【医師監修】下肢静脈瘤はなぜ加齢で発症しやすくなる?原因と予防策を解説
こんにちは、目黒外科 院長の齋藤陽です。
下肢静脈瘤は、加齢とともに発症リスクが高まる病気です。この記事では、加齢によってなぜ下肢静脈瘤が起こりやすくなるのか、その理由と予防策について、医学的根拠に基づいて分かりやすく解説します。
下肢静脈瘤とは
下肢静脈瘤は、足の静脈の中にある静脈弁の機能不全によって発症します。静脈弁は、血液が重力に逆らって心臓に戻るのを助ける「逆流防止弁」のような働きをしています。
この弁が加齢やその他の要因でうまく閉じなくなると、血液が足に逆流・停滞し、静脈がこぶのように膨らんでしまいます。これが「下肢静脈瘤」です。

下肢静脈瘤の画像
下肢静脈瘤の有病率と疫学データ
下肢静脈瘤は、特に40歳以上の女性に多く見られ、加齢とともに増加傾向があります。
- ある調査では、日本人の15歳以上で43%、30歳以上で62%に静脈瘤が認められたと報告されています。
- 別の調査では、40歳以上の人の8.6%に下肢静脈瘤が見られました。
- また、出産経験者の2人に1人が下肢静脈瘤を発症しているという報告もあります。
このように、加齢や出産などにより、下肢静脈瘤は意外と多くの人が抱える疾患です。
加齢と下肢静脈瘤の関係:発症しやすくなる3つの理由
1. 静脈弁の機能低下
加齢により静脈弁が硬くなったり閉じが甘くなったりすると、血液が心臓に戻らず、逆流して足の静脈に滞留します。これが下肢静脈瘤の根本原因の一つです。

正常下肢と下肢静脈瘤
2. 運動量の減少
年齢を重ねると、活動量や外出の頻度が減る傾向にあり、ふくらはぎの筋肉ポンプが働きにくくなります。この結果、足の血液循環が悪くなり、静脈瘤のリスクが高まります。
3. 足の筋肉量の減少
加齢によって足の筋肉が減ると、血液を上に押し上げる力が弱まり、静脈に血液がたまりやすくなります。これも静脈瘤ができやすくなる重要な要因です。

筋ポンプ作用
加齢による下肢静脈瘤の予防と対策
年齢とともに避けられない体の変化はありますが、以下のような日常習慣で下肢静脈瘤のリスクを軽減することが可能です。
- 定期的なウォーキングや体操などの軽い運動
- 長時間の立ちっぱなし・座りっぱなしを避ける(1時間に1回は足を動かす)
- 弾性ストッキングの活用(足の静脈をサポートし血流を促進)
これらの対策を日々の生活に取り入れることで、下肢静脈瘤の予防につながります。
気になる症状がある方はお早めにご相談を
「足が重い」「夕方になるとむくむ」「血管が浮き出て見える」などの症状があれば、下肢静脈瘤のサインかもしれません。違和感を感じた時点で、専門医による検査をおすすめします。
よくある質問(FAQ)
- Q. 年齢以外で下肢静脈瘤の原因になるものはありますか?
- A. 妊娠・出産、長時間の立ち仕事、遺伝、肥満、女性ホルモンの影響などもリスク因子になります。
- Q. 加齢による静脈瘤は自然に治りますか?
- A. 自然治癒は難しく、進行することが多いため、早めの診断と治療が大切です。
- Q. 弾性ストッキングは何歳から着けるべき?
- A. 症状や生活習慣に応じて40代以降に使い始める方が多いですが、立ち仕事をしている若い方にも予防目的で有効です。
この記事は、下肢静脈瘤専門医・齋藤陽(目黒外科 院長)の監修のもと作成されています。
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