下肢静脈瘤になりやすいのはどんな人?職業別リスクも徹底解説【医師監修】 | 目黒外科

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2017.12.14 下肢静脈瘤コラム

下肢静脈瘤になりやすいのはどんな人?職業別リスクも徹底解説【医師監修】

記事執筆Author

目黒外科 院長 齋藤 陽(あきら)

目黒外科 院長
齋藤 陽(あきら)

  • 日本外科学会 外科専門医
  • 脈管専門医
  • 下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術の実施基準による実施医、指導医

詳しいプロフィール

【医師監修】下肢静脈瘤になりやすい人・職業|リスク要因と予防策を徹底解説

【医師監修】下肢静脈瘤になりやすい7つの原因とは?

下肢静脈瘤とは?

下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)は、足の静脈が拡張し、ボコボコと浮き出て見える状態を指します。
ただの見た目の問題ではなく、放置するとだるさ、むくみ、皮膚炎、さらには皮膚潰瘍に発展することもあり、早期の発見と対策が重要です。

この記事では、下肢静脈瘤の主なリスク要因について、医師監修のもとわかりやすく解説します。

併せて読みたい:【医師監修】下肢静脈瘤とは?原因・症状・最新の治療法まで徹底解説

下肢静脈瘤になりやすい7つの原因

1. 立ち仕事・長時間同じ姿勢

立ち仕事による静脈瘤リスク

調理師、美容師、警備員、クリーニング店勤務など、同じ姿勢で長時間立ち続ける仕事では、足の筋肉によるポンプ作用が十分に働かず、血液が下半身にたまりやすくなります。
足の筋肉は、歩行やふくらはぎの収縮によって血液を心臓に押し戻す「第二の心臓」とも呼ばれますが、長時間動かない状態が続くとこのポンプ機能が低下し、静脈内の血流が滞りやすくなります。

結果として、足の静脈に過剰な圧力がかかり、静脈内にある逆流防止弁にも負担が蓄積。
やがて弁の機能が壊れると、血液が心臓へ戻らず、**逆流して血管が拡張する「下肢静脈瘤」**を引き起こすリスクが高まります。

また、立ち仕事に限らず、長時間座ったままのデスクワークも同様に危険です。
座位が続くと太ももの裏側の静脈が圧迫され、下半身の血液循環が悪化します。
歩行時のようにふくらはぎの筋肉が動かないため、血液を押し戻す力が働かず、静脈瘤リスクが増大します。

日常的に立ちっぱなしや座りっぱなしの時間が長い方は、適度なストレッチやこまめな歩行を心がけることで、静脈への負担を軽減することが大切です。

デスクワークによる静脈瘤リスク

2. 妊娠・出産

妊娠中の静脈への負担

妊娠中は、以下の要素によって下肢静脈瘤が発症しやすくなります。

  • 母体の血液量増加
    妊娠中は血液量が約30~50%増加し、静脈に強い圧力がかかります。
  • 女性ホルモン(エストロゲン)の増加
    エストロゲンの濃度が妊娠中に約100倍に増え、血管が拡張しやすくなります。
  • 子宮による静脈の圧迫
    胎児の成長とともに子宮が大きくなり、骨盤内の静脈を圧迫することで血流障害を引き起こします。

出産後も静脈瘤が残ることがあり、特に2人目以降の妊娠で症状が目立ちやすくなります。

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3. 遺伝的要因

遺伝的素因による静脈瘤リスク

親族に下肢静脈瘤を患った方がいる場合、自身も発症するリスクが大きく高まります。
両親ともに下肢静脈瘤を患っている場合、子どもが発症する確率は約90%に達するという疫学研究(スウェーデン・フランス研究)があります。
片方の親に静脈瘤がある場合でも、男性で約25%、女性で約62%と、性別によるリスク差がみられます。

これは、静脈の壁や静脈弁の構造に関わる遺伝的な体質(弾性力の弱さや弁の脆弱性)が親から子へ受け継がれるためと考えられています。
そのため、体質的にリスクを持っている方は、症状が現れる前から予防意識を高めることが重要
です。

たとえば、長時間同じ姿勢を避ける、適度な運動を心がける、ふくらはぎを意識的に動かす習慣を持つなど、日常的なケアによって進行を遅らせることが期待できます。
家族歴がある場合は、早めに専門医でチェックを受けるのも安心につながるでしょう。

✅ 出典情報

Cornu-Thenard A, Boivin P, Baud JM, De Vincenzi I, Carpentier PH.
“Importance of the familial factor in varicose vein disease.”
Clinical Epidemiology 1994; Journal of Dermatologic Surgery and Oncology, 1994; 20: 318-326.

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4. 加齢

加齢による静脈壁の弱化

年齢を重ねると、静脈の壁を構成する弾性膜や平滑筋組織が徐々に退行し、柔軟性と弾力性が低下していきます。
この変化により、静脈は血液の圧力に対して弱くなり、拡張しやすくなるため、血液の逆流を防ぐ弁にも大きな負担がかかるようになります。

特に50歳以上になると、こうした組織変性が顕著となり、静脈瘤の発症リスクが急激に高まることが報告されています。
さらに、加齢に伴って筋肉量も減少しやすくなるため、ふくらはぎの筋ポンプ作用が弱まり、血液の循環を支える力も低下しやすくなります。

こうした要素が重なることで、中高年以降は静脈瘤が進行しやすい状態になるため、年齢に応じたセルフケア(適度な運動、弾性ストッキングの活用など)が重要になります。

5. 肥満

肥満による静脈への負担

高度の肥満は、足の静脈に対して大きな負荷を与え、下肢静脈瘤の発症リスクを高める要因のひとつとされています。
体重が増えることで、足にかかる物理的な負荷が大きくなり、静脈の壁や静脈弁に慢性的な圧力が加わります。

さらに、内臓脂肪が増えると腹腔内圧も上昇し、骨盤内の太い静脈(腸骨静脈など)が圧迫されるため、足から心臓への血液の戻りが妨げられるようになります。
血流が滞ることで、静脈に余分な血液がたまりやすくなり、結果的に静脈が拡張・変形して静脈瘤が進行しやすくなるのです。

このため、適正体重を維持することは静脈瘤の予防に直結します。
特に肥満傾向にある方は、食事管理や適度な運動によって体重をコントロールし、足や静脈への負担を減らすことが大切です。

6. 便秘

便秘による腹圧負担

排便時に強くいきむと、腹部に高い圧力(腹圧)がかかります。
この腹圧は腸だけでなく、骨盤内や下肢の静脈にも強い負担を与え、血液の心臓への戻りを妨げてしまいます。
結果として、静脈の壁や弁に余計なストレスがかかり、徐々に損傷を受けることで、血液の逆流や静脈の拡張を引き起こしやすくなります。

特に慢性的な便秘がある場合は、日常的に腹圧が高い状態を繰り返すことになり、静脈瘤の進行リスクが高まります。

このため、便秘傾向のある方は、普段から排便をスムーズにする生活習慣の見直しが重要です。
食物繊維や水分をしっかりとり、適度な運動を取り入れることで腸の動きを促し、腹圧による静脈への負担を軽減することができます。

7. 性別(女性特有のリスク)

女性は、月経周期や妊娠期間中に増加する女性ホルモンの影響により、下肢静脈瘤を発症しやすい体質になりやすいとされています。
プロゲステロンには、血管壁や静脈弁の組織を柔らかくし、伸びやすくする作用があり、静脈本来の張りや弾力性を低下させます。
これにより、血液の逆流を防ぐ弁の機能が弱まり、下肢の静脈に血液が滞りやすくなるのです。

この変化は、特に月経前や妊娠後期といったホルモンバランスが大きく変動する時期に顕著に現れます。
妊娠中はさらに、胎児の成長による子宮の圧迫や、血液量の増加によって静脈への負担が加わり、静脈瘤の発症リスクが一層高まります。
また、出産経験が複数回ある女性ほど、静脈壁や弁への累積ダメージが蓄積し、年齢とともに症状が悪化しやすくなる傾向があります。

こうした生理的背景から、女性は男性に比べて下肢静脈瘤の発症率が高く、進行も速いケースが少なくありません
そのため、症状が出る前からのセルフケアが重要です。
具体的には、日常生活にふくらはぎのポンプ運動(つま先立ち運動など)を取り入れる、着圧ストッキングを活用する長時間同じ姿勢を避けるなど、血流促進を意識した対策を心がけることが勧められます。

特に、妊娠中や出産後は医師と相談しながら適切な対策をとり、下肢への負担をできるだけ軽減することが大切です。

まとめ|リスク要因を知って早めの対策を

下肢静脈瘤は、加齢や遺伝といった避けがたい要因もありますが、日常生活の中で意識的に対策を取ることで、発症リスクを減らしたり、進行を遅らせたりすることが可能です。
立ち仕事やデスクワークが多い方、妊娠・出産を経験された方、家族に下肢静脈瘤の既往がある方など、リスク要因に心当たりがある場合は、特に注意が必要です。

軽いだるさやむくみといった初期症状の段階であれば、適切なセルフケアや早期治療によって、症状の悪化を防ぐことができます。
自己判断で放置してしまうと、血管の拡張や血流障害が進み、皮膚炎や潰瘍といった深刻な合併症を引き起こすリスクも高まります。

「少し気になるかも」と感じた段階で、専門医に相談し、必要に応じた検査やアドバイスを受けることが、足の健康を守るための第一歩です。
早期対応が、将来の生活の質(QOL)を大きく左右します。

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