朝方や夜中に足がつって目が覚める方へ|こむら返りの原因とすぐできる対処法を専門医が解説
夜中や朝方に起こるこむら返りとは?原因・対処法・予防法を専門医が解説
「夜中に足がつって飛び起きた」「朝方、ふくらはぎが激痛で目が覚めた」そんな経験はありませんか?
こむら返りは単なる足のつりではなく、体からの重要なサインかもしれません。本記事では、こむら返りの原因、正しい対処法、そして予防法を、下肢静脈瘤専門医がわかりやすく解説します。
こむら返りとは?単なる足のつりではない!
こむら返りとは、筋肉が突然、意図せず収縮して激しい痛みを伴う現象です。医学的には「有痛性筋痙攣(ゆうつうせいきんけいれん)」に分類され、疲労による単なる筋肉痛とは異なります。特にふくらはぎに起こることが多く、睡眠中や朝方に突然発症することがあります。
こむら返りには、筋肉の伸びすぎを防ぐセンサー「筋紡錘(きんぼうすい)」の働きが深く関係しています。筋紡錘は、筋肉が急に引き伸ばされたときに過剰な伸展を防ぐため、筋肉に収縮を指令する仕組みです。しかし、脱水や血流不良、筋肉疲労などの状態があると、この指令が暴走しやすくなり、筋肉が必要以上に強く収縮してしまいます。これが、睡眠中や朝起きた時に突然こむら返りが起こる原因のひとつです。
なぜ夜間や朝方にこむら返りが起こるのか?
夜間、眠っている間に無意識に体をぐっと伸ばすと、筋肉が急に引き伸ばされます。このとき、筋肉の過剰な伸びを防ぐために働くセンサー「筋紡錘」が筋肉に収縮を指令します。しかし、脱水や血流不良などの影響で筋肉のコンディションが悪いと、筋紡錘が過剰に反応してしまい、筋肉が必要以上に強く収縮してしまいます。これが、寝ている間に突然起こるこむら返りのメカニズムです。
こむら返りを引き起こす主な原因
原因 | メカニズム | こむら返りが起こる理由 |
---|---|---|
水分・電解質バランスの乱れ | 汗や脱水によりナトリウム・カリウム・マグネシウムが不足し、筋肉の収縮と弛緩の調整ができなくなる | 筋肉が不安定になり、突然強く縮もうとするため |
筋肉疲労と血流不良 | 筋肉疲労や長時間の立ち仕事でふくらはぎのポンプ機能が低下し、血流が悪化。酸素と栄養供給が不足する | 疲労物質がたまり、筋肉が過緊張状態になるため |
冷え | 体温低下で筋肉が冷え、血管が収縮し血流が悪化。神経伝達も乱れ、筋肉が過敏に反応する | 冷えにより筋肉と神経のバランスが崩れるため |
病気 | 下肢静脈瘤・糖尿病・脊柱管狭窄症・動脈硬化症などで血流や神経伝達が障害され、筋肉が異常収縮を起こす | 病気による血流障害や神経障害が筋肉異常を引き起こすため |
こむら返りを起こしやすい人の特徴
立ち仕事や長時間座りっぱなしの人
ふくらはぎは「第2の心臓」と呼ばれ、血液が心臓に戻るためのポンプとして働きますが、一日中立ちっぱなしで働く人や、逆に長時間座りっぱなしのデスクワークが多い人は、ふくらはぎの筋肉が十分に動かず、血流が滞りやすくなります。
筋肉に酸素や栄養が届きにくくなり、老廃物もたまりやすくなるため、筋肉の興奮性が高まり、こむら返りが起こりやすくなります。
高齢者(筋肉量の減少・血管の柔軟性低下)
年齢とともに筋肉量(特にふくらはぎの筋肉)が減少し、血管の弾力性も低下します。
筋肉は血液を心臓に押し戻すポンプの役割を担っていますが、年齢とともに筋肉量の減少や筋力低下が起こり、その機能が弱まると、血流が悪くなりがちです。
さらに、神経伝達も加齢とともに鈍くなり、筋肉のコントロールが乱れやすくなるため、こむら返りを起こしやすくなります。
妊娠中の女性(血液量の増加やミネラル不足)
妊娠中は血漿量が通常時より30〜50%ほど増加し、体内の水分・電解質バランスが変化しやすくなります。
また、胎児の成長に伴い、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルの需要が母体側で高まるため、摂取が不十分な場合には不足しやすくなります。
これにより筋肉の収縮と弛緩のバランスが乱れ、特に夜間にこむら返りを起こしやすくなる妊婦さんが多く見られます。
こむら返りが起きたときの正しい対処法
1.ふくらはぎをやさしく伸ばす
こむら返りが起きたら、まずはふくらはぎの筋肉をやさしく伸ばしましょう。
具体的には、膝を軽く曲げたまま座り、足先を自分の方にゆっくり引き寄せます。ロダンの「考える人」のポーズが良いとされています。
急に強く伸ばそうとすると、筋肉を傷めてしまうリスクがあるため、興奮した筋肉をなだめるよう、ゆっくりと痙攣した筋肉を伸ばしましょう。痛みを我慢して無理に引っ張る必要はありません。
2.無理に立たず、座ったままストレッチ
こむら返り直後は、筋肉が極度に緊張している状態です。
痛みが治まるまでは無理に立ち上がろうとせず、座った姿勢で静かにストレッチを続けましょう。
焦って筋肉を伸ばすと、筋肉や腱を損傷する可能性があるため、落ち着いて筋肉をゆるめることが大切です。
3.温める
筋肉が冷えていると、こむら返りが長引くことがあります。
その場合は、シャワーまたはぬるま湯を使ってふくらはぎを温めましょう。
温めることで血流が改善し、筋肉が緩みやすくなるため、回復が早まります。
ただし、やけどに注意してください。
4.それでもダメなら:漢方「芍薬甘草湯」を枕元に置いて寝よう
ここまでやっても痙攣が治まらない場合は漢方「芍薬甘草湯」を枕元に置いて寝ましょう。一般的に即効性がある漢方は少ないですが、芍薬甘草湯には即効性あります。
こむら返りを予防する5つの生活習慣
1.日中のこまめな水分補給とバランスの良い食事(特にマグネシウム)
体内の水分と電解質バランスを整えることは、こむら返り予防の基本です。
日中はのどが渇く前に、こまめに水分を補給しましょう。
特に汗をかきやすい季節や運動後は、水分と一緒に電解質(ナトリウム、カリウム、マグネシウム)も失われやすくなります。
マグネシウムは筋肉の収縮と弛緩をスムーズに行うために欠かせないミネラルです。
ナッツ類、海藻類、バナナ、ほうれん草などのマグネシウムを多く含む食材を意識的に取り入れましょう。
2.お風呂上がりにふくらはぎをゆっくり伸ばすストレッチを習慣化
入浴後の温まった状態は、筋肉が柔らかくなっている絶好のタイミングです。
このときにふくらはぎをゆっくり伸ばすストレッチを行うことで、筋肉の柔軟性が向上し、夜間のこむら返りを予防しやすくなります。
ストレッチは反動をつけずに、痛みを感じない範囲でゆっくりと行いましょう。
毎晩2~3分でもよいので、習慣にすることが大切です。
3.弾性ストッキング(着圧ソックス)の着用で血流をサポート
立ち仕事や長時間座りっぱなしが多い人は、下肢の血流が滞りやすくなります。
そんなときは、医療用弾性ストッキング(着圧ソックス)を活用してふくらはぎのポンプ機能をサポートしましょう。
適度な圧力がかかることで、静脈血のうっ滞を防ぎ、筋肉に酸素と栄養が行き渡りやすくなります。
ストッキングは朝起きたらすぐに履くのが基本です。
選ぶ際は、医師推奨の圧力(20〜30mmHg程度)を目安にしましょう。
4.レッグウォーマーなどで足を冷やさない
足が冷えると、筋肉や神経の働きが鈍くなり、こむら返りが起こりやすくなります。
特に冬場や冷房の効いた環境では、レッグウォーマーや厚手の靴下を使ってふくらはぎを冷やさないように工夫しましょう。
寝るときに使う場合は、締め付けすぎないタイプを選び、血流を妨げないようにすることが大切です。
5.1時間に1回は軽く足を動かして血流を促進する
長時間同じ姿勢でいると、血液の循環が悪くなり、ふくらはぎに老廃物がたまりやすくなります。
座りっぱなしや立ちっぱなしが続く場合でも、1時間に1回は足首を回したり、かかとの上げ下げ運動をする習慣をつけましょう。
小さな動きでも血流が促進され、筋肉が適度に刺激されることで、こむら返りを予防する効果が期待できます。
繰り返すこむら返りは病気のサインかも?
血管の病気
下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)
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下肢静脈の血液逆流により、血流が滞ります。
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血液中の酸素供給が低下し、筋肉が酸素不足になりやすく、夜間や明け方のこむら返りを引き起こす原因になります。
- 下肢静脈瘤によってこむら返りが頻繁に起こる患者さんは、弾性ストッキングや手術によりこむら返りが劇的に改善します。
閉塞性動脈硬化症(へいそくせいどうみゃくこうかしょう)
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動脈が狭窄・閉塞することで、下肢への血流が不足します。
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酸素や栄養が筋肉に届かず、筋肉疲労が蓄積し、こむら返りを起こしやすくなります。
神経の病気
腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)
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加齢や椎間板の変性により脊柱管が狭くなり、神経が圧迫されます。
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足の神経伝達が乱れ、筋肉の異常収縮が起こり、こむら返りを招きやすくなります。
椎間板ヘルニア
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椎間板が飛び出して神経を圧迫することで、下肢の感覚異常や運動障害が起こります。
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神経の異常興奮により、筋肉が過剰に収縮しやすく、こむら返りが起きるリスクが高まります。
代謝の病気
糖尿病(とうにょうびょう)
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血糖コントロール不良により、末梢神経障害(しびれ、感覚異常)を引き起こします。
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神経伝達が乱れることで、筋肉の収縮・弛緩のバランスが崩れ、こむら返りが起こりやすくなります。
腎臓の病気
慢性腎臓病(まんせいじんぞうびょう)
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腎機能の低下により、血中の電解質(特にカリウム、マグネシウム)のバランスが崩れやすくなります。
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電解質異常は筋肉の興奮性を高め、こむら返りを起こす原因となります。
肝臓の病気
肝硬変(かんこうへん)
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肝機能が低下すると、体内の代謝バランスが乱れ、低アルブミン血症(血液中のたんぱく質が不足)が起こります。
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電解質異常や浮腫(むくみ)も加わり、筋肉が正常に働かず、こむら返りが生じやすくなります。
病院を受診すべき目安
こむら返りは一時的な生理現象で済むこともありますが、次のような場合は早めに医療機関を受診しましょう。
- 週に2回以上こむら返りが起きる
頻繁にこむら返りが起こる場合、単なる水分不足や疲労ではなく、血流障害や神経障害などの病気が隠れている可能性があります。 - 足に血管の浮きやむくみがある
ふくらはぎや足首に血管が浮き出ていたり、慢性的なむくみがある場合、下肢静脈瘤や血流異常が原因となっていることがあります。早期治療で症状の悪化を防ぐことができます。 - しびれや感覚異常がある
足のしびれ、ピリピリ感、感覚が鈍いなどの症状がある場合、腰椎の神経圧迫(脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニア)や糖尿病性末梢神経障害などが疑われます。神経障害が進行する前に適切な検査・治療が必要です。 - セルフケアをしても改善しない
水分補給、ストレッチ、着圧ソックスなどのセルフケアを行っても改善しない場合は、筋肉や神経、血管の異常が背景にあるかもしれません。自己判断で放置せず、専門医に相談することをおすすめします。
これらの症状に心当たりがある方は、早めに受診し、原因を特定して適切な対策を取りましょう。特に血流や神経の異常は、放置すると症状が悪化することもあります。
よくある質問(FAQ)
Q. こむら返りを一晩で何度も繰り返すのは異常ですか?
A. はい、通常のこむら返りは一晩に1回程度起こることが多いですが、何度も繰り返す場合は注意が必要です。血流障害(下肢静脈瘤や動脈硬化症)、神経障害(腰部脊柱管狭窄症、糖尿病性神経障害)、電解質異常(腎臓病など)が背景にある可能性があります。これらを放置すると症状が進行するリスクがあるため、早めに医療機関を受診し、原因を特定することをおすすめします。
Q. 睡眠中のこむら返りを防ぐために効果的な方法はありますか?
A. はい、予防には以下のような対策が有効です。
- 寝る前のふくらはぎストレッチ
筋肉をやわらかく保つことで、過剰な収縮を防ぎます。 - 十分な水分補給
日中からこまめに水分をとり、脱水状態を防ぎます。特に汗をかきやすい季節は注意が必要です。 - 電解質(ミネラル)の補給
マグネシウムやカリウムを意識的に摂取することで、筋肉の収縮と弛緩がスムーズになります。 - 足を冷やさない
就寝時にレッグウォーマーや布団を活用してふくらはぎを温かく保ちましょう。冷えは血流悪化と神経伝達異常を招きます。
これらの対策を習慣にすることで、夜間のこむら返りを予防しやすくなります。それでも改善しない場合は、一度専門医にご相談ください。
目黒外科のこむら返り診療について
目黒外科では、こむら返りの根本原因を突き止めるため、最新の超音波検査(エコー)を用いて下肢の血流や静脈の状態を詳細にチェックします。
特に、下肢静脈瘤がこむら返りの背景にあるケースでは、弾性ストッキング療法や、必要に応じてレーザーによる血管内治療を行い、症状の根本改善を目指します。
また、こむら返りが頻繁に起こる患者さんには、生活習慣(ストレッチ、食事、冷え対策)への具体的なアドバイスを行い、再発予防にも力を入れています。
「夜中に何度も足がつって眠れない」「足の血管が浮き出ている」「ふくらはぎがだるい、重い」といった症状が気になる方は、お気軽にご相談ください。初診時から専門医が丁寧に診察・検査・治療計画を行います。
まとめ
こむら返りは一時的なものに思われがちですが、繰り返す場合は病気のサインであることも少なくありません。適切な予防と対処を続けることはもちろん、気になる症状がある場合は、早めに専門医に相談することが大切です。
ふくらはぎの違和感、血管の浮き、むくみ、夜間の足の痛みなどでお悩みの方は、ぜひ下肢静脈瘤治療において国内最多実績を誇る目黒外科へご相談ください。専門医があなたの症状に寄り添い、最適な治療をご提案します。
この記事を書いた人
齋藤 陽 医師(目黒外科 院長)
下肢静脈瘤治療専門医。レーザーカテーテル治療国内最多実績。28年以上にわたり下肢静脈瘤診療に従事。著書『専門医が教える世界一わかりやすい下肢静脈瘤の治療と予防』。
目黒外科のご紹介
目黒外科(東京都品川区上大崎2-15-18 目黒東豊ビル6階)は、下肢静脈瘤治療を専門とするクリニックです。
院長は下肢静脈瘤治療ひとすじ28年の専門医で、レーザーカテーテルによる血管内焼灼術は2020年以降5年連続で国内最多の手術件数を誇ります。全国各地はもとより、海外からも手術希望の患者さんが訪れています。
日曜診療もやっています。平日はお仕事で受診するのが難しい方におすすめです。
完全予約制でお待たせしません。診療時間も十分に取っています。専門医が診察から検査、説明、手術まで一貫して行います。
こむら返りが気になる方は、お気軽に目黒駅東口目の前にある目黒外科までご相談ください。
電話番号:03-5420-8080
院長著書のご紹介
目黒外科 院長・齋藤 陽は、下肢静脈瘤に関する本も執筆しています。
📝『専門医が教える世界一わかりやすい“下肢静脈瘤”の治療と予防』(医学通信社)
本書は、下肢静脈瘤の診断から治療まで、下肢静脈瘤に関する知識をわかりやすくまとめた一冊です。下肢静脈瘤に対する理解を深めたい方におすすめです。