【突然死の危険】急性大動脈解離という病気の原因・症状・治療法について解説
先日お笑い芸人の笑福亭笑瓶さんが急性大動脈解離という病気によってお亡くなりになりました。
この大動脈解離という病気は心筋梗塞に続いて突然死する可能性の高い恐ろしい病気です。
そこで本日はこの急性大動脈解離について解説したいと思います。
急性大動脈解離とは
急性大動脈解離とは、大動脈という血管の壁に亀裂が生じてしまう病気です。
大動脈は、バウムクーヘンのように外膜、中膜、内膜という3層構造となっています。
大動脈はゴムホースの様に弾力があり、血圧に耐えられるだけの強度があります。
しかし、なんらかの理由により大動脈の内側にある内膜に裂け目ができてしまうことがあります。
例えば、古くなった水道管に亀裂が生じた場合、水が染み出したり破裂してしまいます。
しかし大動脈の場合は水道管とは異り、弾力のある3層構造の膜があるため、ただちに大動脈は破裂しません。
大動脈の内膜に生じた亀裂から血液が大動脈の壁の中に入り込みます。
すると、血液は内膜と外膜の中間にある中膜の中に流れ込みます。
その結果、大動脈の壁が裂けるような形になります。
このような病気を大動脈解離と言います。
大動脈解離の原因
大動脈が弾力を失い、急激な血圧の上昇に対して耐えられなくなった結果大動脈の内膜に亀裂が生じてしまうことから
ベースにあるのが動脈硬化です。
高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙・ストレス・肥満・運動不足などにより動脈は弾力を失い硬くなります。
ちょうど古くなったゴムホースの先端が硬くなってヒビ割れしてくるようなイメージです。
特に高血圧は大動脈解離を発症した患者さんに最も多く共通するポイントです。
大動脈解離の症状
突然、今までに経験したことのないレベルの激しい痛みが胸や背中に起こります。
痛みが出現する場所は大動脈の亀裂が生じた場所により異なります。
大動脈の中でも心臓に近い部位を上行大動脈といいますが、この上行大動脈に解離が生じた場合、胸の痛みを生じます。
心臓からやや離れた下行大動脈に解離が生じた場合、背中の痛みを生じます。
血流障害
更には、大動脈解離によって本来血液が流れていた空間(真腔といいます)が狭くなります。
大動脈からは様々な臓器に血液を送るために動脈が枝分かれしていますが、この枝分かれした動脈に解離が及ぶと、その動脈の先にある内臓に十分な血液が流れなくなります。
脳へ血液を届ける動脈であれば意識障害や手足の麻痺が起こります。
腸に血液を届ける動脈であれば腸に血流障害が起こり、腹痛や血便、最悪の場合腸が腐ってしまいます。
解離が心臓に近いところで起こると心筋梗塞や狭心症、あるいは大動脈弁がきちんと閉じなくなってしまい急性心不全を発症し、呼吸困難に陥ることも。
大動脈破裂による症状
大動脈に生じた亀裂が外膜にまで及ぶと水道管の破裂と同様に出血多量になります。
出血が溜まった場所が心臓を包む「心嚢(しんのう)」の場合、溜まった血液によって心臓が満員電車の様に押しつぶされて十分に拍動することができなくなります。これを心タンポナーデと言います。
急性大動脈解離はどのような経過をたどるのか?
大動脈解離は2種類に分類されます。
上行大動脈に解離が生じた場合をスタンフォードA型、下行大動脈に解離が生じた場合はスタンフォードB型と分類します。
特にスタンフォードA型の場合はとても危険です。発症から1時間経過するごとに約1%ずつ死亡率が上がると言われています。
つまり、48時間以内に約半数の方が死亡する計算になります。
死亡原因としては心タンポナーデが約70%と最多です。
スタンフォードA型の場合、一刻も早く病院に搬送し、診断、手術を行う必要があります。
急性大動脈解離の診断
造影剤というお薬を点滴した状態で行う造影CT検査によって診断されることが一般的です。
MRI検査によっても診断することは可能ですが、MRI検査は検査時間が20~30分かかるため、1分1秒を争う状況下では現実的ではありません。
急性大動脈解離の治療
スタンフォードA型の場合
基本的には緊急手術が必要です。
亀裂が入ってしまった大動脈の部分を人工血管に取り替えます。これを人工血管置換術と言います。
スタンフォードB型の場合
スタンフォードB型の場合、基本的には手術を行うことは少なく、
①鎮痛剤による痛みのコントロール
②血圧を抑えるお薬による血圧コントロール
③安静 が基本となります。
その後定期的にCT検査を行い経過観察します。
YouTube動画もご覧ください。