
さらに、親に症状がなかった場合でも、祖父母の代に下肢静脈瘤がある場合は注意が必要です。隔世遺伝によって発症するケースも少なくありません。
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立ち仕事や座り仕事など、同じ姿勢を長時間続ける生活が長年続くと、はじめは片足だけに現れていた静脈瘤が、やがて両足へと広がっていくことがあります。
これは、重力の影響により足に血液が滞りやすくなり、静脈の弁に過剰な負担がかかり続けることが原因です。特に、長時間立ちっぱなしになる職種(調理師・販売員・看護師など)や、座りっぱなしのデスクワークが多い人は、ふくらはぎの筋肉ポンプがうまく働かず、血流が悪化しやすくなります。
その結果、血液の逆流が起こりやすくなり、健康だった側の足にも徐々に静脈瘤が形成されるというメカニズムです。実際、最初は「片足だけがだるい」と感じていた患者さんが、数年後に反対側の足にも症状を訴えるケースは珍しくありません。
片足に静脈瘤がある場合でも、もう片足の静脈にも目に見えないレベルで血流障害が進んでいる可能性があるため、早期の検査と生活習慣の見直しが重要です。
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3. 年齢による影響
加齢とともに、静脈の壁に含まれる弾性線維が減少し、血管全体の柔軟性や収縮力が低下します。あわせて、血液の逆流を防ぐ役割を担う静脈弁も徐々に弱くなるため、血流が滞りやすくなり、静脈瘤の発症リスクが高まります。
特に50代以降になると、長年の重力負荷や生活習慣の影響が蓄積されるため、それまで症状がなかった人でも徐々に静脈が膨らみ始めることがあります。初期は軽いだるさやむくみだけだった症状が、静脈弁の機能低下に伴って進行し、やがて両足にわたって血管が浮き出るような静脈瘤に発展するケースも少なくありません。
また、高齢になるにつれ歩行やふくらはぎの筋肉運動が減ることで、下肢の血流を押し上げる力(筋ポンプ作用)も低下しやすく、静脈のうっ滞が悪化しやすくなります。
そのため、年齢を重ねるごとに、両足ともに定期的な血管チェックを行い、早期に治療や予防策を講じることが重要です。
片足だけでも早めの診察を!
片足だけに静脈瘤があっても、治療せずに放置すると反対側の足にも広がることがあります。また、見た目に異常がなくても、エコー検査で血流の逆流が見つかることもあります。✅ 次のような症状がある方は早めの受診をおすすめします。
- ふくらはぎの血管が浮き出てきた
- 足のむくみや重だるさ
- 足首に茶色い色素沈着
- 夜中や朝方に足がつりやすい
医師コメント
「当院でも、片足だけ症状がある方は多くいらっしゃいます。両足をしっかり超音波で調べることで、症状が出ていない側にも逆流が見つかるケースもあります。気になる場合は放置せずご相談ください。」患者体験談
60代 男性(営業職) 「右足の血管が膨らんで見た目が気になっていましたが、左足は大丈夫と思っていました。診察で左足も逆流があることが分かりましたが、自覚症状がないので右足だけを治療しました。ただし、今後左足の静脈瘤が悪化してくることが予想されるので、弾性ストッキングをできるだけ履くようにします」よくある質問(FAQ)
Q. なぜ片足だけに静脈瘤ができるのですか?
片足だけに下肢静脈瘤が現れる理由は、体の左右差による血管構造の違いや、利き足への負担、過去の怪我・手術の影響、妊娠中の子宮圧迫など、さまざまな要因が関係しています。特に、妊娠中は左側の静脈が圧迫されやすく、左足に症状が出やすい傾向があります。さらに、静脈の弁が先天的に弱い場合、その側だけ血液が逆流しやすくなり、静脈瘤を発症することがあります。
Q. 片足の静脈瘤でも治療すべきですか?
はい、片足だけの静脈瘤であっても、進行すれば血栓や皮膚炎、潰瘍などの合併症を引き起こす可能性があります。もう片方の足には症状が出ていなくても、エコー検査で逆流が見つかるケースもあります。特に、むくみ・こむら返り・血管の浮き・足首の色素沈着などの症状がある場合は、放置せずに早期に専門医を受診することをおすすめします。
まとめ
片足だけに静脈瘤が現れるのは、左右の血管の構造差や、利き足への偏った負担、立ち方や歩き方のクセ、過去の怪我や手術といった生活習慣の影響が関係しています。一方で、両足に静脈瘤ができる背景には、遺伝的に静脈弁が弱い体質、加齢に伴う血管の劣化、長年にわたる立ち仕事や座りっぱなしの習慣による血流障害が挙げられます。
また、静脈瘤が外見に現れない場合でも、エコー検査を行うと内部で血液の逆流が起きている「隠れ静脈瘤」が見つかることも少なくありません。
目黒外科では、下肢静脈瘤に特化した専門医が丁寧にエコー検査を行い、症状の有無に関わらず血流の状態を正確に評価します。そのうえで、患者様一人ひとりに適した日帰り治療(レーザー治療・グルー治療)をご提案しており、切らず・縫わず・痛みも少ない安心の最新医療を提供しています。
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