飲食業の立ち仕事で悪化する下肢静脈瘤|専門医が教える予防と最新治療法

飲食業の立ち仕事で悪化する下肢静脈瘤|予防と治療法を医師がわかりやすく解説





この記事は、下肢静脈瘤専門クリニック「目黒外科」院長 齋藤陽 医師が監修しています。

飲食店で働く人が静脈瘤になりやすい理由

飲食業に従事する方の多くは、調理・配膳・接客と、長時間立ちっぱなしの業務が日常です。その結果、脚の静脈に重力負担がかかりやすく、静脈内の血液が逆流しやすくなります。加えて、不規則な休憩や勤務時間帯の不安定さも、血流悪化の要因となります。

下肢静脈瘤とは

下肢静脈瘤は、脚の静脈が拡張してボコボコと浮き出る状態です。血液がうまく心臓に戻らず、逆流した血液が脚にたまることで起こります。進行すると、だるさ・むくみ・痛みに加え、色素沈着や皮膚炎、潰瘍を引き起こすこともあります。

下肢静脈瘤の画像

下肢静脈瘤が重症化するとうっ滞性皮膚炎のリスクがあります

仕事に支障が出る前に!予防法を習慣に

1. 適度な休憩と脚の挙上

業務の合間に数分でも座って脚を上げる習慣を取り入れましょう。
特に長時間立ち続ける飲食店での勤務では、ふくらはぎの筋肉ポンプ機能が疲弊し、静脈の血液が心臓へ戻りにくくなります。椅子に座って脚を少し高く上げることで、重力の助けを借りて血液がスムーズに循環し、下肢に血液が滞る「うっ血」状態を予防できます。1日に数回、3〜5分間でも良いので、休憩時間に意識的に脚を上げて休ませることが、下肢静脈瘤の進行を防ぐ大切なポイントになります。可能であれば、足を心臓より高い位置に保つのが理想的です。

2. 弾性ストッキングの着用

弾性ストッキング(着圧ソックス)は、ふくらはぎに段階的な圧力をかけることで、下肢の静脈血を効率よく心臓に戻す手助けをします。
重力の影響で下半身にたまりがちな血液のうっ滞を防ぎ、血流をスムーズに保つことで、静脈瘤の進行や脚のだるさ、むくみを軽減します。特に立ち仕事が多い方は、起床後すぐ、足がむくむ前のタイミングで着用するのが最も効果的です。朝の出勤前から着けることで、日中の脚への負担を大幅に軽減できます。市販品よりも医療用弾性ストッキングは圧力設計が最適化されており、専門医の指導のもとで選ぶことが望ましいでしょう。

3. 足首を動かすストレッチ

立ち仕事の合間に、つま先立ちや足首を回すといった軽い運動を取り入れるだけでも、ふくらはぎの筋肉ポンプが活性化され、血流の改善に繋がります。
特にふくらはぎの筋肉は“第二の心臓”とも呼ばれ、収縮と弛緩を繰り返すことで、足にたまった血液を心臓へと押し戻す重要な役割を果たしています。数時間ごとに30秒〜1分程度のつま先上下運動を数セット行うだけでも、静脈うっ滞の予防効果が期待できます。
また、足首をぐるぐる回す運動や、かかとを上下にリズミカルに動かす運動も、足の深部静脈を刺激し、静脈瘤やむくみの予防に有効です。仕事中に歩き回ることが難しい環境でも、その場でできる簡単なエクササイズを意識的に取り入れることが大切です。

4. 体重コントロール

体重が増加すると、それに比例して脚への負担も大きくなり、静脈の逆流を助長しやすくなります。特に肥満は下肢静脈瘤の発症リスク因子のひとつです。
そのため、栄養バランスの取れた食生活と、継続的な運動習慣によって適正体重を維持することは、静脈瘤の予防・進行抑制において極めて重要です。
例えば、塩分や糖分を控え、野菜や魚を中心とした和食を意識したり、日常的にウォーキングや階段昇降を取り入れることが有効です。
また、特に腹部に脂肪が蓄積すると、骨盤内の静脈を圧迫し、下肢の静脈還流が悪化することもあるため注意が必要です。

専門医による下肢静脈瘤の治療法

目黒外科では、切らない・縫わない・痛みの少ない治療を提供しています。

レーザー治療

レーザーを用いて静脈を内側から熱で閉じる「血管内焼灼術」は、切開や縫合を伴わない低侵襲な治療法です。
カテーテルを静脈内に挿入し、血管の壁に熱を加えることで逆流のある静脈を閉鎖します。局所麻酔と点滴による静脈麻酔を併用するため、痛みや不安も少なく、治療は片足で30〜60分程度で終了します。

日帰りでの実施が可能で、術後は包帯や着圧ソックスで圧迫しながらそのまま歩いて帰宅できるため、忙しい飲食業の方でも翌日から通常業務に復帰できます
特に「仕事を休めない」「人手が足りない」などの事情を抱える方にとって、有力な選択肢となります。

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グルー治療(医療用接着剤)

医療用接着剤(グルー)を用いて静脈を閉じる最新の治療法「血管内塞栓術」は、体への負担が非常に少ない画期的な方法です。
カテーテルを使って逆流のある静脈内に医療用瞬間接着剤を注入し、血管を内側から閉鎖します。局所麻酔のみで施術でき、レーザー治療に比べて使用する麻酔量が少ないのが特徴です。

術後の内出血や腫れが非常に少なく、圧迫処置が不要な場合もあり、術後のケアも簡単です。
とくに痛みに敏感な方や、着圧ソックスを長時間装着できないライフスタイルの方には、負担の少ない選択肢として好まれています。

【関連記事】【最新治療】下肢静脈瘤に対するグルー治療とは?メリットと特徴を専門医が詳しく解説

硬化療法(注射治療)

目立つ細い血管や小さな静脈瘤には、「硬化療法(硬化剤注入)」が非常に効果的です。
専用の細い針で血管内に薬剤(硬化剤)を注入することで、血管の内側に炎症を起こし、最終的に閉塞・吸収させていく治療法です。施術は数分で終了し、麻酔を必要としないため体への負担もほとんどありません。

とくにクモの巣状静脈瘤(毛細血管の拡張)や青く浮き出た細い血管に対して高い効果を発揮し、「美脚治療」として女性からの人気も高まっています。
ダウンタイムもほとんどなく、日常生活に支障をきたさずに見た目の改善が図れるため、結婚式や旅行を控えた方のご相談も増えています。

【関連記事】【下肢静脈瘤の専門医が解説】クモの巣状静脈瘤や網目状静脈瘤には硬化療法!

体験談:飲食業・40代男性のケース

「夕方になるとふくらはぎがパンパンに張り、立っているのがつらくなっていました。レーザー治療を受けた翌日には通常勤務に戻ることができ、脚の重だるさが嘘のように軽くなりました。」

(渋谷区・飲食店勤務 男性 46歳)

まとめ|無理をせず、早めに相談を

飲食業に携わる方々は、立ち仕事による慢性的な脚の負担にさらされています。放置せず、まずはエコー検査を受けて現状を把握することが大切です。目黒外科では、初診から治療・再発防止の指導までワンストップで対応しております。

仕事に支障をきたす前に、一度ご相談ください。

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FAQ(よくあるご質問)

Q1. 飲食店で働いていますが、脚のだるさは下肢静脈瘤の初期症状ですか?

A1. はい、長時間の立ち仕事が続く飲食業の方に多く見られる「脚のだるさ」や「重さ」は、下肢静脈瘤の初期症状の可能性があります。血液が脚にたまってしまい、静脈が拡張することでこうした症状が現れることがあります。早期の段階で診断・予防を行うことで、進行を防ぐことができます。

Q2. 弾性ストッキングは仕事中ずっと着けていても大丈夫ですか?

A2. はい、医療用の弾性ストッキング(着圧ソックス)は、日中の立ち仕事の時間帯に着用することで脚の静脈への負担を軽減し、血流を促進する効果があります。正しくフィットした製品を選び、就寝時は外すのが一般的です。違和感や締め付け感が強すぎる場合は、医療機関に相談しましょう。

Q3. 下肢静脈瘤の手術後、どのくらいで職場復帰できますか?

A3. 当院で行っているレーザー治療やグルー治療は、皮膚を切らず、縫合も不要な低侵襲手術のため、多くの方が翌日から通常の仕事に復帰されています。飲食店のように動きの多い職種でも、個人差はありますが、術後の痛みや違和感が少なければ早期に復職が可能です。


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