【医師監修】下肢静脈瘤治療前に確認すべき服薬と注意点|安全な手術のために知っておくべきこと | 目黒外科

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2018.01.12 下肢静脈瘤の治療方法

【医師監修】下肢静脈瘤治療前に確認すべき服薬と注意点|安全な手術のために知っておくべきこと

記事執筆Author

目黒外科 院長 齋藤 陽(あきら)

目黒外科 院長
齋藤 陽(あきら)

  • 日本外科学会 外科専門医
  • 脈管専門医
  • 下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術の実施基準による実施医、指導医

詳しいプロフィール

下肢静脈瘤治療前に注意すべき「服薬」のポイント

治療前の服薬管理は、患者さんの安全を守るうえで欠かせない重要なステップです。
飲んでいる薬によっては、血液が固まりにくくなったり、逆に血栓ができやすくなったり、免疫力が低下して感染症のリスクが高まることがあります。
こうした影響は、下肢静脈瘤の治療方法や術後の回復に直接かかわるため、場合によっては手術自体を見合わせたり、治療計画を大きく変更しなければならないケースもあります。

中には、薬の影響に気づかず手術を進めてしまうと、出血や血栓症、傷の感染といった命にかかわる深刻な合併症を引き起こす恐れもあります。
そのため、どんな薬を服用しているかを正確に把握することは、患者さんご自身の命と健康を守るために不可欠なのです。

当院では、服薬状況を把握するためにお薬手帳の持参をお願いしています。
受診の際は、必ず健康保険証と一緒にご持参くださいますようご協力をお願いいたします。

なぜお薬手帳が必要なのか?

下肢静脈瘤の治療には、血管内にレーザーカテーテルや高周波カテーテルを挿入して血管を閉塞させる「血管内焼灼術」や、患部の静脈を接着剤で閉塞させる「血管内塞栓術(グルー治療)」など、身体に一定の侵襲を伴う処置が含まれます。
これらの治療では、血管を焼灼したりする際に、出血(血が止まりにくくなる)血栓症(血の塊が血管を塞いでしまう)術後感染(傷が化膿する)といったリスクがどうしても避けられません。
特に、患者さんが服用している薬によっては、血液の凝固能(固まりやすさ)が変化したり、免疫力が低下していたりするため、通常以上に合併症のリスクが高まることがあります。

そのため、現在服用中のお薬の種類や使用状況を正確に把握することは、治療の安全性を確保するうえで不可欠です。
服薬内容に応じて、治療方法の選択肢を変更したり、手術のタイミングを調整したり、あるいは薬剤の一時中止をお願いする場合もあります。
患者さん一人ひとりの状況に合わせた最適な治療計画を立てるためにも、服薬情報の事前確認は極めて重要です。

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注意が必要な薬剤の3分類

下肢静脈瘤治療に影響を及ぼすお薬は、以下の3つに大別されます。

A)血栓ができやすくなる薬

  • ホルモン製剤(乳がん治療、子宮内膜症、更年期障害、経口避妊薬、前立腺疾患など)
  • 骨粗しょう症治療薬(例:エビスタ、ビビアント)
  • 副腎皮質ステロイド(自己免疫疾患、喘息、アレルギー性鼻炎など)

これらを内服中の方は、足の静脈に血栓ができやすくなるため、血管内焼灼術・血管内塞栓術・ストリッピング・硬化療法の1か月前に中止する必要があります。ただし、ステロイドの点眼薬・軟膏・吸入薬は継続可能です。

B)出血が止まりにくくなる薬

  • 抗血小板薬(脳梗塞・心筋梗塞・狭心症の予防)
  • 抗凝固薬(心房細動に伴う脳梗塞予防)

これらは”血液サラサラの薬”と呼ばれ、血液が固まりにくくなります。
血管内焼灼術の場合、中止は不要ですが、ストリッピング手術や静脈瘤切除を伴う場合は出血量が増える可能性があるため一時的な服薬の中止を検討する必要があります。

C)傷が化膿しやすくなる薬

  • 抗リウマチ薬(リウマトレックス、レミケードなど)
  • 免疫抑制剤(イムラン、アザニンなど)

これらの薬(抗リウマチ薬や免疫抑制剤)は、免疫機能を抑制する作用があるため、術後の傷口に細菌が感染しやすくなり、創部感染治癒遅延のリスクを高めます。
そのため、皮膚を切開する手術を予定している場合には、事前の服薬調整が極めて重要です。

血管内焼灼術(レーザー治療・高周波治療)など皮膚切開を伴わない低侵襲治療であれば、服薬を継続したまま安全に施術できることが多いため、通常は中止を要しません。
一方、ストリッピング手術や静脈瘤切除など、皮膚切開や創傷を伴う手術では、感染リスクを最小限に抑えるため、原則として服薬の一時中止を検討します。

ただし、抗リウマチ薬や免疫抑制剤の中止は、基礎疾患であるリウマチや自己免疫疾患の症状悪化を招く可能性もあるため注意が必要です。
服薬を中止するかどうかは、担当医と十分に相談しながら、リスクとベネフィットを慎重に比較検討する必要があります。
場合によっては、創部感染リスクを考慮し、皮膚切開を伴わない血管内焼灼術のみで治療を完結させるなど、体への侵襲をできる限り抑えた治療方針を優先的に選択することも重要です。

服薬情報は治療成功のカギ

目黒外科では、すべての患者さんに現在服用中のお薬情報を正確にお伺いしています。
特に、血液をサラサラにする薬や、免疫機能を抑える薬、血栓ができやすくなる薬などは、治療の可否や手術手技の選択に大きな影響を及ぼすため、必ず確認させていただいています。

お薬手帳をお持ちの方は、健康保険証と一緒に必ずご提出ください。
お薬手帳には、医師が必要とする情報(薬剤名・用量・服用開始時期・中止時期など)がすべて記載されており、治療リスクを事前に把握するうえで極めて重要な資料となります。

また、薬の種類や服用状況によっては、手術の時期を延期したり、治療方法を変更したりする判断が必要となる場合があります。
患者さん一人ひとりの安全を最優先に考え、最適な治療計画を立てるためにも、ご理解とご協力をお願いいたします。

さらに詳しく知りたい方へ|動画でわかりやすく解説

薬の影響を正しく理解せずに治療を受けると、命に関わるリスクも。
動画では、服薬中でも受けられる治療法や、注意が必要なポイントを医師がわかりやすく解説しています。ぜひご覧ください。

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