
【医師監修】足の傷が治りにくい方へ|下肢静脈瘤が原因かもしれません
監修:下肢静脈瘤専門クリニック「目黒外科」 院長 齋藤陽 医師足の傷がなかなか治りにくい場合は下肢静脈瘤を疑いましょう
「足の傷がなかなか治らない」「気づけば同じ箇所が何度もかさぶたになっている」といった経験をされたことはありませんか?加齢や糖尿病だけでなく、実は血流障害が関係しているケースも少なくありません。特に、足のすねやくるぶし周辺など、下肢の末端にできた傷が何週間も治らない場合は、静脈の流れが滞っているサインかもしれません。

そのような場合、背後に下肢静脈瘤という病気が潜んでいる可能性があります。
下肢静脈瘤とは、足の静脈内にある逆流防止の弁が機能しなくなることで、血液が心臓へうまく戻らず、血管内に滞留しやすくなる状態です。滞った血液は静脈の壁に過剰な圧力をかけ、次第に血管がこぶ状に膨らんでしまいます。この状態が慢性化すると、皮膚表面の血流も悪化し、酸素や栄養が十分に供給されなくなります。その結果、小さな擦り傷や切り傷でも治りが遅くなり、場合によっては潰瘍(かいよう)へと進行することもあります。

傷の治りにくさと「うっ滞性皮膚炎」「下肢静脈瘤」の関係
静脈内で血液が滞ると、組織に十分な酸素や栄養素が行き渡らず、細胞修復機能が低下します。これにより、軽い擦り傷や皮膚のトラブルも潰瘍化しやすくなり、治癒に長期間を要することがあります。このような状態は「うっ滞性皮膚炎」や「静脈性潰瘍」として知られており、適切な対処が必要です。下肢静脈瘤によくみられる症状
足の重だるさや疲れやすさ
何もしていなくても足が重く感じたり、少し歩いただけで疲労感が強くなることがあります。これは、静脈の血流が滞ることで老廃物がたまりやすくなるためです。
- 【関連記事】【足の疲れが取れない方へ】原因とすぐできる回復法を専門医が解説
夕方になると悪化する足のむくみ
朝は目立たなくても、夕方になると靴がきつく感じるほど足が腫れることがあります。これは日中の重力によって、下肢に血液が溜まりやすくなるからです。
- 【関連記事】足のむくみのセルフチェック
明け方や起床時の足のこむら返り
就寝中や目覚めた直後に、ふくらはぎが突然つって激しい痛みを感じることがあります。これは、静脈の血流が低下することで筋肉に必要な電解質や酸素が不足するためです。
- 【関連記事】夜間や明け方の足のこむら返りに要注意|専門医が解説する下肢静脈瘤との関係と治療法
皮膚の変色(色素沈着)や湿疹
足首まわりの皮膚が茶色っぽく変色したり、かゆみを伴う湿疹が現れることがあります。これは、血液中の鉄分が皮膚に沈着したり、皮膚のバリア機能が低下することで起こります。足の皮膚が硬くなる(皮膚の線維化)
慢性的な静脈うっ滞により皮膚や皮下組織が硬く厚くなり、ゴワゴワとした感触になることがあります。この状態は「皮膚脂肪硬化」と呼ばれます。足の傷が治りにくくなる、または皮膚潰瘍
軽い擦り傷でも治癒に時間がかかり、場合によっては皮膚がただれて潰瘍になることがあります。これを「静脈性潰瘍」と呼び、治療に長期間を要することが多いため早期の対応が必要です。

下肢静脈瘤の治療
圧迫療法(保存的治療)
医療用の弾性ストッキングを着用することで、足の静脈に段階的な圧力をかけ、血液の逆流を防ぎます。特に症状が軽度の場合や、手術を希望しない方に対して選択される治療法です。また、手術後の再発予防や長時間の立ち仕事・フライト時のうっ血予防にも有効です。硬化療法(硬化剤注入治療)
静脈瘤に硬化剤(血管を閉塞させる薬液)を注入し、静脈の内壁を癒着させて血流を止める治療法です。主にクモの巣状静脈瘤や網目状静脈瘤などの比較的小さな表在静脈瘤に適応され、入院の必要がなく、短時間で施術が可能です。施術後は弾性ストッキングの着用が必要になります。血管内焼灼術(レーザー治療・高周波治療)
カテーテルを静脈の中に挿入し、レーザーまたは高周波の熱で血管の内壁を焼灼して閉塞させる治療法です。静脈弁不全のある伏在型静脈瘤(大伏在静脈や小伏在静脈)に対して高い効果を発揮します。局所麻酔下で行う日帰り手術であり、身体への負担が少なく、術後の回復も早いのが特徴です。血管内塞栓術(グルー治療)
カテーテルを使って、医療用接着剤(グルー)を静脈内に注入し、血管を閉塞させる治療法です。焼灼による熱を使用しないため、痛みや術後の皮下出血が少ないというメリットがあります。弾性ストッキングを術後に着用しなくてよい場合もあります。
【関連記事】下肢静脈瘤の治療法|レーザー・高周波・グルー・ストリッピングの違いとは?
まとめ
足の傷がなかなか治らない場合、下肢静脈瘤やうっ滞性皮膚炎が原因である可能性があります。放置すると傷が潰瘍化し、治療が長引くこともあるため、早めに専門医の診断と適切な治療を受けることが重要です。皮膚の黒ずみや湿疹、繰り返す足の傷にお悩みの方は、うっ滞性皮膚炎の記事もあわせてご覧ください。
目黒外科では、足の皮膚症状や傷が治りにくい原因を丁寧に診察し、下肢静脈瘤の有無を超音波検査で確認しています。
「足の傷が長引いている」「皮膚が黒ずんできた」といった症状に心当たりがある方は、ぜひ一度ご相談ください。