下肢静脈瘤になりやすい人の特徴とは?立ち仕事・妊娠・遺伝によるリスクを専門医が解説

下肢静脈瘤の予防方法

下肢静脈瘤になりやすい人の特徴とは?職業・体質・生活習慣からリスクを解説

下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)は、特定の職業や生活環境、体質によって発生リスクが高まる疾患です。本記事ではどのような人が下肢静脈瘤になりやすいのか、またその理由について詳しく解説します。

長時間の立ち仕事に従事している方

下肢静脈瘤の最も一般的なリスク要因の一つが「長時間の立ち仕事」です。重力に逆らって足から心臓に戻る血液循環が、長時間立っていることで妨げられ、静脈内の圧力が高まるためです。

男性の場合

特に飲食業で働く男性は、下肢静脈瘤になるリスクが非常に高い傾向にあります。
厨房での調理やホールでの接客など、長時間にわたって立ちっぱなしの姿勢を強いられることが多いためです。重力の影響で足に血液が溜まりやすくなり、静脈にかかる圧力が慢性的に高くなることで、静脈の弁が壊れやすくなります。特に、忙しい時間帯が長く続く飲食店や立ちっぱなしで動きが少ない業態(居酒屋のカウンター、ラーメン店の厨房など)ではリスクがさらに高まります。

また、男性の場合は、ふくらはぎの張りやむくみといった初期症状を「ただの疲れ」や「年齢のせい」と見過ごしてしまうケースが少なくありません。こうした放置が進行を招き、ボコボコとした静脈瘤やこむら返り、皮膚トラブルといった症状へと発展することもあります。

そのため、立ち仕事が多い業界では、日々の足のケアが非常に重要です。
勤務中はこまめに足を動かす、休憩中に脚を高く上げる、勤務後はシャワーやストレッチで血行を促す、弾性ストッキングを活用するなど、早期からの対策が下肢静脈瘤の予防・悪化防止につながります。

女性の場合

美容師さんや看護師さんは、下肢静脈瘤になりやすい職業の代表例です。
どちらも長時間立ちっぱなしでの業務が多く、休憩を取るタイミングも限られていることから、足の静脈に慢性的な負担がかかりやすい傾向にあります。

美容師の場合は、カットやカラー、パーマなどの施術中、一定の姿勢を維持しながら立ち続けることが求められます。足を動かす機会が少ないため、ふくらはぎの筋ポンプがうまく働かず、血液の流れが滞りやすくなります。

看護師の場合は、病棟や外来などでの立ち仕事に加え、夜勤や長時間労働、患者さんの対応による突発的な動作も多く、足への負担がさらに増します。特にナースシューズで足元のサポートが不十分なまま長時間動き続けることも、静脈瘤のリスクを高める要因の一つです。

このような職種では、日常的なケアがとても大切です。
勤務中に少しでも足を動かす意識を持つ、弾性ストッキングを活用する、休憩中に脚を高く上げて休めるなど、できる範囲で血流を促す工夫が症状の予防につながります。

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下肢静脈瘤になりやすい立ち仕事

妊娠経験が複数回ある女性

妊娠は女性にとって下肢静脈瘤の発症リスクを大きく高める要因です。これは、妊娠中に増加するホルモンや子宮の拡大により、下半身の静脈に圧力がかかることが主な原因です。

妊娠回数が多い場合

2回以上妊娠している女性は、下肢静脈瘤になるリスクがさらに高まることがわかっています。
妊娠中は、赤ちゃんに栄養や酸素を送るために血液量が増加し、下半身の血流にも大きな変化が起こります。さらに、黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が増えることで血管が拡張しやすくなり、静脈壁の弾力性が低下してしまいます。

加えて、妊娠が進むにつれて子宮が大きくなり、骨盤内の静脈を圧迫するようになるため、下肢への血液の戻りが妨げられます。これらの要因が重なることで、静脈内の圧力が上昇し、血液が逆流しやすくなる状態=静脈瘤の原因となります。

特に2人目以降の妊娠では、1回目の妊娠で弱った静脈にさらに負担がかかるため、発症リスクが高まるとされています。
妊娠・出産を経験した女性の多くが「足が重く感じる」「血管が浮き出てきた」「むくみが取れにくくなった」といった違和感を訴えることも少なくありません。

下肢静脈瘤は放置すると悪化する恐れもあるため、妊娠中や産後に異変を感じた場合は、早めに専門医に相談することが大切です。

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妊娠回数が多くなるほど下肢静脈瘤になる確率が高くなります

10代・20代でも発症?意外に多い「遺伝型下肢静脈瘤」

通常、下肢静脈瘤は中高年層に多く見られる疾患ですが、10代から20代という若年層でも発症するケースがあります。この場合、遺伝が関与している可能性が高いです。

遺伝の影響

親が下肢静脈瘤を持つ場合、子どもに遺伝する確率は非常に高いとされています。統計的には、両親が下肢静脈瘤を持つ場合、子どもに遺伝する確率は90%に達します。片方の親の場合でも、女の子で62%、男の子で25%という数字が示されています。

下肢静脈瘤は遺伝することがあります

肥満や運動不足などの生活習慣がある方

肥満や運動不足の生活習慣も、下肢静脈瘤のリスクを高める要因です。血流をサポートする筋肉が衰えることで、静脈の負担が増し、弁機能不全につながる恐れがあります。

下肢静脈瘤になりやすい人の特徴まとめ

  1. 長時間の立ち仕事をしている方(飲食業、美容師、看護師など)
  2. 妊娠経験が複数回ある女性
  3. 家族に下肢静脈瘤の既往がある若年層
  4. 肥満や運動不足の生活習慣がある方

下肢静脈瘤を予防するためには?

下肢静脈瘤になりやすい方でも、日常生活の工夫で予防や進行を遅らせることができます。

  • 適度な運動を取り入れる
    ウォーキングやストレッチを日常生活に取り入れ、ふくらはぎの筋肉を鍛えることで、血流を改善できます。
  • 長時間の立ち仕事を避ける
    可能であれば適度に座ったり、足を高く上げる休憩を取ることが大切です。
  • 弾性ストッキングを使用する
    下肢静脈瘤予防用の弾性ストッキング(着圧ソックス)を使用することで、静脈の圧力を軽減し、血流をサポートします。

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よくあるご質問(FAQ)

1. 立ち仕事をしているだけで本当に静脈瘤になるのですか?

はい、特に長時間の立ち仕事をしている方は、足の血液が重力の影響で下にたまりやすくなり、静脈に大きな負担がかかります。これにより静脈弁が壊れ、血液が逆流して下肢静脈瘤を引き起こす可能性があります。飲食業・看護師・美容師などの職種に多く見られます。

2. 若いのに静脈瘤になるのはおかしいですか?

若くても下肢静脈瘤になることはあります。特に親が静脈瘤を持っている場合、遺伝によって10代〜20代でも発症することがあります。両親ともに静脈瘤がある場合、子どもに遺伝する確率は90%ともいわれています。

3. 妊娠中に静脈瘤ができたのですが、治りますか?

妊娠中はホルモンや子宮の圧迫によって静脈瘤ができやすくなります。出産後に自然に改善することもありますが、残る場合や悪化するケースもあります。気になる症状がある場合は、専門医の診察を受けることをおすすめします。

まとめ|リスクを知って早めのケアを

下肢静脈瘤になりやすい人の特徴として、立ち仕事、妊娠、遺伝、生活習慣が大きく関係しています。特に、飲食業や美容師、看護師などの職業の方は、日々のケアを怠らないことが重要です。妊娠経験がある女性や家族に下肢静脈瘤の既往がある方も、早期の対策が必要です。

下肢静脈瘤の疑いがある場合や予防についての詳細を知りたい方は、ぜひ専門の医療機関でご相談ください。目黒外科では、経験豊富な医師が診断から治療までを丁寧にサポートします。

 

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