下肢静脈瘤が原因?足の皮膚が黒ずんで硬くなる「皮膚脂肪硬化」とは?
下肢静脈瘤が原因で皮膚が硬くなる?皮膚脂肪硬化のメカニズムを解説
「足の皮膚がゴワゴワして硬い」「色が茶色っぽく変わってきた」「足の皮膚がジンジンして痛い」——そんな症状はありませんか?
もしかするとそれは、皮膚脂肪硬化(ひふしぼうこうか)という状態かもしれません。
この症状は、下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)が進行することで起こることがあります。
今回は、皮膚脂肪硬化がどうやって起こるのか、そのメカニズムをわかりやすくご紹介します。
【皮膚脂肪硬化とは?】
皮膚脂肪硬化とは、下肢静脈瘤の進行によって起こる皮膚と皮下脂肪の「線維化」(硬くなること)です。足の内側くるぶし付近に多く見られ、皮膚が茶色く変色したり、硬くなったり、ゴワゴワした触感になるのが特徴です。
これは見た目の問題だけでなく、放置すると皮膚潰瘍(ただれや傷)に発展するリスクが高いため、早めの対処が必要です。
【静脈の圧力が上がることで何が起こる?】
下肢静脈瘤は、足の表面にある静脈が膨らんでコブのようになる病気です。
この病気が進むと、静脈の中の圧力(静脈圧)が高くなり続けます。
すると、皮膚の奥にある毛細血管に負担がかかり、血液成分や炎症細胞が漏れ出てしまいます。
その結果、皮膚の中に「フィブリン」というたんぱく質がたまり、皮膚への酸素の供給が妨げられるのです。
酸素が届かないと、皮膚の細胞がうまく働けず、組織の修復もうまくいかなくなります。
また、毛細血管から漏れ出た赤血球は崩壊してヘモジデリン(含鉄色素)として皮膚内に沈着し、茶褐色の色素沈着となります。この鉄過剰状態が炎症を更に悪化させて線維化の一因となるのです。
【線維化が進んで皮膚が硬くなる】
酸素不足が続くと、身体はその部分を修復しようとします。
すると、線維芽細胞(せんいがさいぼう)という細胞が活発になり、コラーゲンという硬い成分をたくさん作り出します。
この状態が長く続くと、皮膚の内側でコラーゲンが過剰に蓄積し、皮膚や脂肪が厚くなり、硬くなってしまうのです。
これが「皮膚脂肪硬化」と呼ばれる状態です。
皮膚をつまんでもシワができず、まるで皮膚が夏ミカンやグレープフルーツの皮のように硬くなります。
【炎症がさらに悪化させる負のループ】
慢性的な炎症が続くと、さらに問題は深刻になります。
体内の免疫細胞が集まってくると、サイトカインや増殖因子という物質を出して、さらに線維化を進めてしまいます。
特に「TGF-β(トランスフォーミング増殖因子ベータ)」という因子は、線維化を強力に進めることで知られています。
こうして、皮膚はますます硬くなり、最終的には皮膚潰瘍(皮膚がただれて穴が開く)へと進行してしまうこともあるのです。
これらのメカニズムに関する詳細な解説は、以下の論文を参考にしました。
- Kirsner, R. S., Pardes, J. B., Eaglstein, W. H., & Falanga, V. (1993). The clinical spectrum of lipodermatosclerosis. Journal of the American Academy of Dermatology, 28(4), 623–627.
- Burnand, K. G., Whimster, I., Naidoo, A., Browse, N. L., & Simpson, C. N. (1982). Pericapillary fibrin and venous ulceration. British Medical Journal, 285(6334), 1071–1072.
【皮膚脂肪硬化が発生した場合の対処方法】
1. 原因である「下肢静脈瘤」の治療を最優先にする
皮膚脂肪硬化は、静脈の逆流(うっ滞)による慢性的な炎症と酸素不足が原因です。そのため、根本治療は「静脈うっ滞の改善」です。
▶ 推奨される治療方法:
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血管内焼灼術(カテーテル治療):細いカテーテルで静脈を内側から焼灼し、逆流を止めます。レーザーカテーテルや高周波カテーテルが用いられます。
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血管内塞栓術(グルー治療):静脈内に特殊な接着剤を注入し、逆流を止めます。
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ストリッピング手術:古典的な静脈抜去術です。皮膚脂肪硬化している部位に皮膚切開を伴う事があり、手術後の傷の治りが悪くなることがあります。最近ではあまり行われなくなった手術方法です。
これらの治療により、静脈圧が下がり、皮膚へのダメージの進行が止まります。
関連記事【どの治療がベスト?下肢静脈瘤の治療法を徹底比較!レーザー vs 高周波 vs グルー vs ストリッピング】を読む
2. 圧迫療法(着圧ストッキング)で静脈圧をコントロール
皮膚脂肪硬化のある方には、医療用着圧ストッキングの着用が効果的です。日中に着用することで、血液の逆流を抑え、皮膚や組織の負担を軽くすることができます。
着用のポイント
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朝起きてすぐに着用する:寝るときと入浴時以外はできるだけ着用します
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ハイソックスタイプでOK:ふくらはぎの圧迫により足の静脈にたまった血液が流れやすくなります
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医師の指示のもと、自分に合った圧力とサイズを選ぶ
3. 皮膚のケアと保湿を怠らない
皮膚脂肪硬化では、皮膚が乾燥しやすく、炎症を起こしやすい状態です。保湿を徹底することで、かゆみや湿疹、皮膚のひび割れを防ぐことができます。
ケア方法:
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毎日お風呂上がりに保湿剤(ヘパリン類似物質など)を塗布
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刺激の少ない石けんを使う
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掻きむしりを避ける(かゆみ止めの外用薬を使う場合もあり)
4. 炎症や色素沈着が強い場合は皮膚科との連携治療
皮膚が赤くなっていたり、ジュクジュクしている、かさぶたができているなどの症状がある場合は、皮膚科と連携して、ステロイドや亜鉛華軟膏などの外用薬を使用します。
5. 重症例では潰瘍管理が必要に
皮膚脂肪硬化が進行すると、皮膚潰瘍(静脈潰瘍)が発生することがあります。この場合、医師の管理下で以下のような対応を行います。
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傷口の洗浄と専用の被覆材(ドレッシング)による治療
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感染予防のための抗生物質の使用
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創傷ケア専門ナースや医師による定期的な診察
【皮膚脂肪硬化は元に戻らないことが多い】
一度硬化した皮膚や脂肪は、完全に元の状態に戻すのは非常に難しいのが現実です。
しかし、進行を食い止め、潰瘍などの合併症を予防することは十分に可能です。そのためにも、早期発見・早期治療が最も重要です。
【目黒外科のご紹介】
東京都品川区にある目黒外科では、下肢静脈瘤を専門的に診療しています。
「切らない・縫わない・痛くない」レーザー治療を中心に、年間1,000件以上の治療実績があります。
日曜診療にも対応しており、忙しい方でも通いやすいのが特徴です。
完全予約制により待ち時間がなく、診察時間も確保できます。
皮膚の硬さや色の変化にお悩みの方は、ぜひ一度、目黒外科へご相談ください。