【専門医が解説】下肢静脈瘤に効果的な硬化療法とは?治療の流れ・副作用・適応症を徹底解説 | 目黒外科

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2017.12.11 下肢静脈瘤の治療方法

【専門医が解説】下肢静脈瘤に効果的な硬化療法とは?治療の流れ・副作用・適応症を徹底解説

記事執筆Author

目黒外科 院長 齋藤 陽(あきら)

目黒外科 院長
齋藤 陽(あきら)

  • 日本外科学会 外科専門医
  • 脈管専門医
  • 下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術の実施基準による実施医、指導医

詳しいプロフィール


【医師監修】下肢静脈瘤の治療法比較|フォーム硬化療法・レーザー治療・グルー治療の違いと適応を解説







注射だけで治る?下肢静脈瘤の硬化療法|効果・副作用・注意点まとめ

「注射だけで静脈瘤が治る」と聞くと不思議に思われる方も多いかもしれません。下肢静脈瘤の治療法の一つである硬化療法は、軽度の症例や再発静脈瘤、陰部静脈瘤などに特に有効です。本記事では、専門クリニックで行われている最新のフォーム硬化療法を中心に、その方法や効果、副作用、注意点までをわかりやすく解説します。

この記事のポイント

  • 泡状の硬化剤を注射し、静脈を閉塞させる治療法
  • クモの巣状・網目状静脈瘤や再発静脈瘤に特に有効
  • 副作用にはしこりや色素沈着などがあるが、大半は一時的
  • 妊娠中や血栓症の既往がある方は適応外

フォーム硬化療法とは?

硬化療法とは、静脈瘤の内部に「硬化剤」と呼ばれる薬剤を注射し、意図的に軽い化学的炎症を引き起こすことで血管の内壁を癒着させ、最終的に静脈を閉塞させる治療法です。この方法により、血液が流れなくなった静脈瘤は徐々に体内に吸収されて消えていきます。

硬化療法のやり方で主流となっているのが「フォーム硬化療法(Foam Sclerotherapy)」です。これは、硬化剤を空気と混ぜて泡状(フォーム状)にし、より広範囲に、かつ効率よく静脈の内壁に作用させるための技術です。泡にすることで薬剤が静脈内に長くとどまりやすく、薬剤の使用量も減らすことができるという利点があります。

フォーム硬化療法に使用される注射器と薬剤
フォーム硬化療法で使用する注射器と薬剤

フォーム化するメリット

空気と混ぜることで薬剤の量が少なくて済む
 フォーム硬化療法では、硬化剤に空気を混ぜることで、泡状の薬剤が通常の液体の数倍の体積になります。これにより、少量の薬剤で広い範囲の静脈に治療効果を発揮できるため、薬剤使用量を抑えられ、体への負担も軽減されます。

泡が血管内で広がりやすく、より効果的に作用
 泡状にした硬化剤は、液体の硬化剤と比べて静脈の内壁にしっかりと接触しやすく、長く留まるため、炎症を効率よく起こして確実に血管を閉塞させることができます。これにより、より確実な治療効果が得られやすくなります。

少ない注射回数で広範囲をカバーできる
 泡が血管内で広がる特性により、1か所あたりの注射で比較的広範囲の静脈瘤に作用させることが可能です。これにより、患者さんの痛みや負担を最小限に抑えながら、効率よく治療を進めることができます。

血栓性静脈炎のリスクが低い
 従来の液体硬化療法に比べて、泡は血流に押し流されにくく、静脈壁にとどまってじっくり作用するため、薬剤が不必要に他の血管に流れ込むリスクが少なくなります。その結果、血栓性静脈炎(治療部位周辺の炎症)の発症リスクも低下するとされています。

適応症例

フォーム硬化療法は、以下のような比較的細く浅い静脈瘤に対して特に効果を発揮します:

  • クモの巣状静脈瘤
     皮膚の表面に赤紫色や青色で細かく広がる毛細血管の集まりで、見た目の悩みで来院される女性に多く見られます。
     → フォーム硬化療法なら、細い血管にも均一に薬剤が行き渡りやすく、目立つ血管の改善が期待できます。

  • 網目状静脈瘤
     網目状に広がるやや太めの表在静脈で、皮膚の下に青っぽく見える血管です。
     → 泡状にした硬化剤がよく絡みつくため、効果的に閉塞させることが可能です。

  • 再発した静脈瘤(術後再発)
     過去に手術や硬化療法を受けたにもかかわらず再出現した静脈瘤です。
     → 複雑な血流路や瘢痕組織に対しても泡がよく届くため、再発例にも有効です。

  • 陰部静脈瘤(外陰部・会陰部)
     妊娠中や出産後に発症しやすく、デリケートな部位にある静脈瘤です。
     → 切開を伴わず注射のみで治療できるため、身体的・心理的負担を軽減できます。

  • あまり太くない側枝型静脈瘤
     伏在静脈から分岐した枝のうち、直径3〜4mm前後の中等度の静脈瘤に該当します。
     → カテーテル焼灼では難しい位置にも対応でき、治療の幅を広げる選択肢となります。

特に「再発静脈瘤」や「陰部静脈瘤」は、フォーム硬化療法による治療効果が非常に高いとされており、従来の治療で満足できなかった方にもおすすめできる選択肢です。治療範囲が限定的な場合や美容面を重視したい患者さんにとって、身体への負担が少ない点も大きなメリットとなります。

フォーム硬化療法の流れ

  1. 細い注射針で静脈瘤に硬化剤を注入
  2. 患部にガーゼを当てて圧迫
  3. その上から弾性ストッキングを装着

圧迫期間:最初の24時間は弾性包帯と弾性ストッキングの両方で圧迫、その後は日中のみ1か月着用。

注入後の静脈は炎症を起こしてしこりのように硬くなりますが、半年ほどで少しずつ吸収されていきます。

フォーム硬化療法の実際の様子を動画で解説|治療の流れや注意点をわかりやすくご紹介

実際の治療の様子については、専門医によるフォーム硬化療法の手技を収録した解説動画をご用意しております。
治療の流れや使用する器具、注射の方法、術後の圧迫処置の様子まで、わかりやすくご紹介しています。

「どんな治療なのか不安…」「痛みはあるの?」「どれくらい時間がかかるの?」といった疑問をお持ちの方は、ぜひご覧ください。
動画で視覚的に理解することで、治療に対する不安を軽減し、安心して受診いただけます。

副作用・リスクについて

しこり・痛み

硬化療法では、注入された硬化剤によって静脈の中に血栓(血のかたまり)が形成され、注射部位にしこりや鈍い痛みを感じることがあります。
このしこりは、硬化剤による化学的な刺激で血管が閉塞し、内部で血栓が組織化されていく過程で一時的に現れるもので、炎症の一環として体の自然な反応です。

しこりは押すと硬く感じられたり、違和感を伴う場合もありますが、特別な治療は必要なく、通常は6か月以内に体内で徐々に吸収され、自然に消えていきます。
ただし、まれに長期間残るケースや、しこりが色素沈着とともに見た目に影響することもあるため、気になる場合は経過観察のうえで医師にご相談ください。

色素沈着

硬化療法の後、静脈瘤に沿って茶色い色素が皮膚に沈着することがあります。
皮膚の表面近くにある静脈や細かい血管が多い部位では、色素沈着が目立ちやすくなります。色は数ヶ月〜1年程度かけて徐々に薄くなっていきますが、体質や炎症の程度によっては長期間残ることもあります。

また、色素沈着を助長しないように紫外線対策を行うこと、必要に応じて医師に相談してスキンケアを取り入れることも重要です。

硬化療法が受けられないケース

硬化療法を受けられない方(禁忌)

以下の条件に該当する方は、硬化療法によって重篤な合併症のリスクが高まる可能性があるため、原則として適応外となります。事前の問診票だけでなく、診察時にも必ず医師へお申し出ください。

  • 経口避妊薬(ピル)を服用中の方:
    ピルには血液を固まりやすくする作用があり、硬化療法と併用することで深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓症のリスクが高まります。
  • ステロイド治療中の方:
    ステロイド薬は免疫反応や炎症を抑えるため、注射部位の治癒遅延や感染リスクが懸念されます。
  • エビスタなどホルモン系薬剤を服用中の方:
    骨粗しょう症の治療などで使用されるホルモン製剤も、血栓症リスクを増加させる可能性があります。
  • 深部静脈血栓症の既往がある方:
    すでに血栓ができやすい体質である可能性があるため、硬化療法によるさらなる血栓形成の危険性があります。
  • 動脈性血行障害のある方:
    末梢の動脈血流が障害されている場合、炎症や注射によって局所の壊死リスクが高まる可能性があります。
  • 歩行困難な方:
    硬化療法後の血栓予防には歩行が重要です。動くことができない方では静脈うっ滞が進行し、合併症リスクが上がります。
  • 妊娠中の方:
    ホルモンバランスが変化しており、血栓ができやすい状態であることから、妊娠中の硬化療法はできません。
  • ベーチェット病の方:
    自己免疫性疾患のひとつであり、血管炎を伴うため、注射や炎症により病状が悪化する可能性があります。
  • 気管支喘息をお持ちの方:
    まれに硬化剤の成分が喘息発作を誘発することがあるため、注意が必要です。

安全に治療を受けていただくためにも、現在使用しているお薬や既往歴は必ず正確に医師にお伝えください。

【関連記事】下肢静脈瘤の治療の際に注意が必要な薬

他の治療法との比較

下肢静脈瘤の治療には、逆流の部位や血管の太さ、症状の程度に応じて、複数の治療法が使い分けられます。それぞれの治療法には適応があり、効果を最大限に引き出すためには、症状に合った適切な選択が重要です。

      • 血管内焼灼術(レーザー・高周波)
        足の太い静脈(大伏在静脈や小伏在静脈)に血液の逆流が生じている場合に行う標準的な治療法です。
        カテーテルを使って静脈内にレーザーまたは高周波を照射し、熱で静脈を閉塞します。
        日帰り手術が可能で、再発率も低く、高い治療効果が期待できます。
      • 血管内塞栓術(グルー治療)
        カテーテルから医療用の接着剤(シアノアクリレート)を静脈内に注入して、物理的に血管を閉塞させる方法です。
        焼灼術に比べて熱を使わないため、術後の痛みや皮膚トラブルのリスクが低いのが特徴です。
        局所麻酔の使用量も少なく、皮膚に触れる必要のない部位(大腿の上部など)にも安全に対応できます。
      • フォーム硬化療法
        硬化剤を泡状(フォーム)にして静脈瘤に注入し、血管内に化学的な炎症を起こすことで静脈を閉塞させる方法です。
        再発静脈瘤や陰部静脈瘤、クモの巣状・網目状静脈瘤など、レーザー治療やグルー治療の適応外となる中小の血管に特に有効です。
        注射のみで治療が完結するため、身体への負担が少なく、美容目的でもよく用いられます。

いずれの治療法も、静脈エコー検査で逆流の有無や血管の状態を正確に把握したうえで、個々の症例に応じて最適な選択を行うことが大切です。
【関連記事】下肢静脈瘤の手術方法|レーザー治療・グルー治療・硬化療法の違いとは?

まとめ

フォーム硬化療法は、比較的軽症の静脈瘤に対して、傷を作らず日帰りで行える安全性の高い治療法です。副作用も軽微で、一時的なものが多く、しっかりとした圧迫管理や経過観察により自然に改善することがほとんどです。

治療の適応や他の選択肢については、専門医による静脈エコー検査を受けて判断することが重要です。

この記事は下肢静脈瘤専門クリニック『目黒外科』院長 齋藤陽 医師の監修のもと作成されました。

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