静脈瘤の治療方法は大きく分けて2通りあります。
症状を改善させる治療・見た目を改善させる治療
症状を改善する治療
圧迫療法
弾性ストッキングをはくと、ふくらはぎが圧迫されるため、静脈の血液が下から上に押し上げられます。
マヨネーズを押し出すのと同じ効果です。
血液の渋滞が解消し、むくみやだるさ、こむら返りなどの症状を改善します。
- メリット
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- その場で治療が開始できる
- 症状の改善が見込める
- 手軽
- 手術代に比べるとストッキング代は安い
- デメリット
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- 根本的な治療ではない
- ストッキングを脱いだら治療効果はなくなる
- 皮膚がかゆくなる、かぶれることあがる
- 夏場は暑いがそれでもストッキングは履かなくてはならない
- 普通の靴下と比べると、硬くて履きにくい
外科治療
血液の逆流を生じている大(小)伏在静脈静脈をそのままにしておくと、血液は流れ込みます。
逆流防止弁が働かない静脈に流れ込んだ血液は逆流してしまいます。
だったら、このダメな静脈を通行止めにしてしまおう、あるいは撤去してしまおう、というのが外科治療のコンセプトです。
- ダメな静脈を通行止めにする ➡ ①カテーテル治療
- ダメな静脈を撤去する ➡ ②ストリッピング手術
カテーテル治療
現在、日本国内で保険適応のカテーテル治療は、①レーザーと②高周波の2種類があります。
レーザーカテーテルはおそばくらいの細さです。
カテーテル先端からレーザーが出て、その熱により静脈が焼けて閉塞します。
高周波カテーテルもレーザーと同じくらいの細さです。
カテーテルの先端にある金属コイルが120℃に熱せられ、その熱により静脈を閉塞させます。
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1.目的の静脈にカテーテルを挿入します。
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2.皮膚を切らずに静脈にカテーテルを入れますので、傷あとが目立ちにくいのが利点です。
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3.高周波を用いてカテーテル先端にあるコイルを120℃に発熱させます。
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4.カテーテルの熱により血管が焼けて閉塞します。静脈の焼灼自体は片足約3~5分で終了します。
FAQ
- レーザー治療との違いはありますか?
- 血管の中にカテーテルを入れて病的な静脈を焼く、という点でラジオ波とレーザーは同様の治療方法であり、ほぼ同等の治療成績が報告されています。術後の痛み・アザに関して、ラジオ波と1470nmレーザーの2つは非常に優れています。しかし、前世代の980nmレーザーは術後の痛みやアザがしばしば問題となります。
- だれでもこの治療を受けられますか?
- 大伏在静脈が非常に太い場合、静脈の焼灼が不十分となる可能性があります。
大伏在静脈が著しく曲がりくねっていて、カテーテルが入らない方は血管内治療が困難です。
- 脳梗塞の予防のため、血が固まりにくくなるお薬を飲んでいますが、この治療は受けられますか?
- 血液が固まりにくくなるお薬を服用中の方でもこの治療を行うことは可能です。
従来の手術方法であるストリッピング手術では、出血が止まりにくくなるためお薬の服用を中止していただいてから手術を行っていましたが、カテーテル治療では「血液を固まりにくくする」お薬の中止をしていただく必要はありません。
- この治療を受けることができない条件はありますか?
- 下肢静脈瘤に対する血管内治療のガイドラインでは、以下のような方はカテーテルによる血管内治療を受けることができません。
- くもの巣状や網目状静脈瘤
- 深部静脈血栓症を有する、あるいは既往のある方。
- 動脈性の血行障害を有する方。
- 歩行の困難な方
- 多臓器障害あるいはDIC 状態の方
- 経口避妊薬あるいはホルモン剤を服用している方
- 重篤な心疾患のある方
- ショックあるいは前ショック状態にある方
- 妊婦または妊娠の疑われる方
- ステロイド療法中の方
- ベーチェット病の方
- 骨粗しょう症治療薬(ラロキシフェン)、多発性骨髄腫治療薬(サリドマイド)を服用している方
- 血栓性素因(プロテインC 欠損症、プロテインS欠損症、アンチトロンビンIII 欠損症、抗リン脂質抗体症候群等)の方
手術後の日常生活について
治療当日より、日常の家事をしても差し支えありません。
シャワーは翌日から、入浴は1週間後からOKです。
手術後の通院について
手術後3日以内に1回目の受診をしていただき、静脈が閉塞できたかを超音波検査により確認します。
静脈瘤を切除する処置を行った方は1週間後に抜糸が必要になることもあります。
以後、1か月後・3か月後・6か月後に外来受診をしていただきます。
ストリッピング手術
逆流防止弁がダメになり、血流が滞ってしまった静脈を、特殊なワイヤーで抜いてしまう手術です。「ストリッピング手術」は病的な静脈を取り去ってしまうので、再発する確率が低く、治療効果の高い治療法です。カテーテルによる血管内焼灼術が行われる前は、この手術方法が下肢静脈瘤の一般的な手術方法でした。
小さな傷で手術を行っており、さほど目立ちませんが、多少傷跡は残ります。術後、アザが見られますが2~3週間ほどで消えていきます。
手術時間は片足あたり1時間が目安です。手術中は鎮静剤でおやすみいただきますので、不安を感じることなくリラックスして手術を受けていただけます。
手術後の日常生活について
手術当日より日常の家事をしていただいても差し支えありません。
防水絆創膏を貼りますので、手術の翌日からシャワーがOKになります。
入浴は1週間後の抜糸が済んだらOKです。
手術後の通院について
手術後は翌日・1週間後・1か月後に外来受診をしていただきます。
見た目をよくする治療
硬化療法
硬化剤というお薬を注入して、外から圧迫をすることで静脈を閉塞させる治療です。
小さな静脈瘤(青くて細いタイプ)に対して適しています。治療は15分から30分程度で終わりますが、静脈瘤が広範囲にわたる場合は複数回に分けて行うこともあります。
- メリット
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- 通常よりも細い注射針を使うので、針を刺す時の痛みが少ない
- 針を刺すだけなので、傷跡ができない
- 保険診療(1回約5000円)で治療できる
- デメリット
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- 硬化剤により静脈に炎症を起こさせるので、お薬の注入時には痛みを感じます。
- ボコボコした血管はぺったんこになりますが、硬化剤により炎症を起こさせるので、静脈の走行に沿って皮膚のシミができます。
シミがどうしても気になるという方は局所麻酔下に静脈瘤を切除する方法もあります。
皮膚レーザー照射
(自由診療となります。当院ではこの治療は行っておりません。)
赤いイトミミズのような静脈瘤に対する硬化療法は
- 注射針を刺すのは難易度が高い。
- せっかく注射針が毛細血管に刺さっても、硬化剤が血管の外に漏れやすい。
- 硬化剤が漏れると痛い。
- きれいになる部分とシミになってしまう部分が出てしまう。
などのデメリットをカバーする目的で導入したのが皮膚レーザーです。
- メリット
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- 硬化療法のデメリットであるシミができません。
- 美容的にきれいになる。
- デメリット
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- レーザー照射の際、多少の痛みは感じます(治療前に皮膚に麻酔のシールを貼ります)。
- 保険診療では認められていない治療法のため、自費での治療となります。
- 治療後の経過の過程で一時的に皮膚に赤みが出ることがありますが、その後は徐々に改善していきます。
- 別の場所に静脈瘤ができることがあります。
痛み・手術跡への配慮
下肢静脈瘤の本質は、足の静脈にある逆流防止弁がダメになり、老廃物だらけの血が心臓に向かって帰ることができず、足にたまってしまうことです。
そこで、原因となる静脈に対しては、カテーテルにより治療を行いますので、メスによる傷が残りません。切らないので痛みも小さく済みます。
治療の対象となる静脈が皮膚直下を走る方は、カテーテル治療後に静脈の走行に沿った色素沈着が見られることがあります。
長年のあいだ、原因不明のこむら返りにお悩みだった方はつらい症状が治るだけでもご満足いただくことが多いのですが、できることなら見た目もきれいな方がよいと思います。
そのような方には、静脈が皮膚直下を走っている部分だけ静脈抜去術(ストリッピング手術)を最小限の傷で行い、高周波カテーテルによる血管内焼灼術と組み合わせることで、術後の美容的な問題にも対処しています。
このように、つらい症状を改善するのみならず、見た目の改善についても考慮した治療方法をお一人おひとりに対してご提案いたします。
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