【医師監修】足の湿疹・かゆみが治らない?皮膚科で改善しない原因は「うっ滞性皮膚炎」かもしれません|目黒外科
足の湿疹・かゆみが治らない…それは「うっ滞性皮膚炎」かもしれません
「皮膚科で長く治療しているのに、足の湿疹やかゆみが治らない…」そんなお悩みはありませんか?
実は、足の血流障害が原因で起こる「うっ滞性皮膚炎」という病気が潜んでいる可能性があります。
半年以上皮膚科に通っても治らない方へ
足に出る湿疹やかゆみは、単なる皮膚炎とは限りません。下肢静脈瘤に伴って発症する「うっ滞性皮膚炎」は、皮膚の表面ではなく、静脈の流れの問題が根本原因です。
以下のような症状がある方は、血管の病気を疑ってみましょう。
- かゆみが膝下に集中している
- 湿疹がすね・足首に多く出ている
- 皮膚が茶色っぽく変色している
うっ滞性皮膚炎と下肢静脈瘤の関係
🩸 下肢静脈瘤とは?
下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)とは、足の静脈にある逆流防止弁(静脈弁)が壊れたり、ゆるんだりして、血液が本来の方向とは逆に下へ逆流してしまう病気です。
本来、足の静脈は、重力に逆らって血液を心臓へ押し戻すために、一定の間隔で逆流防止弁がついています。これらの弁が正常に働いていると、血液は一方向に流れます。
しかし長年の立ち仕事や妊娠・出産、遺伝的な体質などの影響で、この弁が壊れると、血液が足に逆流して溜まりやすくなり、静脈が拡張して浮き出てくるようになります。
この状態が「静脈瘤」です。
症状が軽いうちは「見た目の変化」だけのこともありますが、進行すると血流がうっ滞して足のだるさ・むくみ・かゆみ・皮膚の変色や湿疹といった合併症が起こることもあります。
血液が滞ることで皮膚の毛細血管から酸素や栄養が十分に届けられなくなり皮膚の再生力やバリア機能が著しく低下します。
この状態が続くと、皮膚が乾燥してかゆみを感じやすくなり、さらに湿疹や赤みなどの炎症が繰り返し起こるようになります。
また、血液中の老廃物や赤血球成分が周囲の組織に染み出すことで、茶褐色〜黒褐色の「色素沈着」が生じ、すねや足首周辺の皮膚が硬くなっていきます。
これらの皮膚症状は、単なる皮膚の病気ではなく、足の深部で血液がうまく流れていないサインであることも少なくありません。
見た目の変化だけでなく、皮膚のかゆみや違和感が続く場合は、早めの専門的評価が必要です。
かゆみが続くとどうなる?
かゆみが強く続くと、我慢できずに無意識に皮膚を掻いてしまうことがあります。これにより皮膚表面が傷つき、炎症が悪化します。
本来であれば、小さな引っかき傷は自然に治癒しますが、うっ滞性皮膚炎では皮膚の血流が悪く、酸素や栄養が届きにくいため、傷の治りが極端に遅くなります。
さらに、皮膚のバリア機能が壊れたままになると、外部からの刺激や雑菌に対して無防備になり、慢性的な湿疹やジュクジュクした状態が続くことになります。
このような悪循環が続くと、皮膚が深部から壊れてしまい、やがて潰瘍(皮膚の深い崩れ)へと進行してしまうケースもあります。
潰瘍は治療にも時間がかかるため、早期の予防と対応が非常に重要です。
うっ滞性皮膚炎を疑うべきサイン
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- 皮膚科での治療が半年以上続いている:
ステロイド外用薬や保湿剤を使っても症状が良くならない場合、皮膚そのものではなく血流障害が原因となっている可能性があります。長期化している時点で、一度皮膚以外の原因を検討すべきタイミングです。 - 市販薬で改善しない湿疹:
抗炎症成分の入った塗り薬やかゆみ止めを使っても変化がない場合、肌の表面の炎症ではなく、皮膚の深部に血液がうっ滞している可能性があります。特に、くり返す湿疹や慢性的なかゆみには要注意です。 - 足がだるい・むくむ・こむら返りがある:
下肢静脈瘤の典型的な症状です。これらの症状が皮膚トラブルと同時に出ている場合は、血液が逆流し足に滞っているサインと考えられます。朝より夕方に悪化する、長時間の立ち仕事後に強く感じるといった傾向がある方は、専門医の診察をおすすめします。
- 皮膚科での治療が半年以上続いている:
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対策と治療法
💡 うっ滞性皮膚炎の治療は「静脈の逆流」へのアプローチが鍵
うっ滞性皮膚炎は、単なる皮膚のトラブルではなく下肢の静脈に血液が逆流して滞ることが原因で生じる疾患です。
そのため、根本的な治療には血流の異常を正す必要があります。
具体的な治療方法は以下の通りです:
- 弾性ストッキング(着圧ソックス)による圧迫療法:
足を外側から圧迫することで、血液の流れを助け、静脈のうっ滞を軽減します。初期段階や術後のケアとしても効果的で、日常生活に取り入れやすい治療です。 - 血管内焼灼術(レーザー治療):
静脈内にカテーテルを挿入し、熱エネルギーで逆流の原因となる血管を閉塞する低侵襲治療です。傷跡がほとんど残らず、日帰り手術が可能で、再発リスクも低減できます。特にうっ滞性皮膚炎を起こしている方は皮膚切開を伴う手術を行うと、術後の傷の治りが悪くなる恐れがあるため、皮膚切開を行わないレーザーカテーテルによる血管内焼灼術は治療の第一選択と考えます。 - 皮膚炎に対する外用薬の併用:
湿疹やかゆみなどの皮膚症状に対しては、ステロイド軟膏や保湿剤などを使用し、皮膚の炎症やバリア機能の低下を抑えることが大切です。
症状の程度や患者さんの生活背景に応じて、複数の治療法を組み合わせることもあります。
そのため、下肢静脈瘤や皮膚症状に詳しい専門医による正確な診断と治療方針の決定が不可欠です。
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何科を受診すればいい?
🏥 どこを受診すればよいか迷ったら
うっ滞性皮膚炎や下肢静脈瘤が疑われる場合は、「血管外科」または「心臓血管外科」のある医療機関、もしくは下肢静脈瘤を専門に診ているクリニックの受診をおすすめします。
特に以下のような方は、皮膚症状だけでなく血流の異常が隠れている可能性があるため、皮膚科だけでなく血管の専門医に相談することが大切です:
- 湿疹やかゆみが半年以上続いている
- 足に茶色い色素沈着やむくみがある
- 見た目の変化だけでなく、だるさ・重さ・こむら返りもある
皮膚の病気と思っていた症状が、実は「静脈の逆流」が原因だったというケースは少なくありません。
早期に正しい診断を受けることで、悪化や皮膚潰瘍などの合併症を防ぐことができます。
「年齢のせい」「乾燥肌だから」と思い込まず、気になる症状がある方は、ぜひ早めに専門医にご相談ください。
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当院・目黒外科は、下肢静脈瘤のレーザー手術件数 日本最多(2020年~5年連続)の実績を持つ専門クリニックです。
うっ滞性皮膚炎をはじめ、血流が関係する皮膚トラブルに対しても、診察・検査・治療を一貫してご提供しています。
院長著書のご紹介
目黒外科 院長 齋藤陽の著書『専門医が教える 世界一わかりやすい“下肢静脈瘤”の治療と予防』(医学通信社)では、病気の仕組みや対策をやさしく解説しています。