【下肢静脈瘤予防】妊娠したら弾性ストッキングを履こう!|目黒外科|東京都品川区・目黒駅から徒歩30秒

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2022.07.10 YouTube

【下肢静脈瘤予防】妊娠したら弾性ストッキングを履こう!

記事執筆Author

目黒外科 院長 齋藤 陽(あきら)

目黒外科 院長
齋藤 陽(あきら)

  • 日本外科学会 外科専門医
  • 脈管専門医
  • 下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術の実施基準による実施医、指導医

詳しいプロフィール

みなさんこんにちは下肢静脈瘤専門クリニック・目黒外科院長の齋藤陽です。

先日患者さんからこんなご意見を伺いました。

 

「妊娠中に足の静脈瘤が出てきたので心配でした。

出産した後も静脈瘤が残ってしまい、足のむくみやだるさが残って困っています。

出産後なので産科の先生に相談することもできないし・・・

もっと妊娠中から静脈瘤の予防のこととか教えて欲しかったです。」

下肢静脈瘤とは

下肢静脈瘤は足の静脈の異常によって

足のだるさ、むくみ、こむら返りなどの症状や、

足の静脈がボコボコ浮き出てきて、見た目が悪くなってしまう病気です。

妊娠中は下肢静脈瘤という病気を発症しやすく、

妊娠経験者の約50%が下肢静脈瘤を持っていると言われています。

 

そこで、今回の記事では妊婦さんの下肢静脈瘤予防方法について解説いたします。

 

妊娠すると体に起こる変化

妊娠すると母体には以下のような変化が起こります

  1. 母体の血液量が増える
  2. 女性ホルモンの分泌量が増える
  3. 子宮が大きくなり骨盤で静脈が圧迫される

 

1.母体の血液量が増える

妊娠すると、お母さんの体内を流れる血液の量が

およそ1.5倍に増えると言われています。

つまり、妊娠中の約9か月間は、全身の血管は血液でパンパンの状態となります。

足の静脈は体の一番下にありますので。血液が最も溜まりやすい場所です。

従って、足の静脈はたくさん水を入れた風船のような状態となります。

2.女性ホルモンの分泌量が増える

妊娠していない時は、女性の体は生理周期にしたがって女性ホルモンが分泌されます。

下肢静脈瘤の発生に関係するのは

エストロゲンとプロゲステロンという女性ホルモンです。

妊娠すると、これらの女性ホルモンの分泌量が増加します。

特にエストロゲンは100倍近く増加すると言われています。

プロゲステロンも妊娠前のおよそ15倍に増加します。

エストロゲンもプロゲステロンも血管拡張作用、

つまり静脈をやわらかくして伸びやすい状態にする作用がありますので

パンパンに膨らんだ足の静脈はさらに引き延ばされます。

 

3.子宮が大きくなり骨盤で静脈が圧迫される

妊娠後期になり赤ちゃんが大きくなってくると、

大きくなった子宮が骨盤内の静脈を圧迫します。

骨盤内で急に通り道が狭くなるので、足の静脈から流れてきた血液は流れが悪くなります。

砂時計をイメージしてみてください。

 

以上のような3つの要因が重なるわけですから、

足の静脈にとって妊娠しているおよそ9が月間という期間は

とても過酷な状況なわけです。

およそ9か月にわたりパンパンに引き伸ばされていた静脈も、

出産後には過酷な環境から解放されて、ある程度まで戻ります。

しかし、ずーっと引き延ばされていたゴムと同じで、

元のようには縮まらなくなってしまう方も中にはいらっしゃいます。

すると、足の静脈はどうなるでしょうか?

足の静脈には逆流防止弁という、

血液が重力によって下に落ちないようにするストッパーが備わっています。

ところが妊娠中に静脈が伸びっぱなしになってしまうと、

逆流防止弁も引き延ばされてしまうので、きちんと閉じなくなってしまいます。

その結果、足の静脈を流れる血液は重力に負けてしまうので

血は心臓に向かって流れることができません。下に戻ってしまいます。

その結果、血液は足の静脈の中でいつまでも留まってしまうのです。

このような状況を医学用語では、血液の渋滞という意味で「うっ滞」といいます。

動脈を流れる血液は酸素や栄養が豊富なきれいな血液ですが

静脈を流れる血液は二酸化炭素や老廃物の多い、汚れた血液です。

この汚れた血液が足の静脈にうっ滞すると、

足のだるさ、むくみ、こむら返りなどの症状や、

足の静脈がボコボコ浮き出てきて、見た目が悪くなってしまいます。

進行すると皮膚炎を起こすようになり

皮膚の黒ずみや、なかなか治らない湿疹・かゆみなども起こすようになります。

さらにひどくなると、皮膚に潰瘍ができてしまうこともあります。

これが下肢静脈瘤という病気のメカニズムです。

 

妊娠経験者のおよそ2人に1人が下肢静脈瘤になっていると言われています。

妊娠中に下肢静脈瘤が出てきて足のむくみやだるさだけでもつらいのに

足の血管が目立ってきて見た目も悪くなってくる

産婦人科の先生に相談しても特に何もアドバイスがもらえない

出産してからも静脈瘤が残ってしまったけれど

出産した後だから産婦人科に相談に行くのもおかしいし、

何科に行けばいいのかも分からないし・・・

という妊婦さんや出産後の方がたくさんいらっしゃいます。

そこで現在妊娠中の方や、妊活中の方へのアドバイスです。

 

妊婦さん必須!弾性ストッキング

弾性ストッキングという言葉を聞いたことはありますか?

着圧ソックスともいいます。

弾性ストッキングは医療用に作られたストッキングです。

靴下の形をしていますが、普通の靴下との大きな違いは履いた時の圧力です。

普通の靴下に比べると硬くて、履いた時に足に圧力がかかるように繊維が編み込まれています。

圧力は足首が一番強くて、ふくらはぎにかかる圧力のほうが弱くなっています。

この圧力の差によって、

足を下から上に向かってマッサージをしているのと同じ力が働きますので

足の静脈を流れる血液やリンパの流れが促進されます。

実際に弾性ストッキングを履いてみると、

足先からふくらはぎにかけてマッサージを受けているような感覚で

とても足が心地よく感じられます。

(写真表示)

「足は第二の心臓」と言われますが

ふくらはぎの筋肉は足の静脈を強い力で押し出してくれます。

これを足の筋肉のポンプ作用といいます。

弾性ストッキングは、この足の筋肉のポンプ作用を補助してくれるのです。

また、皮膚の外側から圧力がかかりますので、

静脈が血液でパンパンになって引き延ばされてしまうのを防ぐ効果があります。

下肢静脈瘤の予防になりますし、

出産時期になると静脈血栓症が問題になることもありますので、

両方の予防につながります。

 

弾性ストッキングの種類

弾性ストッキングには様々なタイプがあります。

1つめは、ハイソックスタイプです。

このハイソックスタイプが最もオーソドックスな弾性ストッキングです。

最も履きやすく、それでいて第2の心臓であるふくらはぎをちゃんと圧迫してくれるので、

最も多くの方にご使用いただいています。

ただし、スカートを履いた時などは、ちょっとダサく見えてしまいます。

そんな方には

ストッキングタイプをご紹介します。

これだとスカートをはいた時でもファッション性を損ねません。

更にはパンストタイプもあります。

お腹部分の締め付けが緩くなったマタニティ用のパンストもありますが、

パンストタイプになりますと、お値段も高くなりますし、その上履くのが相当大変なので

これを希望する方はあまりいらっしゃいません。

どのタイプを履けばいいの?

結論から申し上げますと、ハイソックスタイプです。

 

その理由は3つあります。

  • 「第2の心臓」と呼ばれるふくらはぎが圧迫されることがポイントです
  • そのうえで履きやすいこと
  • 価格が一番安い

ストッキングタイプは太ももからずり落ちて来やすいので、

太ももにはあまり圧力がかかりません。

パンストタイプなら太ももまでしっかりと圧力がかかりますが、とにかく履きにくいです。

 

以上、妊婦さんへ弾性ストッキングをお勧めする理由について解説しました。

下肢静脈瘤や静脈血栓を予防して、元気な赤ちゃんを産んでいただきたいと思います。

 

 

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