慢性静脈不全症 | 目黒外科

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2017.12.14 下肢静脈瘤の基礎知識

慢性静脈不全症

記事執筆Author

目黒外科 院長 齋藤 陽(あきら)

目黒外科 院長
齋藤 陽(あきら)

  • 日本外科学会 外科専門医
  • 脈管専門医
  • 下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術の実施基準による実施医、指導医

詳しいプロフィール

慢性静脈不全とは、足を流れる静脈の血流が悪くなり、血液が心臓へ戻りにくくなる病気です。以下の4つに分類されます。

A.静脈の閉塞
B.静脈の逆流
C.AとBの両方
D.不明

A.静脈の閉塞

静脈閉塞の代表的な病気は深部静脈血栓症です。深部静脈は足の筋肉の中にあるため、体の深いところを走ります。

足を流れる血液の約90%は深部静脈を流れます。

この深部静脈に血栓(血のかたまり)ができて閉塞すると、幹線道路の通行止めと同じ状況になります。足に大量の血液が溜まるため、急に足が腫れてきます。

深部静脈をふさいでいる血栓が肺に飛んで肺塞栓症をおこすと胸痛、呼吸困難、吐血、時に心肺停止となることがあり、その予防も非常に重要となります。

治療方法は①血栓が大きくならないよう血液を固まりにくくする薬(抗凝固療法)と②すでにできた血栓を溶かす薬(血栓溶解療法)を投与します。

足を弾性包帯または弾性ストッキングにより圧迫し、渋滞している血液を押し上げて血液が滞らないようにします。

B.静脈の逆流

代表的な病気は下肢静脈瘤です。

下肢静脈瘤は、表在静脈と呼ばれる大(小)伏在静脈や、そこから枝分かれした静脈の逆流防止弁がきちんと閉じなくなり、血液が重力によって逆戻りしてしまう病気です。血液中の老廃物が足に溜まり、様々な症状がでてきます。

主な症状は、足の重さ・だるさ、むくみ、足の腫れ、こむら返り、足の血管が浮き出てくるなど。進行して皮膚炎をおこすと湿疹・かゆみ、皮膚の色素沈着が生じ、ひどくなると皮膚が潰瘍になりえぐれてしまうこともあります。

自覚症状があり、超音波検査で静脈の逆流があれば弾性ストッキングによる圧迫療法か手術により症状の改善が見込めます。

手術方法はレーザーまたは高周波カテーテルによる血管内焼灼術が主流です。

C.静脈の閉塞と逆流

深部静脈血栓症がおきてから数か月経過すると、お薬の作用や体に備わる血液を溶かす機能(線溶系といいます)により深部静脈の血栓が少しずつ溶けてきます。

深部静脈に血流が徐々に再開するようになっても、こびりついた血栓により深部静脈の弁が正しく閉じなくなり、血液が逆流するようになってしまうのです。

足を流れる血液の約90%が深部静脈を流れるため、深部静脈の逆流が起きると血液の大渋滞がおこります。

すると慢性的な足のむくみが続きます。これを深部静脈血栓後症候群といいます。

治療は弾性ストッキングによる圧迫療法が必要です。

とても治りにくい病気なので、長期間にわたり弾性ストッキングが必要となります。

弾性ストッキングを履いたり履かなかったり、圧迫療法が中途半端になると足のむくみがひどくなるだけでなく、うっ滞性皮膚炎となり皮膚の色素沈着、皮膚が硬くなる、かゆみなどの症状が生じます。

かゆくて皮膚をかきこわしてしまうと傷が治りにくく、皮膚が潰瘍になることもあります。圧迫療法を根気強く続けましょう。

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