【医師監修】下肢静脈瘤に関するよくある誤解3選|原因・症状・正しい知識を専門医が解説
【医師監修】下肢静脈瘤の誤解と真実|正しい知識で不安を解消
テレビや雑誌、インターネットなどのメディアで取り上げられる機会が増えたことで、「下肢静脈瘤」という言葉は多くの方に知られるようになりました。しかし、病名は知っていても、その正しい理解が十分に広まっているとはいえません。患者さまだけでなく、医療従事者でさえ誤解しているケースが少なくないのが実情です。
この記事では、下肢静脈瘤にまつわる代表的な3つの誤解について、下肢静脈瘤治療の専門家の視点からわかりやすく解説いたします。
誤解①「足にボコボコ浮き出た血管が悪さをしている」
結論:浮き出た血管は“結果”であり、原因ではありません。
足に浮き出た血管(静脈瘤)が痛みやむくみの原因と思って受診される方が多くいらっしゃいます。しかし実際には、目立つ血管=病気の本体ではありません。下肢静脈瘤の本当の原因は、皮膚の奥深くにある静脈で血液が逆流していることです。
静脈には“逆流防止弁”があり、本来は血液が心臓に戻るよう一方向に流れる仕組みになっています。ところが、この弁が壊れると血液が足元に逆戻りしてしまい、血液が渋滞(静脈うっ滞)を起こします。
長期間その状態が続くと、体がバイパスを作ろうとし、それが皮膚表面に浮き出てくる静脈瘤となるのです。
つまり、見た目にボコボコしている血管は逆流の“結果”であり、治療対象はその原因である静脈の逆流そのものです。
超音波検査を行えば、どの静脈に逆流が起きているかを正確に把握できます。見た目だけで判断せず、専門医による検査を受けることが大切です。
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誤解②「静脈瘤が進むと足が腐って切断される」
結論:下肢静脈瘤で足を切断することはありません。
患者さんの中には「テレビで“足を切断”と言っていたから不安になった」とおっしゃる方もいますが、ご安心ください。
下肢静脈瘤で足が腐ったり、切断に至ることはありません。
混同されがちなのは、動脈疾患(閉塞性動脈硬化症など)です。動脈の血流が悪くなった結果、足の壊死を招く場合があり、その最終手段として切断となるケースもありますが、静脈瘤はあくまで静脈の病気です。
ただし、静脈瘤を放置するとうっ滞性皮膚炎を引き起こすことがあり、皮膚潰瘍に進行することがあります。かゆみや湿疹、色素沈着を伴う皮膚症状がある方は早めに専門医を受診しましょう。静脈瘤による潰瘍は治療によって十分に改善が可能です。
誤解③「静脈瘤があると血栓ができて肺に飛ぶ」
結論:静脈瘤と肺塞栓症は基本的に別の病気です。
「血栓が肺に飛んで危ないのでは?」というご質問をいただくこともあります。肺に飛ぶ血栓は肺塞栓症と呼ばれる病態で、原因となるのは深部静脈血栓症(DVT)です。
DVTはふくらはぎや太ももの深部にある静脈(深部静脈)に血栓ができるもので、長時間の飛行機移動などで生じる“エコノミークラス症候群”が有名です。これに対し、下肢静脈瘤で問題となるのは表在静脈です。静脈瘤が直接、肺塞栓症を引き起こすことは基本的にはありません。
ただし、稀に表在性静脈炎から血栓性静脈炎を起こすこともありますので、注意が必要です。不安な症状がある場合は、血管エコーでの評価が有効です。
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まとめ:誤解をなくして正しい診断と予防を
下肢静脈瘤は、正しい知識と検査に基づく診断によって適切な対応が可能な病気です。見た目の派手な血管だけに注目するのではなく、隠れた原因(静脈の逆流)を見逃さないことが大切です。
「静脈瘤があるけど症状が軽いから様子見でいいかな…」と思っている方も、逆流が進行すると皮膚症状や潰瘍、血栓性静脈炎につながる可能性があります。気になる症状があれば、一度専門医の診察を受け、静脈エコーで血流の状態を確認してみてください。
この記事は下肢静脈瘤専門クリニック『目黒外科』院長 齋藤陽 医師監修のもと作成されました。
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