
下肢静脈瘤の放置リスクと進行度(CEAP分類)を専門医が解説
下肢静脈瘤は、足の静脈にある弁の機能が低下することで、血液が逆流し、足の静脈に滞留してしまう病気です。見た目だけでなく、進行するとかゆみ・皮膚炎・潰瘍などの深刻な症状につながることもあります。本記事では、目黒外科が下肢静脈瘤を放置した場合のリスクと、進行度を評価する「CEAP分類」について画像付きで解説します。

下肢静脈瘤を放置するとどうなる?
放置された下肢静脈瘤には、次のようなリスクがあります。- 皮膚の色素沈着・湿疹:血液のうっ滞によって皮膚が黒ずんだり、炎症を起こすことがあります。
- 慢性的なだるさ・痛み:足が重く感じたり、こむら返りが頻発します。
- むくみ:特に夕方になると足がパンパンに腫れることがあります。
- 血栓性静脈炎:血のかたまり(血栓)ができて、静脈に炎症が生じる状態です。
- 皮膚潰瘍:悪化すると皮膚がえぐれ、治りにくい潰瘍になることがあります。
下肢静脈瘤の進行度を示す「CEAP分類」とは?
CEAP分類とは、臨床症状(C)・病因(E)・解剖学的分布(A)・病態(P)の頭文字を取った分類法で、現在は特にC(臨床症状)がよく使われています。C1:クモの巣状・網目状静脈瘤


細い毛細血管が皮膚の表面に網目状・クモの巣状に浮き出る状態で、多くの場合は痛みやかゆみなどの自覚症状はありません。美容的な見た目が気になるという理由で受診される方が多く、健康上すぐに大きな問題を引き起こすことはまれです。
ただし、ごく一部の方ではチクチクした痛みや軽いかゆみ、灼熱感を伴うことがあり、日常生活で不快感を覚える場合もあります。
進行して太い静脈瘤に変化することは少ないため、心配しすぎる必要はありませんが、気になる場合は専門医に相談すると安心です。
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C2:3mm以上のボコボコした静脈瘤

これらの症状は一時的なものと思われがちですが、静脈内の血液の逆流が慢性化しているサインです。何もせずに放置してしまうと、足のむくみ(C3)や皮膚の変色・炎症(C4)など、より進行した状態に移行するリスクが高まります。
この段階での受診・治療により、進行を防ぎ、将来的な合併症のリスクを大幅に減らすことが可能です。見た目の改善だけでなく、生活の質(QOL)の維持にもつながるため、早期の対応が望まれます。
C3:足のむくみが目立つ状態

朝はスッキリしていた足が、夕方になると靴がきつく感じるほど腫れてくる場合、それは静脈瘤が進行しているサインかもしれません。これは、立ち仕事や長時間の座位によって、足の静脈に血液がたまりやすくなることが原因です。特に、足首やすね周辺に限定したむくみが繰り返されるようであれば、単なる水分代謝の問題ではなく、下肢静脈瘤による慢性的な静脈うっ滞の可能性が高いと考えられます。放置すると皮膚の色素沈着や湿疹へと進行するおそれがあるため、早期に専門医の診断を受けることが大切です。
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C4:うっ滞性皮膚炎


皮膚が茶色や黒っぽく変色し、硬くゴワゴワした質感になったり、湿疹・かゆみが現れる場合、これは「うっ滞性皮膚炎(うったいせいひふえん)」と呼ばれる状態です。静脈内の血液が慢性的に滞ることで、皮膚の毛細血管から血液成分がにじみ出て炎症を引き起こし、皮膚の栄養状態が悪化することでさまざまな皮膚トラブルが生じます。
この状態になると、皮膚は本来のバリア機能を失いやすくなり、わずかな刺激でも赤みやただれが出る、かきこわして出血するなど、日常生活にも支障をきたす症状が現れることがあります。また、治療せずに放置すると皮膚潰瘍(C5・C6)へと進行するリスクが非常に高く、傷が治りにくくなるため注意が必要です。
うっ滞性皮膚炎の段階であれば、早期に手術を受けることで炎症の進行を防ぎ、皮膚状態の改善が期待できます。皮膚に変色やかゆみが現れた時点で、できるだけ早めに専門医に相談しましょう。
C5:潰瘍の治癒後

見た目には傷がふさがったように見えても、皮膚の下では血液の停滞が続き、再度皮膚がもろくなりやすい状態となっています。そのため、わずかな刺激やかゆみによるかきこわしをきっかけに、再び皮膚が崩れて潰瘍が再発してしまうケースが少なくありません。
再発を防ぐには、潰瘍の傷が治ってからが本当のスタートとも言えます。弾性ストッキングによる圧迫療法の継続や、根本原因となる静脈の逆流を断ち切る手術を行うことで、再発予防の効果が高まります。
「治ったから終わり」ではなく、再発しない状態を維持するための継続的な治療とケアが必要です。
C6:活動性皮膚潰瘍

また、皮膚表面だけでなく、静脈うっ滞など血流障害が根本原因となっているため、塗り薬による対症療法では限界があります。潰瘍が治らないまま何ヶ月も経過するケースも少なくありません。
この段階では、静脈の逆流を断ち切る手術を早急に行うことが、潰瘍の治癒を促し、再発を防ぐために非常に重要です。皮膚のダメージが進行する前に、できるだけ早く専門医の診察を受け、根本的な治療を受けることをおすすめします。
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まとめ|気になる症状があれば早めの受診を
下肢静脈瘤は、軽い違和感や見た目の変化といった初期段階であっても、放置することで徐々に進行し、将来的に皮膚炎や潰瘍といった重い症状に発展する可能性があります。だからこそ、症状が軽いうちから適切な対策を講じることが、進行を防ぎ、生活の質を保つ上で非常に重要です。目黒外科では、下肢静脈瘤治療に28年の経験を持つ専門医が在籍しており、最新の超音波検査機器を用いて血管の状態を正確に把握したうえで、患者さま一人ひとりに最適な治療法をご提案しています。日帰り手術にも対応しており、お忙しい方でも安心して受診いただけます。
「足がだるい」「むくみや血管の浮きが気になる」など、どんな些細な症状でも構いません。気になる症状がある方は、悪化する前にお気軽にご相談ください。早めの受診が、将来の不安を取り除く第一歩になります。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 下肢静脈瘤は自然に治りますか?
A. 残念ながら自然に元の状態に戻ることはありません。進行性の病気であり、放置すれば徐々に悪化していきます。軽症であればストッキングによる保存的治療で進行を抑えることも可能です。Q2. 下肢静脈瘤は命に関わる病気ですか?
A. 命に直接関わる病気ではありませんが、重症化すると皮膚潰瘍や血栓性静脈炎などの合併症を引き起こすことがあります。日常生活の質を下げることもあるため、早めの対処が重要です。Q3. 治療には入院が必要ですか?
A. 現在主流のレーザー治療は日帰り(通院治療)で受けられます。目黒外科では局所麻酔で行うため、術後すぐに歩いて帰宅できます。【関連記事】下肢静脈瘤手術は怖くない!目黒外科の切らない日帰り治療とは
Q4. 弾性ストッキングはどこで購入すればよいですか?
A. 医療用弾性ストッキングは、医師の指示に基づき適切なサイズと圧力のものを選ぶ必要があります。目黒外科で購入可能です。【関連記事】弾性ストッキングの効果と選び方