下肢静脈瘤とは?

下肢静脈瘤とは?

下肢静脈瘤は、足の静脈の血液が渋滞することで静脈が拡張し、曲がりくねった形をしてしまう病気です。足の静脈の役割は血液を心臓に送り届けることです。そこで、血液が重力によって下に戻らないよう逆流防止弁という機能が備わっています。下肢静脈瘤は、この静脈の逆流防止弁がうまく機能せず、血液が逆流することによって起こります。主にふくらはぎや太ももに見られ、見た目の問題だけでなく、足の痛みや重だるさ、むくみなどの不快な症状を引き起こすことがあります。

下肢静脈瘤の原因について

下肢静脈瘤の発生には、さまざまな要因が関与しています。主な原因としては、遺伝・年齢・性別・妊娠・肥満・立ち仕事などが挙げられます。これらの要因が複合的に影響し、足の静脈に過剰な圧力がかかることが静脈瘤を引き起こします。
  1. 遺伝的要因: 家族内に下肢静脈瘤の患者さんがいる場合、同様の症状を発症する可能性が高まります。両親ともに下肢静脈瘤がある場合、90%の確率で遺伝すると言われています。両親のどちらかに下肢静脈瘤がある場合、女児は62%、男児は25%の確率で下肢静脈瘤が遺伝すると言われています。
  2. 年齢: 加齢により静脈の弁の機能が弱まり、静脈の圧力調節能力が低下するため、静脈瘤が発生しやすくなります。
  3. 性別: 女性は男性に比べてホルモンの影響で静脈の壁が弱まりやすく、下肢静脈瘤を発症しやすいとされています。
  4. 妊娠: 妊娠中は体内の血液量が増加し、子宮の拡大によって圧迫を受けた下半身の静脈に圧力がかかるため、静脈瘤が発生しやすくなります。また、妊娠期間中は女性ホルモンが大量に分泌され、この女性ホルモンが血管を伸びやすくするのです。
  5. 肥満: 体重が増加すると、足への圧力が増え、静脈にかかる負担が大きくなります。
  6. 長時間の立ち仕事: ふくらはぎは「第2の心臓」と言われ、血液を心臓に向かって送り出す原動力となります。長時間立ち続けると、ふくらはぎが動かないため、足の静脈に血液が停滞しやすくなり、静脈瘤を引き起こすリスクが増加します。長時間のデスクワークでも同様にふくらはぎを動かしませんので、下肢静脈瘤の発症リスクが高まります。
これらの原因を理解し、適切な予防策を講じることが、下肢静脈瘤の発症を遅らせるまたは防ぐために重要です。

下肢静脈瘤の種類

下肢静脈瘤にはいくつかの種類があり、それぞれ治療法が異なります:

1. 伏在型静脈瘤: 最も一般的なタイプです。大伏在静脈または小伏在静脈に血液の逆流が見られるタイプです。

2. 側枝型静脈瘤: 伏在静脈には血液の逆流がなく、曲がりくねった静脈瘤が単独で存在します。

3. 網目状静脈瘤: 皮膚の表面に見られる青い色をした毛細血管です。

4. クモの巣状静脈瘤: 皮膚の表面に見られる赤い色をした毛細血管です。

下肢静脈瘤の治療

下肢静脈瘤の治療方法は多岐にわたります。症状の程度や患者の状態に応じて、以下のような治療オプションが考慮されます:
下肢静脈瘤の治療法
1. 圧迫療法: 弾性ストッキングにより足の静脈の血流を改善し、症状を改善させます。ただし根本的な治療ではありません。 2. 硬化療法: 硬化剤という薬剤を静脈瘤に注入し、静脈瘤を縮小させる方法です。 3. 血管内焼灼術(カテーテル治療): レーザー光または高周波を用いて静脈を内部から焼く手術です。 4. 血管内塞栓術(グルー治療): 医療用の接着剤を注入して静脈を詰めてしまう手術です。
※ストリッピングや高位結紮術は現在あまり行われなくなった手術のため、割愛しました。

このような症状があったら受診しましょう

下肢静脈瘤が疑われる症状には以下のようなものがあります:
こんな症状はありませんか?
– 足の重だるさ、疲れやすさ
– 寝ている時や朝起きた時に足がつる
– 夕方になると足がむくむ
– ふくらはぎの痛み、熱感
– 足がムズムズする
– 足の湿疹やかゆみがなかなか治らない
– 足の皮膚の色が黒ずんできた
これらの症状が見られた場合は、専門医を受診して診察を受けるようにしましょう。