Medical下肢静脈瘤のすべて

2020.06.07

ピルと静脈血栓症

記事執筆Author

目黒外科 院長 齋藤 陽(あきら)

目黒外科 院長
齋藤 陽(あきら)

  • 日本外科学会 外科専門医
  • 脈管専門医
  • 下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術の実施基準による実施医、指導医

詳しいプロフィール

みなさんこんにちは!

目黒外科院長の齋藤です。

今回のテーマは「ピルと静脈血栓症」というテーマでお話します。

ピルは避妊目的や生理不順や月経困難などを改善する目的で使用されるホルモン剤で

主に10代から40代の女性が使用しています。

ピルには静脈血栓症、つまり静脈の中で血液の塊ができてしまう副作用が知られています

アメリカ産婦人科学会やFDAによれば、

低用量ピルを服用していない女性が静脈血栓症を発症するリスクは

年間1万人あたり15人であるのに対し、

低用量ピルを服用している女性では年間1万人あたり39人と報告されています

その一方で

妊娠中および分娩後12週までの経産婦さんの静脈血栓症の発症頻度は

それぞれ年間1万人あたり520 人および4065人と報告されており、

妊婦さんや分娩後の経産婦さんに比べると、

低用量ピルを服用することによる静脈血栓症の発症頻度はかなり低いことがわかります。

 

また、仮に静脈血栓症になっても早期に適切な治療を行えば血栓は消失させることができます。

低用量ピル使用中の死亡率は10万人あたり1人以下と報告されており、

これは転落事故や溺死、中毒死、家庭内暴力など稀な原因による死亡率と同程度といわれていますので、

妊娠に関する死亡リスクよりはるかに低いわけです。

 

ただし、リスクはゼロではありませんので、低用量ピルを服用する際は

常に副作用について注意を払う必要があります

 

そこで低用量ピルを服用する際に注意する静脈血栓症の発症リスクを3点申し上げます

リスク要因その1 肥満

肥満は静脈血栓症の発症リスクを高めます。

そのため、肥満の方が低用量ピルを使用することは

静脈血栓症の発症リスクがさらに上昇させることがわかっています。

具体的にはBMI 20から24.9の女性が低用量ピルを服用した際

起こり得る静脈血栓症の発症リスクを1とした場合、

BMI25から29.9の女性が低用量ピルを服用すると、

静脈血栓症の発症リスクは2.4 倍となります。

BMI30以上になるとリスクが5.5 倍になります。

BMI25以上の方は低用量ピルを使用する場合はダイエットが必要です。

ご自分のBMIがいくつなのかを知りたい方は、

インターネットで「BMI 計算」と検索してみてください。

身長と体重を入力すればBMIが簡単に計算できますよ。

 

リスク要因その2 年齢

年齢が上がるにつれて低用量ピル服用に伴う静脈血栓症の発症リスクは高くなっていきます。

15歳から~19歳の女性が低用量ピルを使用した際の静脈血栓症を発症するリスクを1とした場合。

このグラフのとおり

年齢とともに低用量ピルによる静脈血栓症の発症リスクは上がっていきます。

閉経が近い女性は低用量ピルを使用していると毎月月経が来ますので

いつ閉経になったかがわからなくなります。

そこで漫然と低用量ピルを使用し続けていると静脈血栓症の発症リスクを高めますので

閉経が近い年齢の方は低用量ピルの使用については慎重になるべきだと思います。

 

リスク要因その3 タバコ

最後は最大のリスク要因、タバコです。

タバコを吸う人はそれだけで静脈血栓症のリスクが倍増することが知られていますので

低用量ピル使用する方はこの機会に禁煙されることをお勧めします。

なお、35歳以上でタバコを115本以上吸う人は低用量ピルを服用することはできません

 

静脈血栓を疑う症状

静脈血栓症の発症リスクは低用量ピル服用開始後3ヶ月以内が最も多いと言われています。

そこで、これから注意すべき症状を挙げていきます。

・激しい腹痛

・激しい胸の痛み

・息苦しい

・胸が押しつぶされるような痛み

・激しい頭痛

・視野で見えにくい部分がある

・視野が狭くなる

・ろれつが回らない

・失神

・けいれん

・意識障害

・ふくらはぎの痛み

・片足が急に腫れる

・ふくらはぎを握ると痛い

以上のような症状が出現した場合はすぐに医療機関を受診してください。

以上、ピルと静脈血栓症の関係について解説しました。

 

副作用のないお薬はありませんが副作用について正しく理解しておけば

必要以上に恐れることなく安全にお薬を使用することができます。

 

この記事を動画にしました。ので、よろしければご覧ください。

 

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