はじめに
飲食業に従事する方は、長時間の立ち仕事が日常です。しかし、このような立ち仕事は 下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)のリスクを高める可能性があります。下肢静脈瘤とは、血液がスムーズに心臓へ戻らなくなり、脚の血管が拡張してコブのようになる病気です。対応しないと徐々に悪化するため、正しい知識と予防策が重要です。本記事では、下肢静脈瘤の症状と飲食業での対策を紹介します。下肢静脈瘤の症状と悪化するサイン
下肢静脈瘤は初期段階では気付きにくいですが、次のような症状が現れた場合は要注意です。– 脚のむくみ:長時間の立ち仕事の後に、足やふくらはぎがむくむ。
– 血管の浮き出し:脚の表面の曲がりくねった血管がくっきりと見える。
– 脚のだるさ・重さ:夕方になると脚が重く感じ、疲れやすくなる。
– かゆみや痛み:すねやくるぶし付近にかゆみやジンジンした痛みが出る。
– 夜間のこむら返り:明け方や起床時に足が痙攣(けいれん)しやすくなる。
放置すると皮膚の色が変わったり、皮膚に穴があいて潰瘍になることもあります。重症化する前に適切な対策を取ることが重要です。
飲食業における下肢静脈瘤のリスク要因
飲食業は立ちっぱなしの状態が多く、次のような状況が下肢静脈瘤を悪化させる要因になります。1. 長時間同じ姿勢で立つ 飲食業に携わる人は仕込みから店の営業中、閉店後の後かたずけまで長時間の立ち仕事です。その間血液がふくらはぎに滞り、心臓に戻りにくくなります。
2. 休憩時間が少ない 飲食業は忙しく、休憩を取る時間が限られがちです。そのため、脚を休ませる機会が不足します。
3. 狭いスペースでの作業 動きが制限されると、血液の循環が悪くなり、むくみが生じやすくなります。
当院を受診した患者さんのおよそ4割は飲食業の方です。特に男性の患者さんの場合、およそ7割の方が飲食業です。つまり、下肢静脈瘤は飲食業に携わる方にとって職業病と言っても過言ではないのです。
下肢静脈瘤を予防・改善する対策
1. 適度に動くことを心がける 長時間同じ姿勢で立たないよう、できるだけこまめに足を動かしましょう。例えば、休憩中に つま先立ちや かかと上げの運動を行うと、ふくらはぎの筋肉が血液を押し戻しやすくなります。2. 弾性ストッキングを活用する 弾性ストッキング(医療用の着圧ソックス)は、脚の血管をサポートし、血流を改善する効果があります。サイズが合ったものを選び、日常的に着用するのがおすすめです。
3. 休憩中に脚を高くする 椅子に座った際や休憩中には、足を少し高い位置に置くと、血液がスムーズに戻りやすくなります。
4. マッサージで血行を促進 勤務後に軽く脚をマッサージすることで、疲労を軽減し、血流が良くなります。特に 足首から膝に向かってマッサージすると効果的です。
5. 水分補給を忘れずに 脱水症状が起こると血液がドロドロになり、循環が悪くなります。仕事中もこまめな水分補給を心がけましょう。
下肢静脈瘤が悪化した場合の対応
もし症状が悪化して日常生活に支障が出るようであれば、専門の医師に相談することをおすすめします。軽度のうちに治療を始めることで、症状の進行を防ぐことができます。治療には、以下のような選択肢があります。– 圧迫療法:弾性ストッキング(医療用の着圧ソックス)は、脚の血管をサポートし、血流を改善する効果があります。
– カテーテル治療:レーザーカテーテルや高周波カテーテルなどカテーテルによる熱で静脈を焼灼して閉塞し、血液の逆流を止める方法。
– グルー治療:医療用の瞬間接着剤により静脈を閉塞し、血液の逆流を止める方法。
まとめ
飲食業に従事する方にとって、立ち仕事が原因で下肢静脈瘤が発生・悪化するリスクは無視できません。早めに症状に気付き、適切な対策を取ることで、健康な状態を維持できます。日常のケアとして、足の運動・着圧ソックスの着用・適度な休憩を心がけ、症状の悪化を防ぎましょう。もし、下肢静脈瘤の症状がひどくなった場合は、ためらわず専門医を受診してください。健康な足を保ちながら、仕事に集中できる環境を作ることが、長く働き続ける秘訣です。
このブログでは、飲食業での立ち仕事が引き起こす下肢静脈瘤のリスクとその対策について詳しく解説しました。この記事が少しでもあなたの健康管理に役立てば幸いです。