「【専門医が徹底解説】一次性静脈瘤と二次性静脈瘤の原因・症状・正しい治療選択」 | 目黒外科

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2017.12.14 下肢静脈瘤の基礎知識

「【専門医が徹底解説】一次性静脈瘤と二次性静脈瘤の原因・症状・正しい治療選択」

記事執筆Author

目黒外科 院長 齋藤 陽(あきら)

目黒外科 院長
齋藤 陽(あきら)

  • 日本外科学会 外科専門医
  • 脈管専門医
  • 下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術の実施基準による実施医、指導医

詳しいプロフィール

下肢静脈瘤とは?一次性・二次性の違いと正確な診断方法を専門医が解説|目黒外科

下肢静脈瘤とは?種類・症状・治療方法を専門医がわかりやすく解説

下肢静脈瘤とは

下肢静脈瘤が起こる仕組み

下肢静脈瘤とは、足の静脈が拡張し、皮膚の表面に血管が浮き出た状態を指します。

通常、足の静脈には、血液を心臓へ押し戻すための逆流防止弁(静脈弁)が備わっており、重力に逆らいながら血液の流れを維持しています。しかし、加齢による血管や弁の老化、妊娠・出産による腹圧の上昇、長時間の立ち仕事や座りっぱなしの生活習慣、あるいは遺伝的要因など、さまざまな影響で静脈弁の機能が低下すると、血液が本来とは逆方向に流れ、足の静脈内に滞留してしまいます。

滞った血液によって静脈内の圧力が徐々に高まり、血管の壁が外側へ押し広げられてパンパンに膨張します。さらに血流の停滞による圧力不均衡で血管はまっすぐに伸びきれず、クネクネと蛇行して皮膚表面に浮き上がってくるのです。

初期段階では、夕方に足がむくんだり、重だるさを感じたりする程度で、見た目には大きな変化がない場合もあります。しかし、症状が進行するにつれて、血管が目立ってくるだけでなく、皮膚の色素沈着や湿疹、かゆみといった皮膚症状が現れ、重症例では皮膚に潰瘍ができる危険性もあります。

目に見える血管の変化だけでなく、足の疲れやすさ、違和感、むくみなどの小さなサインも、静脈の逆流が始まっている可能性を示しているため、放置せず早期に専門医を受診することが大切です。

下肢静脈瘤の症状と進行リスク

静脈を流れる血液は老廃物や二酸化炭素を多く含む「汚れた血液」であるため、血流が滞るとさまざまな不調が引き起こされます。

代表的な初期症状には、以下のようなものがあります。

  • 夕方になると足がむくむ
  • 足の重さ・だるさを感じる
  • 就寝中や明け方にこむら返り(足のつり)が起こる
  • 足の血管が浮き出て目立つ

これらの症状は、静脈弁の機能低下による血流逆流が原因と考えられます。時間の経過とともに症状は進行し、次第に皮膚の色が黒ずんだり、湿疹やかゆみといった慢性的な皮膚炎症状が現れるようになります。

さらに重症化すると、皮膚の一部に潰瘍(皮膚が破れて傷になる状態)ができることもあり、感染症のリスクや治療期間の長期化につながるため注意が必要です。

下肢静脈瘤は、見た目だけでなく、放置すれば生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼす疾患です。軽い症状のうちに正確な診断と適切な治療を受けることで、進行を防ぎ、日常生活への支障を最小限に抑えることができます。

下肢静脈瘤の種類と原因

一次性静脈瘤とは

一次性静脈瘤とは、体表近くを走る表在静脈に発生する静脈瘤を指します。静脈には血液が逆流しないようにするための逆流防止弁が備わっていますが、これらの弁が何らかの原因で機能しなくなることで血液が逆流し、静脈内に滞留することで発症します。

一次性静脈瘤は、先天的な要因(生まれつき静脈弁が弱い・少ない)に加え、後天的な影響(加齢による血管や弁の劣化、妊娠・出産による腹圧の上昇、長時間立ちっぱなしや座りっぱなしの仕事による血流負荷)などが関与します。

特に、美容師、販売員、調理師、看護師、教師など、日常的に長時間立ち仕事をする職種の方に多く見られる傾向があります。また、遺伝的要素も関係しており、親族に下肢静脈瘤を持つ方がいる場合は発症リスクが高まることが知られています。

進行すると、見た目の変化だけでなく、足のだるさ、むくみ、こむら返り、皮膚症状(色素沈着・湿疹など)へとつながるため、早めの対応が重要です。

二次性静脈瘤とは

二次性静脈瘤は、別の疾患や外的要因により深部静脈の血流が妨げられた結果として発生する静脈瘤です。代表的な原因には、深部静脈血栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)、骨盤内腫瘍、大きな手術後の血流障害などが挙げられます。

深部静脈の流れが障害されると、血液は通常の経路では心臓へ戻ることができず、新たな迂回路を必要とします。その結果、表在静脈に過剰な血流負荷がかかり、静脈が拡張・蛇行して二次性静脈瘤が形成されるのです。

二次性静脈瘤は、一次性と異なり代償機構として重要な役割を果たしているため、表面的に見える静脈瘤を単純に手術で閉塞することはできません。無理に塞いでしまうと、血液の流れがさらに悪化し、深刻な循環障害を引き起こす危険性があります。

したがって、二次性静脈瘤では弾性ストッキングによる圧迫療法が基本的な治療方針となり、長期にわたり血流をサポートしながら生活していく必要があります。過去に深部静脈血栓症や大きな外科手術の既往がある方は、必ず診察時に申告することが大切です。

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下肢静脈瘤の診断方法

下肢静脈瘤の診断には、問診・視診・触診に加えて、超音波検査(エコー検査)が欠かせません。

問診では、足のだるさ、むくみ、こむら返り、血管の浮き出しなどの症状の有無や、日常生活における立ち仕事の有無、妊娠・出産歴、家族歴(遺伝傾向)、深部静脈血栓症の既往などについて詳しく確認します。

視診・触診では、立った状態で足を観察し、静脈の拡張・蛇行の有無、皮膚の色素沈着や湿疹、潰瘍といった皮膚変化をチェックします。また、軽く圧迫しながら血管の緊張度や血流の滞り具合を判断します。

そして、最も重要なのが超音波検査(下肢静脈エコー)です。エコーを用いることで、血管内部の血液の流れをリアルタイムで確認でき、静脈弁の逆流の有無、逆流が発生している部位、逆流の程度、深部静脈に異常がないかどうかを正確に評価できます。

特に、一次性静脈瘤か二次性静脈瘤かの鑑別には、超音波検査による血流パターンの把握が必須です。深部静脈に血栓や逆流が見つかった場合には、治療方針が大きく変わるため、慎重な診断が求められます。

診断結果に応じて、経過観察、弾性ストッキングによる圧迫療法、もしくはレーザー治療・高周波治療といった血管内治療など、適切な治療方針が選択されます。

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下肢静脈瘤の治療方法

一次性静脈瘤の治療

症状が軽く日常生活に支障がない場合や見た目が気にならない場合は経過観察で構いません。ただし、足のだるさ、重さ、むくみ、こむら返りなどの症状がある場合には、次のような治療法を選択します。

  • 圧迫療法:医療用弾性ストッキングを着用し、足にたまった血液を押し戻して症状を改善します。ただし、ストッキングを外すと効果は失われ、根本治療にはなりません。
  • 手術療法:症状が強い場合や皮膚症状(湿疹・色素沈着)が出ている場合には、レーザーや高周波カテーテルによる血管内治療が行われます。逆流している静脈のみを閉塞させるため、血流には問題ありません。

【関連記事】下肢静脈瘤の治療法|レーザー・高周波・グルー・ストリッピングの違いとは?

二次性静脈瘤の治療

二次性静脈瘤では、深部静脈の流れを補う役割があるため、静脈瘤自体を手術で閉塞することはできません。手術を行うと血液が心臓へ戻れなくなり、重篤な循環障害を引き起こす恐れがあるためです。そのため、弾性ストッキングによる圧迫療法が唯一の治療手段となり、基本的には生涯にわたって継続する必要があります。

なお、過去に深部静脈血栓症を経験したことがある方は、必ず診察時に医師へ伝えましょう。

まとめ|違和感を感じたら早めの受診を

下肢静脈瘤は、見た目の変化だけでなく、足の不調や皮膚トラブルといった深刻な症状へつながる可能性があります。特に初期段階での対応が進行防止に直結します。足のだるさ、むくみ、血管の浮き出しなど、少しでも気になる症状があれば、自己判断せず専門医へ相談しましょう。正確な診断には超音波検査が有効です。

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