【血管外科医監修】冬は下肢静脈瘤悪化に要注意|乾燥による皮膚トラブルとその対策
 

【医師監修】冬の乾燥で下肢静脈瘤が悪化?皮膚トラブルを防ぐ5つの対策

冬の寒さは身に染みますが、暖房の効いた室内は快適な反面、空気の乾燥によって肌トラブルが起こりやすくなります。特に下肢静脈瘤をお持ちの方にとって、乾燥による皮膚のかゆみ・掻き壊し・皮膚潰瘍のリスクが高まる季節です。
本記事では、冬に下肢静脈瘤の皮膚症状が悪化する理由とその対策を、血管外科専門医の視点で詳しく解説します。

乾燥が下肢静脈瘤に及ぼす影響

下肢静脈瘤は、静脈の弁が壊れることで血液が逆流し、血管が拡張・浮き出て見える状態です。症状には足のだるさ・むくみ・痛みがあり、進行すると皮膚症状が出ます。冬の暖房で空気が乾燥すると、皮膚のバリア機能が低下しかゆみが強くなる傾向にあります。

下肢静脈瘤によるうっ滞性皮膚炎(色素沈着・湿疹)
下肢静脈瘤によるうっ滞性皮膚炎(色素沈着・湿疹)

かゆみに耐えきれずに掻き壊してしまうと、皮膚が傷つき、そこから炎症が悪化して「うっ滞性皮膚炎」へと進行する恐れがあります。さらに放置すると、皮膚がただれて穴が開き、「静脈性皮膚潰瘍」と呼ばれる治りにくい状態に発展することもあります。

潰瘍は一度できてしまうと数ヶ月から年単位の治療を要するケースも珍しくなく、皮膚の再生に時間がかかるだけでなく、細菌感染のリスクが高まるため、抗生剤の投与や外用処置が必要になる場合もあります。また、潰瘍部分の痛みや滲出液の管理、定期的な通院が必要となることで、日常生活や仕事に大きな支障をきたす原因となりえます。

皮膚トラブルを未然に防ぐには、かゆみが出た時点で早めに保湿対策を行い、静脈瘤の状態を医師に相談することが非常に重要です。

掻き壊しが原因で皮膚潰瘍になった患者さん
掻き壊しが原因で皮膚潰瘍になった患者さん

冬こそ始めたい!下肢静脈瘤の5つのケア対策

  1. 保湿ケアを徹底しましょう
     冬は空気が乾燥し、肌の水分が奪われやすくなります。入浴後や乾燥を感じたときは、保湿クリームやローションを丁寧に塗布してください。特にすねや足首周辺は皮膚が薄く乾燥しやすいため、尿素配合の保湿剤を使うと効果的です。かゆみや炎症の予防にもつながります。

  2. 暖房と加湿のバランスを取りましょう
     暖房の使用で室内が乾燥しがちな冬は、湿度40~60%を目安に保ちましょう。加湿器を併用することで、肌への負担を軽減できます。また、エアコンの風が直接足に当たらないように風向きを調整し、冷風による血流の悪化を防ぎます。

  3. 締め付けすぎない服装を選びましょう
     タイトな衣類や靴下は足の静脈を圧迫し、血液の流れを妨げて静脈瘤を悪化させる可能性があります。特に就寝時や長時間のデスクワーク中は、ゆったりとした柔らかい素材の服装を選ぶことで、皮膚への摩擦やうっ血を予防できます。

  4. ウォーキング・ストレッチで血流を促進しましょう
     冬は運動不足になりがちですが、ふくらはぎの筋肉を動かすことが静脈のポンプ機能をサポートし、血流を改善します。1日10〜15分の軽いウォーキングや、テレビを見ながらできる足首の回旋運動・かかと上げ下げ運動など、無理のない範囲で継続しましょう。

  5. 弾性ストッキング(着圧ソックス)を正しく着用しましょう
     医師の指導のもとで選ばれた医療用の弾性ストッキングは、足の静脈に適度な圧力をかけて血液の逆流やうっ滞を予防します。日中の活動時間帯に正しく着用することで、静脈瘤の進行を抑えるサポートになります。

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冬は治療のチャンス

「冬は厚着をしているから足元は見えないし、静脈瘤も気にしなくて大丈夫」と考えてしまいがちですが、実は冬こそ下肢静脈瘤の治療やケアに最も適した季節です。

冬場は気温が低いため、術後の圧迫ストッキングの着用も快適で、長時間履いていても蒸れにくく、夏のような不快感を感じにくいのが大きなメリットです。また、タイツやパンツスタイルの中に自然に履けるため、見た目を気にせず圧迫療法を続けやすい環境が整っています

さらに、冬の間に治療を受けておけば、春夏の薄着になる季節には足の見た目も改善され、自信を持ってスカートやショートパンツを楽しめるようになります。

見た目上の症状が落ち着いているように見えても、静脈瘤は少しずつ進行していく慢性疾患です。違和感や軽いむくみ、足のだるさなどがある方は、「まだ大丈夫」と自己判断せず、早めに血管外科専門医でエコー検査を受けることが大切です。


下肢静脈瘤の診断には超音波検査が必須

目黒外科では切らない最新治療を提供

当院では、身体への負担を最小限に抑えた先進的な「レーザー治療」および「グルー治療(医療用接着剤)」を採用しています。これらはいずれも皮膚を切らずに血管を内側から閉塞させる治療法で、従来のストリッピング手術と比べて痛みや出血、術後の回復期間が大幅に短縮されます。

手術時間は約30〜60分と短く、全身麻酔は不要で局所麻酔と静脈麻酔で対応できるため、術後はそのままご自身で歩いてご帰宅いただけます。翌日からは通常の生活に戻ることができ、デスクワークや家事、軽い運動も可能です。

特に冬の季節は、術後に必要となる圧迫ストッキングの着用も快適で、外気温の低さがむくみや炎症の抑制にもつながります。春夏には見た目も改善され、足元を気にせず快適に過ごせるようになりますので、治療のタイミングとして冬は非常におすすめです

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